33.これが最後の決戦だ
異世界に勇者と魔王を出現させ争わせていた敵を求めて異次元に突入し、ついに首魁の異次元人と対峙するイセカイマンと勇者レイブ達。
そこに巨大で禍々しい殺戮マシーンが迫る!
「空間反転、チェースッ!」凶悪な刃を向けたマシンがマドーシンクロベーサーの目の前から消えた!
そして遥か彼方から爆発音が聞こえた!
「ウワーッ!えくすかべーたガほすとニー!」何かが砕ける轟音が続く。
作戦指令室でクレビーが指を鳴らした。
「さっきと同じね!あの凶器を奴等の大事な機械のとこにぶつけたんだ!」
「イセカイマン…あの人ならそんな事も出来るって事ね」
「よおし!私達もこのまま進むわよ!」
マドーシンクロベーサーはイセカイマンが放った光の線を追って轟音の元へ速度を上げた。
二人のイセカイマンとマドースンクロベーサーが次元の壁を突き破った!
******
その先は、光輝く柱や輪が立ち並ぶ、謎の空間であった。
いうなれば、巨大な棒と輪の蛍光灯が立ち並んでいる様であった。しかし、その一角は先ほどの殺戮マシーンによって次々と砕かれていた。
「これが…次元を操って俺達を戦わせていた奴等のコンピュータ…」
「そうだうだうだうだ…
ここを破壊すれば奴等は数千年は君達の世界に手をだせないないないない…」
「ヤメロー!」「それはこっちのセリフよ!プロトン砲発射!」
手あたり次第に柱や輪を粉砕する光線攻撃!
「コウナッタラ貴様達ノ世界ヲ消シテヤル!」「その前にこの辺を全部ブっ壊してやる!」
尚も続く攻撃で異次元人の言うホストがガラスの破片と化していく!
「人生オシマイダー!」「弁償シキレネー!」異次元人の絶叫が木霊する。
周囲の輝きが消えていき、無限に続いて見えた空間の果てが壁として現れた。
そこにいたのは、不定形の怪人ではなく、貧相な3人の若者達であった。
私は変身もとい変装を解き、レイブもマドーレムを降りた。
「これで…終わったのか?」
「さあ。もうこいつは干渉できないだろう。だがこのホストにしろさっきブッ壊したサーバにしろ、再構築すればまた干渉する事は可能かもしれない」
「どっちも正解だ」『同僚』の声が響いた。そして、この連中の後ろに、同僚が現れた。
「たった今、いや、この次元に『今』という概念も変だが。
この連中の行った低次元への干渉を禁止し処罰する法が制定された」
「君が働きかけたのか?」童謡はニヤっと笑った。
「君達のお蔭かも知れないな。低次元から反撃されて甚大な被害が発生するって事例を作った君達の勝利だ」
レイブの顔が喜びに満ちた。作戦指令室でも皆が喜んでいた。
戦いは終わったのだ。
だが。
「犯人の引き渡しを要求します」レイブが宣言した。
「この連中の処分はこちらの所轄だ」「それじゃ駄目なんだ!」同僚がレイブに不思議そうな顔を向ける。
「俺達は戦い合って、多くの人が死んで、傷ついた。残された人も心の傷を負ってるんだ。
コイツらが何故こんな戦いを繰り返させたか、それをみんなの前で告白させなきゃいけないんだ。
そしてコイツらを裁いて、悲しみにケリを付けなきゃいけないんだ!」
レイブはいつしか涙を振り絞って叫んでいた。
同僚は暫く考えた。そして。
「私達に時間の概念は無い。君達が思う様にした後この次元のこの時点に引っ張って戻すが、それでいいか?」
「感謝します!」レイブは頭を下げた。
「名裁き、有難う」「殺さない程度にな」私は同僚に握手した。
同僚は溜息をついて言った。
「お別れかな?」
この人にも色々世話になったな。愚かな同胞の尻拭いにしろ、こっちへの理解を優先してくれた。
少しの幸せな夢も見させてもらった。
「ああ。出来る事なら、もう一遍東京駅辺りで美味い酒を飲みたかったな」
「落ち着いたら呼んでいいかな?」「ああ!是非!」
私とレイブは犯人達、ヒョロガリ陰キャ3名を連れてマドーシンクロベーサーに戻った。
レイブにクレビー達が、私にフラーレン達が集まる。
クレビーがレイブに抱き着き言った。
「これで終わったのね?」
「ああ、もう異次元からの干渉はなくなるさ」
フラーレンが私に抱き着いて言った。
「じゃあ、後はあのデカいならず者だけね!」一同は顔を見合わせた。レイブが言った。
「俺達の世界に戻ろう!そして奴をぶっ飛ばす!
世界を懸けた戦いの、これが最後の決戦だ!」
マドーシンクロベーサーは元来た道を引き返し、異世界目掛けて飛び立った。
虹色の空間を、元の世界から放たれた光のレールを辿ってひたすら飛んだ。
そして。
******
元の世界の地上では怒り狂った巨大ガッタイヤーが暴れようとしていた-私達が異次元に突入した直後の時間に帰って来たのだ!
