そんな有名になりたいあなたへ

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今回のブラックユーモア焙煎度

苦味:★★★

フレッシュ感:★★

ドライさ:★★★

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何の取柄もない、どこにでもいる平凡な男性。

彼の人生はどこにでもある、ありきたりで退屈なものだった。


彼はそんな人生に甘んじながらも、そんな人生でいいのかと自問自答する日々を送っていた。

そして、気が付けば40代。パワハラで会社をやめた彼は、一念発起することを誓う。


「有名になるぞ!」


人生で一度もスポットライトが当たったことがない彼は、死ぬまでに有名になってやると意気込んだ。


何をしたら有名になれるのか。

有名になれるアイディアなど持ち合わせていない彼は、とりあえずネットで調べてみる。



お笑い芸人。

これは、もしかしたらいけるかも。お笑い番組を見ているとき、自分の方が面白いネタを考えられると思った事があるぞ。趣味の散歩をネタにしたお笑いなんてどうだろうか。


ユーチュバー。

これは、当たるとでかそうだ。個人で動画をとってアップするだけだし、敷居は低そうだ。趣味の散歩の動画をあげてみようかな。


小説家。

そういえば、子供の時に作文コンクールで賞を貰ったことがある。小説のコンクールもいろいろ開催されているみたいだ。散歩がてら小説のアイディアを考えてみようかな。


エッセイ。

ありきたりな人生に興味を持ってくれる人などいるもんか。

いや、逆に世間は今、散歩のようなものを求めいるのかも。まずはブログから始めてみようか。



彼は自分の人生を空想しながら、有名になる方法を調べていく。


「おっ!」彼はあるタイトルに惹かれた


『そんな有名になりたいあなたへ~なにがなんでも有名になりたい40代男の奮闘記~』


彼はサイトを開く。


40代の男性。趣味は散歩。パワハラで会社をやめる。

こんな人生でいいのかと思い有名になるため活動中。


それは何の取柄もない、どこにでもいる平凡な男性がつづったブログだった。

まるで自分の事を言っているようだと親近感を抱き、時系列順に記事を読み進めていく。



『活動記録1 お笑い芸人』

ブログの主はまずお笑い芸人を目指すために行動していた。

だが、研究といいお笑い番組をただ見続けて、感想を連ねているだけのものだった。

最後の方は、お笑い芸人は若くないと人気がでない。と締めくくり断念していた。



やっぱりそうか。と彼はつぶやき次の記事を見る。



『活動記録2 ユーチュバー』

次はユーチュバーを目指すブログ主。

趣味の散歩を動画にあげている。ただおじさんが近所を歩いているだけの面白くもない動画。。

ただ歩いてるだけの動画は、アクセスがまったくあがらない事を知りました。と締めくくり断念していた。



ただ歩くだけの動画は誰も見ないか。と彼はつぶやき次の記事を見る。



『活動記録3 小説家』

次は小説を書きだすブログ主。

何の取柄もない、どこにでもいる平凡な男性が趣味の散歩を通じて人生を成功させるサクセスストーリーだった。

これもアクセスがなく、誰からの反応もない様だ。未完のまま書くのを断念していた。


小説はダメか。と彼はつぶやき次の記事を見る。



『活動記録4 エッセイ』

ブログ主は自分の今までの自分の半生をエッセイに書き起こすと書いている。

その中にはこのブログの活動記録も含まれていた。


でも、それはほぼ愚痴だった。今までの人生と有名になれない自分への愚痴。

こんな無意味な人生を歩んできた自分のエッセイが読まれるなんてないと、と締めくくり断念していた。


そんなに人生は甘くないのかな。と彼はつぶやいた。


実にブログは4年ほど投稿されていた。

何度もチャレンジに失敗するブログ主を見て、自分ごとに思えてきた彼は、だんだん胸が痛くなっていった


今年の日付で記事が一つだけ更新されていた。

タイトルにはこうある。

これで最後にします。

彼はブログ主の今までの人生を追体験しただけに、なんだか物悲しい気持ちになりながら最後の記事を見た。


『これで最後にします』


もうこの記事を投稿するのは今日でやめにします。


どんなに挑戦しても40代から努力して有名になるなんて無理です。


僕はあきらめました。もう疲れました。現実は残酷です。


本当に無意味な人生でした。お疲れ様でした。


ここまで見てくれた人。ありがとうございます。




最後まで見てくれた人に教えます。


僕は……ただ一つだけ有名になれる方法を見つけました。

それは簡単な事でした。


死んでも有名になりたい人という人だけ見てください。


僕は今からそれを実行します。


それでは。





なんだこれ。彼は不気味に思いながらも、

記事の最後にポツンとある、URLに目がいく。



恐る恐る。リンクを開く。



動画が流れた。




『そんな有名になりたいあなたへ』

『とっておきの情報を教えちゃいます』

『いまなら、10万円のところ。なんと5万9999円』

『気になる人は、画面のURLからアクセスして、お金を振り込んでね』


彼は夢から醒めた夢ような目で動画をみていた。そして自分がいかに浅はかだったかを知り、有名になることを断念した。

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