深い友情愛

「ねえ、一本吸おうよ」


 彼女は疲れた表情で煙草を取り出す。じゃあ久しぶりにと言いながら、一本貰った。

 薄暗い路地は家から漏れ出る灯りだけで、二人の煙草の火がよく見える。彼女は煙を吐きながら口を開く。


「明日は映画にでも行こうね。そのあと喫茶店でお茶しながら話そうよ」

「そうだなあ。今日はボーリング行ったし。明日はゆっくりも良いかも」


 近辺の家から、焼いた魚の良い匂いがする。吹いた風に寒さに身体がブルっと震えた。


「今日は居酒屋で魚をアテにお酒でも飲もうか。熱燗もいいかも」

「そうねえ。一〇分くらいの場所にあったよね。行こう」


 彼女が煙草を吸いながら言う姿に、恋愛的な感情ではなく、性別を超えた親友のような感じがした。

 ポケット灰皿に火のついた煙草を入れ、揉み消す。少し熱いが慣れてしまった。そんな僕を見ながら彼女は手を出す。


「ほら、行くよ」


 手は良いと横に振り、親友のような彼女の横に立ち、居酒屋へ向かった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る