第39話 大団円⁈
77.アリシア
「ふ~ん……。彼とそんな話をしたんだ?」
「だからキミも……」
「当分、無理ね。でもこれからの改心次第では、考えなくもないんじゃない?」
アリシアはそういって、身をよじった。後ろからしているから、顔は見えないけれど、多分もう怒っていない。言い寄られ、カチンときて決闘までしたが、それももう終わったこと、だ。
胸が小さくて気にしていたこと、また彼女の鍛え上げられた体は、下もそうだったために、彼女が上に跨ってするか、後ろからするのがいい、となった。
彼女的には、顔がみえないのが好きでないけれど、もう少し慣れてくるまで……ということだ。
勝ち気でツンデレっぽいところもある彼女を、後ろから責める……というのも、何だか凌辱的だ。
でも引き締まったお尻が、ボクの下腹部に当たる。そしてつながっている部分が、後ろに腰を引いてもしっかりと銜えて放さないところを感じても、アリシアらしいと感じてしまう。
後ろから手をまわし、その硬い胸を揉む。
「本当に、アナタって胸が好きよね」
「キミだって、早く大きくなりたくて、最近では自分で揉んでいるんだろ?」
「バ、バカなこと言わないでよ! 誰にそんなこと……」
「エマが言っていたよ。私たち貧乳同盟だから、一緒にお風呂で揉んでいるって」
多分、アリシアは真っ赤になっているだろう。そんな恥ずかしい気持ちを忘れさせるために、ボクはふたたび腰遣いを早めた。
78.演説
ミネルヴァが教練所のみんなを代表して演説をする。
「これまで貴族は、この国を創った功労者であり、国を治めるにふさわしい資質をもつ、とされてきました。
無条件に……。
でも、今の貴族はどうでしょう? 自分の家を栄えさせるため、相手を蹴落とし、そのためなら法律を捻じ曲げ、無実の罪を着せてまで、相手を追い落とそうとする。それがこの国のためになっているのでしょうか?
私は、そんなおかしくなってしまったこの国を変えたい。貴族は、早い段階から魔法を覚え、それが平民との間で差を生んできました。でも、この魔術教練に集まっているみんなは、魔力をもちます。そう、平民と貴族の間に、差などないのです。ここで皆さんと、こうして一緒に過ごしていて分かりました。貴族と平民に差なんてないのだ、と……。
今ここにいる皆さんは魔術を学び、魔法がつかえるようになりました。貴族と何もちがいのない能力を身に着けたのです。皆さんは貴族を脅かす存在になって下さい。貴族の私がいうのもなんですが、今の弛んだ貴族を叱咤する、そういう気構えをもって貴族を、国のことを考えて下さい。
そしてここにいる貴族の子弟、子女も、自分たちが特別なんかではなく、少しでも驕ったり、悪事を為したりすれば、凋落の憂き目に遭う、ということをよく憶えておいて下さい。
貴族も、平民もありません。みんな、この教練所で学んだ仲間です。これからもみんなで国を盛り立てていきましょう。ご清聴ありがとうございました」
わざわざ、ミネルヴァがこんな演説をしたのは、ボクの事件が不問となった後も、噂が絶えないからだ。誰もお咎めなし、でうやむやにされた。それが貴族への不審となって、みんなにも広がっていた。
ミネルヴァの父、マルティンはダウ爺によってこてんぱんにされ、軍内で力を落としていた。それは将軍の親衛隊を殺し、将軍を引きずり下ろそうとしたのだから、無罪放免とはならない。ただそれは軍内のことで、表向きは何事もなく過ぎている。でもいずれ、更迭されるだろう。
親衛隊を殺した張本人のミネルヴァだが、父に命じられたことであって、こちらはお咎めなし。そこで動揺する教練所を収めるため、ミネルヴァにちょうど一年ということもあって、演説をさせたのである。
これはボリス・プーシキン所長の計らいだった。軍の混乱を招いたレイベンス家のミネルヴァが、団結を訴える。これで今回のことは手打ち、ということでゴドフロア将軍の了承も得ていた。
そしてもう一つ、意外なところで尽力があった。
ボクは山に捨てられていた……と説明をうけたが、実はダウ爺によって、連れ出されて保護されていたのだ。
シドルの最初の登録名はシドル・ジュード。今はダウ爺のジョースキンを名乗っているけれど、本来はジュードが姓なのだ。
それは貴族、ジュード家の内紛によって、生まれた息子の命の危機を感じて、ちょうど軍を抜けようと思っていたダウ爺が、ボクをあずかって山奥へ隠棲した、という事情だった。
十二歳までジュード家から迎えに来なかったら、見捨てられたものとして扱う。そんな取り決めもあったらしい。だからボクが教練所にいくとき、後は自由にしていいと言ってくれた。
ただ、ジュード家もボクの教練所での評判を知り、またダウ爺が事情を話したことで、ボクを迎え入れることとなり、晴れてボクは貴族の一員となっていた。
ここがゲームの世界だと知り、ボクが主人公との対比キャラであると分かったときから、ずっとバッドエンドを回避するために動いてきた。
ただここに、主人公はいなかった。一時、それを疑ったレン・スウェイも、オーウェンに操られていただけで、そうではなかった。
否、主人公はいた。それは全員だ。みんな、自分という物語の中では主人公だ。ゲームというシナリオは一つの可能性であって、誰もが自分の人生を精いっぱい生きている。
ボクは、ボクの人生を精いっぱい生きて、いつの間にか攻略対象キャラのすべての女の子と関係をもつこととなった。
みんなが、自分の人生では主人公――。ミネルヴァはこれから、貴族の改革という大きな目標が待っている。アリシアは冒険者になって世界を巡る夢がある。エマは商人として独り立ちするつもりだ。マイアはボクのお嫁さんになる、と今から花嫁修業中である。
レイラもボクがジュード家の貴族となり、養子にして婿にする、という過程を経なくなった。そのせいで、他の貴族の子女からも熱視線を送られ、特にミネルヴァとの競争になる……と、そちらの心配が大きいらしい。
みんなが精いっぱい、自分の人生を生きる。これはそんな物語だった。まだまだ人生はつづく。ボクらはその中で、幸せをみつけるために生きていく。
ボクは「ぎゃふん」と言わされることはなかったけれど、女の子に「あふん♥」と言わせる。そんな幸せを求めて、これからもこの世界で生きていく……。
恋愛シミュゲーで、主人公に「Gyafun!」と言わされるキャラに転生しました。 巨豆腐心 @kyodoufsin
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