クリスマスとファミレス
雨夜いくら
クリスマスとファミレス
「…友達の話なんだけどさ、聖夜に別れるカップルってどう思う?」
「いや、その導入で本当に友達の話だったら俺が困るんだけど。間違いなくお前の話だろそれ」
「あ、バレた?」
聖夜、つまりはクリスマスイブ。
それは昨日、今日はクリスマス当日であり…俺達はファミレスで男二人。
目の前に居るのは幼馴染であり親友のユイト。
「リクトは…彼女とか、居たっけ?」
俺、リクトとユイトは別々の高校に入ってから少し会う頻度が減り今ではこういったイベントや記念日でもない限り話す機会もない。
「居ない。居たこともないよ」
「だよねぇ…リクトだもんね」
「おい、どういう意味だよ」
「モテないでしょ?顔はいいのに…常に「人と関わるのなんてゴメン」みたいなオーラ醸し出してるしさ」
「モテないのは認めるけど、そこまで言われる筋合いねえよ」
「まあリクトの話はどうでもいいとしてさ…蛙化現象って知ってる?」
蛙化現象、最近…でもないか、少し前から聞くようになった気がしなくもない。
「詳しくは知らないけど、好きな人に好かれると冷める…みたいな奴だろ?」
「そんな感じ、片思いから両思いになった瞬間「気持ち悪い」って感じるらしいよ」
「…そうなったと?」
「実はそうじゃなくて…」
ユイトが何気なく窓の外を見る。
釣られて目を向けると、店の前に立つ巨大なクリスマスツリー。
イルミネーションに飾られた美しい夜景と、イチャつく一組のカップル。
「…あれ、元カノ」
ユイトの言葉に、ソフトドリンクのオレンジジュースを吹き出しそうになる。
「マジで!?隣にイケメンいるけど?」
「なんか…蛙化現象を言い訳に浮気してたっぽいんだよね」
「うわぁ…生々しい、そういう話嫌いだわ…」
「何となく、最近冷めてる感じあったし。クリスマスに他の男とデート入ってたから、ボクと別れたのかな〜…なんて考えてたらアレだよ」
「えっ?なに、お前…この店選んだのそういうこと?ストーカーかよ?」
「違うよ、普通に相談乗ってもらおうとしただけで…。あそこに突入するべきかどうか」
「いや、絶対に辞めとけ。虚しくなるだけだから」
「ボク結構ガチ目に惚れてたんだけどなぁ…」
相手方、つまり今現在ツリーの下でイチャつくあの美少女さんが蛙化現象がどうとか言い出したのか。
「…あれ?じゃあ最近までお前はあの人の事好きじゃなかったの?」
「んー…なんだろうね、告白されたから付き合って…一緒に居たら気に入って…って流れかな」
「お前が告白“された”側なのか…いや、話の流れ的にそうか…。だとしても、なんか気に食わねぇな」
「だよね、浮気されるって…」
「いや浮気はどうでも良い。女の子に告白されるお前が気に入らん」
「えぇ…それボク悪くないでしょ!」
「まあいいや。結果、フられたんだろ?さっさと切り替えろよ。慰めるのも面倒くせえし…温泉でもよって帰ろうぜ。ここは奢るから」
「…まあ、いつまでもグダグダ言っても変わらないよね」
「そういうこと。お前家族に遅くなるって連絡入れた?」
………
クリスマスの夜はまだ長い。
ユイトの事だし、どうせ1ヶ月もしない内に別の彼女ができたとか報告してくるだろう。
俺はしばらく恋愛なんかする気ない……いや、しようがないんだけど。
まあ、クリスマスだろうが恋人と過ごすのも、友達と過ごすのも変わらないだろう。
家族と居る人も一人で家に居る人も。
わざわざ特別な日だと意識する必要もないんだろうな。
「リクト」
「ん?」
「やっぱ我慢できない」
「えっ?」
支払いを終えた俺の後ろを通って店を出るユイト。
彼の視線の先にはついさっき言っていた元カノが。
「あっ…ちょっ、おい辞めとけって、ユイト!」
……!
…………!
その後、圧倒的修羅場と化したツリー下。
俺はユイトを置いて、一人温泉に向かった。
あの後どうなったのかは知らないが…正月にあったとき、ユイトはスッキリとした表情で初詣に行っていた。
クリスマスとファミレス 雨夜いくら @IkuraOH
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます