第3話 はっきりわかんだね。彼女こそ電子の妖精だって。
『なるほど、それは災難でしたね』
いよいよ22時になろうとする頃合いに、涼やかな声がイヤホン越しに聞こえてくる。
僕は自室のPCを前にひとり。
ちょうど今、手の中でカードの束を切りながら、ほんの数時間前に遭遇した災難を一通り愚痴り終えたところだった。
今日も今日とて、会話の相手――本人曰く、どうやら彼女は中学生らしいが、その落ち着きある声質からか、まるで年上の女性に優しく話を聞いてもらっているかのようで、毎回なんとも言い表せない安心感に包まれてしまう。
「でしょ? 酷い目に遭いましたよ」
そんな、彼女の優しい返答に僕は相槌を打ちながらも、同時に自分の心が癒されているのを感じた。
高校生にもなって、コンビニで同級生の女子にたかられたんだ。男としてもこんな情けない話、本来は黙って墓まで持って行くべきだろうけど、どうにもこの子は聞き上手というやつだろうね。
いかんいかんと思いながらも、自分のダメなところを聞いてもらいたくなってしまう。
『そういう子っているんですね』
「ねぇ。困りますよホント」
眼前のパソコン画面には相手の盤上が。
広げられたカード専用のプレイマットが相手のセンスの良さを物語っており、色素の薄い真っ白な手が、そこから伸びる細い指が、テキパキとその上のカードを集めていく。
数年ほど前からTCG――いわゆるトレーディングカードゲームといわれるものはその対戦方法を変容させ、いまではインターネットを使い、カメラに盤面を映すことで遠くのプレイヤーとも対戦できる時代となっていた。
まさに今、僕と彼女もネット上での対戦を終え、いつものようにお腹いっぱいカードゲームに興じた後の雑談としゃれ込んでいるところだった。
『でも、ひょっとするとその子、キモータさんと仲良くなりたいのかもしれませんよ?』
「まさかぁ」
お恥ずかしながら、キモータとは僕の事。いわゆるハンドルネームというヤツだ。
このTCGをはじめた頃に友人達とゲラゲラ笑いながら決めた名前だが、若気の至りとはこの事か。本音を言うと、今更ながら何でこんな名前にしたのかと後悔している。
名は体を表すだなんて昔のヒトはたいそう上手いことを言ったもんだが、この名前を聞き僕を見たプレイヤーの大半が、あぁと納得する様は、……あのさぁ。
そりゃ名付けたのは己自身だし、誰のせいにも出来やしないけど、こうまで露骨だと流石の僕も傷つくってもんだ。
だからといっていざ変更しようにも、このゲームの使用上、公式戦に出るために必要なユーザーIDと名前がガッツリ紐付けされていて、ネーム変更=旧IDの抹消。
そうなれば今までの獲得ポイントの消滅やらなんやらとデメリットの方が多く、もはや泣き寝入り状態。
そういえば、このバカみたいな名前を、初見で笑いもせずに呼んでくれたのはこの子が初めてだったな。このアホな名前にホトホト嫌気が差してただけに、何か妙に嬉しかったんだ。
『素直になれない女の子って、けっこう多いんですから。今日のそれもキモータさんと話すきっかけ作り、だったりして』
ホントですかぁ?
