7話。ありがとう。良い~洗礼です。
「随分――とッ! えげつない……」
散弾の様に砕けた釘の破片をもろに喰らい、堪らずに地面に両膝を付けてしまう。
「これはこれは。流石にもう限界ですか?」
「……」
近くまで来たシスターヘレナは僕を見下ろしながら質問し、僕は黙って頷く。
今ので右目を潰された。身体も穴だらけ。しかも杭の破片が身体に入ってるせいか熱した針で刺されている様な痛みもある。
流石にこの状態で軽口は叩けない。薄っすらと笑みを浮かべて頷く事しか出来なかった。
「そうですか。――では、今度こそ貴方を殺してあげます」
そう言ってシスターヘレナは銀色の泉からとても大きな十字架を作り出し、泉とその手に持っている釘と鉄鎚を使って僕の身体を磔にしていく。
そして諸々の準備が整のうと、シスターヘレナはそっと僕の心臓に手を添えた。
「――告げる。神よりの神。光よりの光。まことの祈りよりのまことの願い。望まれずして生まれ、望んで一体となり、すべては主により造られたり。
主はわれらのため。またわれらの願いのために。 丘よりくだり、われらの願いに聖霊を注ぎ許しを記そう。
願いを此処に。奇跡を此処に。巡礼の鐘を鳴らされよ。
使徒伝来の教会よ。唯一の祈りとみとめ、望まれずして生まれた罪を許し、望んで一体となるわれらを許したもう。
――――
――。
――――。
――――――鐘だ。何処からか鐘の音色が聞こえる。
(あぁ……なんて……なんて心地の良い音色なのだろう)
「――ハハ」
紫の焔で魂ごと身体を燃やされ滅せらているのに凄く穏やかな気持ち――。
(紫の焔で焼かれているというのに少しも痛くない。苦しくもない。まるで心地よく揺れている真冬の電車の中でうたた寝をしている様な感覚……)
穏やかな気持ち、心地よい鐘の音と紫の焔に包まれたまま磔にされていた身体が崩れ落ちる。
「あぁ」
服が燃える。毛が燃える。皮膚が燃える――。
そして体中の血液のほとんどが燃え、身体は灰となって朽ちた。
これで良い――これで。
「ありがとう」
(ありがとう――。彼女の血以外全てを燃やしてくれて本当にありがとう)
「――血解」
「!」
血解。
そう唱えた瞬間、紫の焔は僕自身の灰から生まれた青い炎によって焼き尽くされる。
「これは一体……痛ッ――え? 蝶?」
「蝙蝠より綺麗でカッコいいでしょう?」
「!?」
青い炎の中から軽口を叩き、先ほどの紫の焔には無かった情け容赦のない炎の熱を感じながら青い炎の中を優雅に歩いて外へ出る。
傷ついた身体を再構築。燃えて灰となった吸血鬼達の血の灰で服を仕立て、彼女がそうであった様にムーンストーンのような煌めきを放つ髪と羽を持った始祖の吸血鬼がシスターヘレナの前に立った。
「おやおやまあまぁ、新月の下で生まれた真祖の吸血鬼は蝙蝠じゃなくて蝶を使役していたみたい。しかも僕の名と同じ鳳を、ね?」
と、満月の下で生まれた吸血鬼の始祖とは乖離にして新月の下で生まれた異端の吸血鬼は、夜空に薄っすらと浮かんでいる新月と一緒に灰から生まれし自身の名を関する
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