第17話 お前ら魔物なめてるだろ


 四人はギルド前に集合した。


 クラウスとイエルクは胸、肩など最低部分を防御する軽めの甲冑。

 アレットは動きやすそうなタイト気味の上下の黒い布の服。背中のカゴに長短何種類かのノエルの槍を入れている。


 ノエルの防御をあまり考えていない革の鎧をクラウスは心配そうに見る。

「ノエル、大丈夫か、そんな装備で」

「A級以上の区画ってことは、A級でも倒せる敵ってことだろ?、これで十分だ」


 周囲の冒険者達がざわめき始めた。

「おい、剣帝、剣聖、槍姫のパーティーだってよ」

「すごいメンバーで攻撃力抜群だろうけど、防御は考えてんのか?」

「近距離戦闘オンリーか?」


 声のする方を向いて、ノエルが笑う。

「やられる前にぶった切って、ぶっ刺させばいいんだろ?」

「は、はい、おおその通りです……」

 周囲の冒険者達はすごすごと散っていった。


「さあ、行こう!、ゴルダの丘に出発だ!」

 イエルクがリーダーらしく、かけ声をかけるが、誰も動かない。


「どこにあるんだ?」

 クラウスが聞いた。


「どうやって行くんだ?」

 ノエルが聞いた。


「存じません」

 アレットが答えた。

「なんだよ、お前ら知らないのかよ?、俺も知らんけど……」


 クエストは早々に挫折してしまった。




 結局、ギルドに掛け合って、案内人を紹介してもらうことにした。しかし、ギルドマスターに完全に拒否された。


「いくら、剣帝様、剣聖様のお願いと言っても、無資格のパーティーへの支援はできませんです。規則違反になっちまいます」


「金ならいくらでも出すといってるんだが」

 クラウスはもう一度頼んでみた。


「これは、お金の問題ではございませんので……」


 一行は諦めて外に出た。

「どうするかな」

「地図買って行くか」

「それしかなさそうだな」


 その時、以前会ったことのあるギルドの従業員の女性が、十二、三歳の女の子を連れて現れた。


「あのー、剣帝様。この子はパメラ。冒険者の父親とずっと一緒だったので、この辺の地理や魔物に非常に詳しいです」


「我々を助けて問題ないのか?」

「お礼さえしていただければ、まだ小さいのでギルドには入ってませんので、問題ございません」


「君はギルドの人間なのに、なぜ、助けてくれるのだ?」

「パメラには時々お世話になることもありますし、それに……、私、剣帝様のファンなんです!、サイン、いただけますか?」

 そう言って色紙をクラウスに差し出した。

「は?」


 その光景を見るノエルとアレット。

「ノエル様、あれが、剣帝ファンです」

「結構モテるではないか」


「なんで俺じゃないんだよ」

 ブスッとふてくされるイエルクだった。




 横に並んだ四人をパメラがジロジロと見る。

「剣士、剣士、槍使い……、あんたは?」


 アレットに聞く。

「針とダガーナイフが使えます」

 パメラはヤレヤレとばかりにため息をついた。


「剣聖の剣は、聖剣だったりするのか?」

「いや、鋼の剣だが」


 パメラはクラウスの長剣を指差す。

「それは、カイザーソードとか、プラチナソードとかか?」

「鋼の剣だが、ダメか?」


「お前の槍は……」

 パメラはノエルの普通の槍を見る。

「聞かなくてもいいな」


 パメラはあきれたように、ハー、とため息をつく。

「打撃オンリー、しかも、全員、近距離戦闘だけ。装備は普通の剣と槍。それに針とナイフ?、お前ら、魔物舐めてるだろ?」


 ノエルはハッハッハッと高笑い。

「大丈夫、みんな腕は確かだ。ぶった斬って、ぶっ刺すだけ」

「魔物は、そんな甘くないぞ」

「まあ、やってみりゃわかるだろう。さあ、行こう!」


 パメラは再びため息をついて、隣に立つギルドの従業員に愚痴をこぼした。

「いるんだよなあ、勘違いして魔物に挑んでボコボコにされる腕自慢の金持ち貴族。まあ、いいけどね、金になりゃ」 


 パメラは並ぶ一行に号令を掛ける。

「それじゃあ、あたいについてきて!、A級の魔物はドンドン出てくるから用心しろよ」

「はーい」


 パメラの後ろに続く一行は返事をして付いていった。


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