ちょっとそれは話を飛躍させすぎではないだろうか。
あの同級生からはそんな雰囲気なんざ微塵も見受けられなかったけどと、こちらとしては半信半疑な生返事。
そもそもあんな美人な陽キャが、どう間違えたら僕なんかと仲良くなりたいのか。流石にそれはないですよ。だてに長年キモオタやってないのでハッキリわかる。
顔は良くないし、人気もない。元気もないし、覇気もない。ノリも悪いし、なによりも相手はキャピキャピの女子高生なんだ。こんな男に、なんの魅力を感じようか。
宝くじで一等当てる方がまだ現実的だとさえ思える。
『今ごろ家で落ち込んでるかもですよ? 失敗した。こんなつもりじゃなかったのに、って』
どこか励ますような少女の声に、ちょっとだけ心の傷も塞がった気がするのだから、僕もなかなかにチョロいヤツだね。
まったく、今日も今日とて可愛い声で可愛いことを言ってくれるなぁもう。
相変わらずこの子は良い子だ。こんなキモいのとあんな美少女にロマンスなんて惑星直列くらいにあり得ない事だろうに、僕を励ますのが目的だろうけど、同時に見ず知らずの女子をこうまで庇うのだから性格は申し分ない。
きっと容姿だって相当に可愛いはずだ。いいや、間違いなく可愛い。声の感じからも、そう断言できる。
「みんなバニラブさんくらい素敵だったら良いんですけどね」
バニラブさんとは彼女の事。
思い返せば、この素敵でチャーミングな女の子と出会ってもう3年くらい経つのか。
はじめは、このTCG初心者用の掲示板でティーチング希望の書き込みを見たのがきっかけだった。
当時のプレイヤーデータも一番下の12歳以下で登録されていたし、このカードゲーム、競技人口の9割くらいが男だからさ、てっきり年下か、もしくは同世代くらいの男子だろうと軽い気持ちでOK出したんだけどな。
――今でもはっきり覚えている。
第一声こそ、上ずった声でしどろもどろ。
声も小さくて、なにを言いたいのだろうと解読に時間がかかったが、その日、イヤホンから流れてきた声があまりにも可憐で、そうだ、当時好きだった声優さんの声にどことなく似ていたから、度肝を抜かれたんだっけ。
その頃すでに、日常での異性との触れ合いなんてほぼ皆無だったから、そんな時期にこの出会いだぜ。それはもう舞い上がったさ。運命の出会いだと半分くらい勘違いした。
そう、半分だけ勘違いしたんだ。
半分だけね。
勘違いしなかった残りの半分は、怖いよね。どこか冷静な自分がしっかりといるんだよ。そして、無理なことはやめろと警告してくるんだ。
そうなんだよな。そもそもが、マンガやアニメの見過ぎなんだよ。
そんな出会いがあったところで、そう上手く事が運ぶわけがないし、それに、こんな僕だぜ。――勘違いしたところで何が出来るわけでもないだろうにさ。
物心ついたときからオタクな僕は、中学へ上がる頃にはすでに良い感じに仕上がっていてさ、こんなキモいヤツが周りの女子達にどう扱われたかなんて説明するまでもないだろう?
今思えば勝手な苦手意識だろうな。でもその時の僕は、だって相手は女子なんだ、と。僕を汚物のようにイヤがるあの子達と同じ異性なんだ、と。
イジメや嫌がらせみたいなものを目立って何かされたわけではないけれど、正直その時の僕は、あの冷たい視線を放つ女の子という存在が理解できなくて、いつしか触れ合うことが怖くなっていた。
だから、はじめは色々と考えるところもあったからさ。コレは無理だなと、断ろうとしたんだ。
だけどそう言うと、向こうは
『ダメ? ど、どうして、ですか?』
と、たどたどしくも純真無垢な返答をよこしてきて、ぐぬぬ。
どうしてかと問われても、実生活におけるこんな情けない僕の立ち位置を説明しなければならないのは当然辛いしイヤだ。
