本日到着予定

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今回のブラックユーモア焙煎度

苦味:★★★

ドライさ:★★★

スパイシーさ:★★★

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『本日、1件お荷物をお届け予定です』

スマホに通知が届いた。

よく利用しているショッピングサイトからの発送の様だ。

なんか注文したっけ? 注文履歴を確認するが身に覚えはなかった。


カスタマーセンターに電話する男。

「頼んでもいない商品が配達中となってるんですが」


「今、お調べします。注文番号はお分かりですか」


「いや、だから、注文していないから注文番号なんて知らないよ、注文履歴もないし」


「失礼いたしました。では、お名前と発送番号からお調べします」


男は電話番号と先程通知があった発送番号を告げる。


「お調べしましたところ、確かに商品が配達されていますね」


「注文していないのでキャンセルしてください」


「それが、現在、配達中となっておりますのでキャンセルできません。そのまま商品を受け取らなければ、販売者まで返送されますので。そのように対応して頂いてもよろしいでしょうか」


「あーあ。面倒くさいですね。因みに中身はなんですか?」


「そうですね。今、お調べします。何か最近、買われた物などで、心あたりはありませんか?」


「いや、だから、ないですよ。さっきから何も買ってないと言っているじゃないですか」


「失礼いたしました。今、お調べしましたところ、お客様、一年前に確かに買われているみたいですよ」


「一年前!?一年前に買ったものが今日、届くのか?どう言う事だ。それは」


「記録にはそうありますね。一年前、本当に覚えていませんか? お客様は【恨み】を買われたみたいですが」


「……!」


一年前に恨みを買う。男には身に覚えがあった。

一年前、登校中の児童の列に車が突っ込んで大勢亡くなった。

運転手の男は加重労働による寝不足が原因だった。


罪を悔いた運転手は獄中で首を吊って死亡。

運送業者の社長にも責任の追求が及んだが、裁判の結果、無罪になった。


男はその会社の社長だった。


「あんた、遺族の者か?俺は無罪なんだ。変ないいがかりはやめろ。それに恨みを買ったってなんだ恨みが届くっていうのか」

「いえ、私は遺族の方では御座いませんが。配達しているものは【恨み】ではありません。【死】みたいです」


「ふざけるな」


男は電話を切った。


ピンポーン


インターホンが鳴る。

男はドアスコープを覗き込む。

そこには血だらけの男が大きめのダンボールを抱えて立っていた。

顔を見ると、獄中で首を吊った運転手だった。


「おいおい。嘘だろ。なんでお前が。お前が起こした事故だろ。逆恨みもいいところだ」


ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン


ドアを開けずにいると、何度もインターホンが鳴る。


男はさっきの電話を思い出した。


『そのまま商品を受け取らなければ、販売者まで返送されますので』


男は居留守を装うように息を潜めてじっと動かずに待った。


しばらくすると、インターホンが鳴り止んだ。

ドアスコープを覗き込むとそこには誰もいなかった。


男はドアを恐る恐る開け、隙間から顔をだす。


「ふー。誰もいない」


ポケットに入っていたスマホに通知が入った。



『商品の配達が完了しました』


「いや、俺は受け取ってないぞ。はっ! もしや」


男はドアをおもいっきり開く。ドアの影に隠れて見えなかったが、そこには大きなダンボールが置かれていた。


「置き配!!」


大きなダンボールがひとりでにゆっくりと開いていった……。

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