ローズの因縁
ストリーム村で騒動が起こっている頃に。
魔術学園グローイングの保健室で、急にビービーという警報音が鳴った。
ベッドで寝ていたローズは、驚いて起き上がった。
「何事ですの!?」
「さ、さぁ……」
保健室の女先生がのんびりした口調で答えていた。
「私は何も分かりません。火事ではないと思うのですが……」
「そんな事は百も承知ですわ!」
ローズは辺りを見渡した。
隣のベッドにブライトが寝ている。警報音はそこから鳴っていた。
ローズはベッドから降りて、ブライトのポケットをまさぐる。
「ご無礼お許しくださいね」
白い護符を見つけた。激しく点滅していた。警報音がそこから鳴っている。
「どうやって止めれが良いのかしら?」
「……すぐに止めるから、返してくれ」
穏やかに声を発したのは、他でもないブライトだった。
「世界警察ワールド・ガードの長官から緊急の呼び出しが掛かった。行かなければならない」
ゆっくりと起き上がるが、治りきっていない傷を押さえてうめく。万全の状態ではないのだろう。
ローズは白い護符をブライトに返して、胸を張った。
「あなたが無理に動く事はありませんわ。姓はクォーツ、名はローズ。この私に任せれば何でも解決しますわ!」
「頼もしいが今回の呼び出しはかなり緊急性が高い。シェイドかエリスがいるだろう」
護符の警報音を止めたブライトの言葉に、ローズの瞳が光った。
「ますます私の出番ですわ!」
ローズは自らの金髪をかきあげて、無駄に大きい声量で高笑いをあげた。
「どっちにしろ因縁の対決となりますわ!」
「気持ちは分かるが一人で無茶をしないように。僕みたいになるから」
ブライトはベッドをゆっくり降りながら、いたずらっぽい笑みを浮かべる。
「スタンドプレーは自分も周りも危険に晒すよ」
「独自の判断は必要ですわ。シェイドは友達を泣かした最低男、エリスはクォーツ家に泥を塗った最低女ですわ。両方とも私が倒してあげますの!」
ローズは右手で握りこぶしを作っていた。両目は決意に満ちていた。並々ならぬ執念があるのだろう。
しかし、ブライトは首を横に振る。
「あの二人は犯罪組織ドミネーションの中でも凶悪な魔術師だ。一人で倒そうとするべきじゃないよ」
ブライトは微笑んで、ローズの手を取る。
「僕と協力してほしい」
「ま、まあ……あなたほどの実力者なら考えてあげてもよろしくてよ」
ローズは頬を赤らめて頷いた。
「話は決まりましたわ。呼び出された場所に向かいましょう!」
「そうだね、目的地を調べるよ」
ブライトはローズから手を放し、護符を握る。
すると、護符が穏やかな銀色の光を放つ。一筋の光が天井に伸びる。そして、天井に向かって周辺地域の地図を描き出す。
ローズは感心していた。
「素晴らしいアイテムですわね」
「世界警察ワールド・ガードが誇る救助用アイテムだ。みんな助かっているよ」
ブライトは自慢げに言っていた。
天井の地図は、現在地である魔術学園グローイングと、東に行った所に、銀色の丸いマークが付いて強く光った。
「銀色のマークは、現在地と目的地を示している。なるほど、ストリーム村か。すぐに行こう!」
ブライトは言うが早いか、護符をポケットにしまって走り出す。
ローズは慌ててついて行く。
「お待ちなさい! 私を置いていくなんてありえませんわ!」
この時の二人はまだ知らない。
フレアとクロスが、犯罪組織ドミネーションの幹部やエージェントと戦うより、ある意味で大変な状況になっているという事を。
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