しかも、こういうネット世界には疎いようで、どう説明したものかと黙りこくった僕に、はてさて何を感じ取ったのか。唐突に
『あ、そっか。……まずは、自己紹介。から、ですよね。わ、私の、名前は――』
だもんな。
僕がダメだよと強めに止めなければ、きっと彼女のプライベートはダダ漏れだったはず。
そうなると、ネットの世界は怖いんだ。
個人情報なんて悪用されたらとんでもないことになるし、更には、異性とあらば見境無く手出しするとんでもないヤツらがごまんといるんだ。
今ココでしっかりと言い聞かせないと、彼女がネットに不慣れだとかどうだとか、そんなことお構いなしであっという間に変態犯罪者達たちからペロリ。
でも、それを注意すると、またもや何でダメなんですかと再びのぐぬぬ案件。
……本音では面倒だと思った。彼女には悪いけど、地雷を踏んだとさえ思った。
なんだコイツと強制的に通信を切り、すぐさまブロックすることも出来たけど、――ここまでくると、少しばかりだけど関係が出来上がってしまって、もはや他人ではない。
確かに彼女は女の子だ。
もしかすると、小学校で仲の良かったあの子と一緒。
中学生になった途端、手のひらを返して距離を取った彼女と同じ。
はじめは仲良しでいても、そのうち気持ち悪いと離れていくかもしれない。友情を感じていたのは僕だけだったのかと、あの時と同じ、また寂しくて悲しい思いを味わうかもしれない。
でも、だけど、やっぱり。
“ あのさ、そういうのいい加減に卒業しなよ ”
最後にもらったあの言葉が、未だに深々と僕の胸には突き刺さったまま残っている。
中学に上がってほんの一ヶ月ほど。廊下でたまたま会ったあの子に、いつもどおり話しかけただけだったのに。
帰ってきたのは痛烈な一撃。アレは効いた。効果は抜群だった。一発で足にキた。
小学生の頃までは、毎日のようにふたりでバカ話しては笑いあってさ、僕にとっては最高の相棒だったのに。
こっちが勝手に親友だと思い込んでいただけだったのか。ホントは迷惑だったのか。楽しかったのは僕だけだったのか。
いや、結局のところ、僕が女子という生き物を理解できていなかったにすぎないのか。
それなのに、身勝手に自分の趣味趣向を押しつけて、僕が好きなモノはコイツも好きだろうと、なんと傲慢なことだろうか。
少しの間の自問自答。
蘇るのは、未熟で恥ずかしい自分よがりな記憶ばかり。あれ以来、僕からも彼女を避けるようになって、もうどれくらい話してないだろうか。あの子の声は今でも忘れていないけど、今の彼女は、はたしてあの時の声のままなのだろうか。
答えの出ない問いかけに、まだこうやって苦しめられているのに、それでも僕ってヤツは、また懲りずに女子との関わりを持とうというのか。
やめとけ。影ではトラウマ級の変なあだ名で呼ばれてるかもしれないぞ。
やめとけ。親友だからと口を滑らせた、オマエの秘密を笑い話にされてるかもしれないぞ。
やめとけ。はじめから僕みたいなキモオタとは、友達じゃなかったなんて気づきたくないだろう。
やめとけ、やめとけ、やめとけ、だから、やめとけ。――いや、それでも。
『……ど、どうしても。どうしても、やってみたいんです』
声は相変わらずオドオドと緊張したまま変わらないけれど、でも、彼女の “このカードゲームがしたいんだ” という必死さ、そのひたむきな熱意に、いつの間にか僕の心は貫かれていたんだと思う。
僕は、あらためて考えた。
自分の好きを共有できる相手。同じ話題で盛り上がれる仲間。僕が欲しいのはなんだ。大切にすべきはなんだ。
そしたらさ。なぁんだと。なんだ、そんなことかと。我ながら、こんな簡単で単純で馬鹿馬鹿しいことを、良くもまぁぐだぐだと思い悩んだものだと呆れてしまう。
憑きものが落ちたようだった。
だって、そこに性別なんて関係ないし、あの子が、あのクラスメイトの女子達が、僕をどう見ているかなんて――そもそも考えるまでもないじゃないか。
