第37話 貴族の娘⁈

   73.ミネルヴァと


 ボクは平民に墜ちたので、本来は四人部屋に移るのがスジだ。ただ、すぐに貴族にもどりそう……という事情ではなく、未だに貴族用の個室が割り当てられているのには理由があった。

 彼女の力添えである。ミネルヴァ・レイベンス――。

 今回、無実が証明されたと言っても、死刑判決まで下ったのだ。そのせいで、貴族の身分を外された。償う必要がある、ということで教練、軍をふくめて動かしてくれた。

 何しろ、ここでは警察も兼ねる軍の不始末である。そしてそれは、マルティンも動かした、ということでもある。ダウ爺に完敗したマルティンが、それを受け入れた、ということもあるだろう。そして、それはもう一つ、彼女にとってメリットとなることだからだ。


「よろしい……ですか?」

 ミネルヴァがボクの部屋を訪ねてきた。初めてのことで、彼女自身が戸惑った表情を浮かべる。

「部屋にきたんだ。寛いでくれよ」

 そういっても、彼女はドア付近に立ったまま「え、でも……」ともじもじする。

 ボクはその肩を抱いて、中へと導く。緊張しているらしく、足取りも重い。

 前回、無理やりキスしてから、久しぶりに顔を合わせた。

 ボクは彼女をベッドにすわらせると、その隣に腰を下ろして、そのまま何も言わずに彼女をベッドに押し倒す。

「い……、嫌です」

 真っ赤な顔で、彼女は横をむく。でも、ボクを跳ね飛ばそうとしたり、魔法で攻撃してきたりはしない。ボクも横を向いた、彼女の耳に息を吹きかけ、その裏からゆっくりと舌を這わす。彼女は体を固くし、必死で堪えているので、そのまま顎を伝って彼女の頬にキスをする。


 ボクが口を放すと、彼女はやっと力が抜けて、ほっと息を吐く。ずっと呼吸すら止めていたようだ。でも、そうして開いた口にボクは唇を重ねた。不意打ちとなり、彼女も驚いてまた唇を固くする。

 でも、それは嫌がって固めたというより、緊張して固くすると感じる。ふり払う、ということはせず、ただじっと受け入れている。

 自分の殻を破る……。そのために彼女はここに来た。躊躇い、戸惑い、そういうものがあっても、前にすすませるのがボクの役目だ。

「服を脱いで」

 ボクがそう促すと、震える手でゆっくりと自分でボタンを外す。制服なので、案外早く脱げた。下着姿も美しいけれど、見とれている暇はない。彼女が前向きになっている今のうちに、ボクは肌を重ねるように体を密着させ、その唇を覆った。

 彼女も目をつぶって、それを受け入れる。

 ボクは手を彼女のお腹におくと、ゆっくりと上へと滑らせていき、下着の下から手を入れると、一気に持ち上げて剥ぎとった。彼女も慌てて隠そうとするけれど、体が密着しているので、そうもできない。

 手が宙で遊ぶのを横目にながめつつ、ボクはしばらく胸に当たる、彼女のその柔らかさを感じた。アリシアのような硬いそれではないし、マイアのような柔らかさでもない。張り……一言でいうと、そんな感じだ。まだまだ大きくなる。その途上でボクはそれに立ち会っている。すっと体を離すと、余計にそう感じた。でも、彼女はすぐに両手で隠してしまう。

「きれいだよ。隠さないで」

「でも……」

「もっと見せて欲しい。だって、とてもきれいだから」

 そういって、ボクは彼女の手をとって、ゆっくりと開いた。美しさでは一番と感じているけれど、やはり裸身も抜群の美しさだった。




   74.恥じらい


 胸を優しく揉みしだくだけで、彼女は手で邪魔しようとする。それは気持ちいいという前に、恥ずかしさが勝るのだ。

 ふたたび覆いかぶさるようにして、キスをしようとすると横を向いてしまう。今度は反対側の耳から責める。胸を揉みつつ……なので、今度は感じ方がちがう。

「んん……」

 小さく声が漏れた。彼女は一箇所ずつ責めるより、全体で感じさせる方がいいのかも……と、気づく。体を密着させるように彼女を抱き寄せた。すると、自然と顔がボクの方を向き、互いに唇を重ねる。緊張する彼女の鼓動まで伝わってくるようだ。温かみ、柔らかさ、全身で受け止めてあげると、より彼女のそんなよさを感じさせてくれた。

 むしろ、このまま行く方がいいのかもしれない。

 無言で彼女の足の間に、両足を滑りこませようとする。彼女はそんな姿に恥じらいを感じるのか、中々にきつく足を閉じていたけれど、彼女の中に舌をすべりこませると、足のガードがゆるんだ。

 素早く両足をいれ、彼女も戸惑ったように足がぶらぶらする。

「このまま……いくよ」

「え? ……はい」

 言葉の意味が分からなかったのか、そう了承した。ボクは自分のそれを掴み、まだ指すら通っていないそこをめがけ、ゆっくりと体をずらしていく。


「あ……嫌。何?」

 添えている指が、彼女にふれた。初めてそこに、柔らかい布以外の感触を感じたのだろう。でも、ここで逃げるとそれがトラウマとなり、中々踏みこめないことにもなりそうだ。

 ならば、ここは無理やりでも行った方がいい。

 彼女の体を上から抑えるよう、しっかりと左手でボクの方に抱き寄せつつ、体をずらす動きを止めることはない。

「何? 待って。あ……、ん……、はッ! んん……ッ‼」

 少しずつ、彼女の中にめりこんでいく。彼女も鍛えているだけに、中々にきついのだけれど、ボクのそれで押し広げるよう、着実に迫っていく。もう彼女も言葉を発することはなく、ぐっと口を結んでそれに耐えている。


 つながった……。

 彼女はもうイッた後のように、くたくたになって頭を後ろに反らせている。

 恐らくそれは、気持ちが疲れているのだ。

 貴族としてこうでなければならない……として自分を縛っていた枷、今そのカギを開けたのだ。

 ボクも彼女を抱き寄せて、その頬に優しくキスをする。ご苦労様……と声をかけるのは場違いだけれど、彼女が背負ってきた重荷を、そっと下ろしてあげられる手伝いをしたかった。

 だから今日、誘った。そして彼女も、その重荷を下ろしたいと思っていた。父親からの呪縛は、このカギを開けたことで完全に解かれたはずだ。何より、貴族の養子となった平民とは付き合えない……と思っていた殻を、こうして外すことができたのだから。

「このまま……ずっと…………」

 彼女のそのつぶやきは、拘束から解き放たれた自由のことか、ボクとのつながりのことか? ボクは少しずつ動きはじめる。

 彼女も自分を突き上げてくるそれに躊躇いと、恥じらいを感じつつも、次第にシンクロする動きに、ボクも嬉しさを感じていた。



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