そんなヤツらの事なんて、考えるだけ時間のムダだ、青春の浪費だ。
もしかすると、そのうちこの子も僕に向かって後ろ足で砂をかけて出て行くかもしれない、これでもかと、恩を仇で返されるかもしれない。
なんて、考えるのも馬鹿らしい。
それならそれでいいじゃないか。それはその時悔やめばいい。泣けばいい。ただそれだけのこと。友達なんて、オタクやってりゃ減りっぱなしが基本ムーヴ。年々、一歩進んで二歩下がるもんなんだよ。
それよりも、考えてあげるべきは、間違いなく今現在の彼女だ。
目の前で、こんな僕を頼ってきている彼女の今だ。
そうだ。――今、彼女を助けてやれるのは僕しかいない。
後から思えば、そんなもんただの勘違いだし、出した答えもお粗末様。とんだ自意識過剰で痛いヤツだよな。
でも、こんな良い子を見捨ててさ、僕の気持ちが晴れるわけではないし、いつドコでこの子が酷い目に遭うかもと考えたら、もう見捨てるなんて出来なかった。
ついにはわかりましたと僕が折れ、やったぁと今日一番な彼女の弾むような声。
もちろん、ネットに生息する性に爛れたモンスターのことを懇切丁寧にとはいかない。
彼女の純粋さを汚す説明なんて出来やしないからさ、そりゃあ、二重三重のオブラートに包みながらも悪戦苦闘。
その後の僕の全力を尽くした努力の結果、
① お互いに顔見せなし。絶対に個人情報は明かさない。
② 連絡事項は全てメールでのみ。
③ カメラの位置は固定。彼女の机の天板を真上から映す独特の画角のみOK。
この三つの条件を絶対に厳守するようしっかりと言い聞かせ、今に至っている。
それからは、相変わらずお互いに顔も見たことない間柄だけど、不思議と気が合って、週に数回こうやって時間が合うと対戦&雑談を繰り返している。
『す、素敵だなんて、……もう。褒めても何も出ませんよ』
ふと、イヤホンを通して聞こえてくるハニカんだように上ずった声が、なんとも甘酸っぱいではないか。その少女然とした反応が満点だ。どっかのアイス女にも是非見習ってもらいたい。
『あんまりそういうことばかり言ってると、勘違いする子が出てきますからね』
拗ねたような声色の変化に、スミマセンと笑って返す。
でも大丈夫。それに関しては心配ご無用なのですよ。なんせ、僕の容姿を見れば、どんなテンプレなチョロインでも、それが例え百年の恋だったとしても、相手がマッハで冷めます。自信があります。
自信満々な僕の発言に、またそうやって、と呆れたような声色で彼女は溜息をつく。
『――少なくとも、私はキモータさんのこと、とっても素敵だと思ってますよ』
「ぐっ」
と、出てしまったとっさの呻き声がマイクに拾われていないことを願いつつも……コレで何度目だろうか。
なんだよ、素敵って。
――はじめは彼女も女子だからと、どこか穿った見方をしていたからかもしれない。
でも、この子は僕の弱った心を的確に、――いっつもなんだ。いつも一番欲しい言葉で包んでくれるもんだから、しかも、そこにはイヤミがなく打算的な何かも感じない。
やめてくれよ、そんなキミの方が百億兆倍ステキじゃないか。
傷つくまいと防御力を高めて挑んだ僕の心は、彼女の放つ心の底からの慈愛に、まるで夏場のアイスのようにあっさりと溶かされてしまっていた。
あぁ、無自覚ほど手に負えないとはいうけれど、文字通りメロメロだな。メロメロだ。
ことあるごとに、自らのことを世間知らずと彼女は笑うけど、いいや違うね。それは魅力というのだよお嬢さん。
とんだ癒やしという名の破壊兵器。尊さで人が死ぬぞ、これは。
本当に、その抜群な威力を持って毎回僕を泣かせにかかってくるのだから、質が悪い。
あまりにもこういうことが起こるもんだから、彼女は聖母か何かだろうか。天使かもしれないとすら疑い始めている僕がいる。
ハッキリ言って、彼女とのこの瞬間が最近の僕の癒やしである。
この時間がなければ、今日のアイス事件もそうだけど、この逆風と荒波が押し寄せる現実世界で、僕はとっくの昔にくじけていることだろう。
彼女は、現実というこの枯れ果てた砂漠にある僕にとっての唯一のオアシス。孫悟空の食べた桃と同じくらい僕の寿命を日々延ばしてくれている。
こんな子が他にいるだろうか、いや、ない。ありがたいことだ。
この感謝を伝えるためにも、どうにかしてこの子に投げ銭できないものかと、最近は割と真剣に考えているくらいだ。
『う、うそじゃない、ですからね』
「嘘でもいいです、すっごい嬉しいです。僕は、全力でバニラブさん推しなんで」
でも、なんにでも限度はある。
あまりの尊さに、少し周りのことが見えてなさ過ぎたのか、とっさの事とはいえ我ながらなんとも気持ちの悪いことを言ったもんだ。
「「……」」
ほら見ろ、陰キャのくせに慣れないことを言うもんだから妙な空気を作り出してしまったじゃないか。
お互いに、次の言葉を探しているような、そんな変な静寂が訪れてしまった。
一切の混じりっけなしの純粋な本音だけど、何でもかんでも言えば良いというものではない。口に出すにしたって、時と場ってのがあるだろうに、今回のコレは完璧にタイミングを間違えている。
に、にへへ。
うふふ。
僕の誤魔化すような変な笑いと、気恥ずかしそうに笑う彼女の声。
ぎぎぎ。間違いなく変なヤツだと思われた。
あぁ、なんて恥ずかしいヤツだろうか。自分の口から出たあまりの濃厚なキモさに、過呼吸を起こしてしまいそうだ。
穴があるなら入りたい。いっそのこと、誰か僕を力の限りに惨たらしく殺してくれないだろうか。
そんな、今にも自死しかねない僕を救ってくれたのは、――いつものアラームだった。
過去、お互いに好勝負が続くと時間を忘れて熱くなってしまう事が何度かあったため、それを防止するための策。
彼女はまだ中学生という話だし、それならなおのことあまり遅くまで起きているのは好ましくないからと、僕がスマホで設定したこの音が鳴れば、もうお開きの時間。
いつもなら、もう時間かと名残惜しさでいっぱいだけど、今日ばかりは “でかした” と褒めちぎってやろう。なにを? 決まっているだろう。僕を救ってくれた、このスマホのアラーム様をだ。
『き、今日は、ありがとうございました』
彼女もたぶん同じ気持ちだったんだろうね。
いつもはそんなことないのにさ、どこか逃げるように、カメラ越しに『おやすみなさい』手を振ってきた。
うぐぐ。やっぱり動画だけでなく、ネットを介してキモさまでお届けしてしまったようだ。
過去何度かあった失態だけど、今回のは特別にヤバかった。
もし僕が美少女で、それこそどこぞの濃厚なキモオタからこんな言葉を投げかけられれば、悲鳴一発。そんなもん考えるまでもなくしばらく距離を取るだろう。
だけど、ここで焦ればキモさの上塗り。
言い訳を垂れ流しそうになる口のはしをグッと結び、出来るだけ平静を装いつつ、僕も、同じように手だけしか映らないカメラへと自分の手を振りかえした。
「こちらこそ、ありがっ、ごじゃした」
最後に一言だけと、背伸びしたのが、まぁトドメの大失態。
これでもかと噛み倒してしまったのが、なんともキモいことキモいこと。本当にカッコ悪いったらありゃしない。
回線が切れ、真っ黒になったPC画面を前に、……唸りながらの大反省。
いよいよひとりとなった自室に、妙な寂しさを感じてしまう。
「……ごじゃしたって、ごじゃしたってなんだよ」
僕はもういちど、大きく情けない溜息をついた。
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