ガッタイヤーの後ろに、虹の様な歪んだ空間が出現、そこから巨大なマドーシンクロベーサーが出現した!
そのまま巨大ガッタイヤーを跳ね飛ばした!
爆発し、無様に地面に叩き付けられる巨大ガッタイヤー。
そして大地に立つふたりのイセカイマン!
「こんのクソヤロー共があー!武器召喚!時空破断剣!」ガッタイヤーは上空に魔法陣を飛ばす。
だが、魔法陣は上空に留まったまま何も起きない。そして虚しく消えた。
「チキショー!何で武器が来ねぇんだよ!」地団駄を踏むガッタイヤー。
レイブが叫ぶ。
「教えてやろう!貴様に武器を送り込んでた奴も、貴様をこの世界に呼んだ奴ももういない!
貴様に味方する者はもう誰もいないんだ!」
「ざまぁカンカン河童の屁ー!」クレビーェ…古風なんでヤンスねえ。
「うぉらああ!死ねえ!」迫る巨大ガッタイヤー!しかし異次元人すら下した二人のイセカイマンの敵ではない。
巨大な腕の一撃を躱し、巨大な足蹴も躱し、光線技でガッタイヤーを攻撃、空中反転ダブルキックで巨体を蹴り倒す!
起き上がろうとするガッタイヤーをマドーシンクロベーサーが攻撃、更に打ち倒す!
二人のイセカイマンは向き合い、頷くと、イセカイマンが前に跪き両手を頭の上に合わせる。
マドーレムが後ろに立ち、イセカイマンの手に合わせる。
「「イセカイ合体クロスビーム!!」」
両者即興の合わせ技が巨大ガッタイヤーを貫く!
「プロトン砲、発射アー!」マドーシンクロベーサーも火を放つ!
ガッタイヤーの巨体が爆発に包まれた。炎上するガッタイヤー、一瞬真野田式光球が光った様にフラッシュすると、木っ端微塵に大爆発を起こした!
立ち上がり、爆発を眺める二人のイセカイマン。そして、硬く正義の握手を交わした。
******
地上には、巨大な鎧を失い、黒い鎧も砕け、全身から煙を発し倒れて蹲るガカイヤー、いや、我櫂谷独尊。
キレモン伯爵率いる軍勢が奴を包囲した。女性陣もマドーシンクロベーサーを降りて最後の敵と対峙した。
「俺ぁ、まだ終わっちゃいねえ…テメェ等をブっ殺して、女共を奴隷にしてやる…」
奴はまだ諦めず逃亡を図る。
「観念しろガカイヤー!貴様はまだ殺人まで犯していない!大人しく裁きを受けろ!」キレモン伯爵が幸福を呼びかけると…
「ウルセェー!俺に命令するなぁー!様をつけろよデコスケ野郎ー!」往年の超大作アニメみたいな事言い出した。
「俺にはまだ奴隷がいるんだあー!奴隷召か…」
奴が地面に魔法陣を飛ばすと…あ、マズイ。
「みんな下がれー!」私は一同に向かって叫んだ!一同はガカイヤーから距離を取った。
「ヘーッヘッヘ!俺様の魔力に恐れを成し…」
奴の足元に暗黒の空間が生まれた。そこから…無数の手が生えてきた。
その空間から、先に対峙された過去の勇者に従った少女達が、前魔王が、四天王達が…
「もう止めなさい!戦いはもう終わったのよ!」邪悪な気配を前に、ホーリーが叫ぶ。
「駄目だ。悪霊達は怨念だけで動いてる、レイブ…」
最後の戦いに臨もうとするが、フラーレンが止めた。
「貴方待って!みんな、悪霊を鎮めるのよ!」「解った…」
ライブリーが怪獣達を鎮めた時の笛を奏でた。イコミャーも、その音色に合わせ笛を吹き、フラーレン達は
「アーティパーティティロ、ロイアーテ。イートゥサモアイシトゥナマリガン…」
謎の呪文に魔力を乗せ、鎮魂の祈りを捧げた。
怨霊たちの動きが止まった。
「貴方達の魂が安らかでありますように…」クレビーとホーリーも魔力を注いだ。
「っざけんなー!テメエラ、殺っちまえー!こいつら皆殺しだあー!」
怨念の魔力を注がんとするガカイヤー、だがその時怨霊達がガカイヤーの足を掴んだ!
「え?ちょ、待てよ!お前ら!俺じゃねえ!アイツ等を倒せ!」
しかし暗黒の底から伸びた手はガカイヤーを闇に引きずり込もうとしていた!
そして、その中から…あれ誰だったっけ?
「あ~、ヘナチンダークナーだわぁ」「なんで地の底に?」
「きっとガカイヤーの真似して古戦場で怨霊を召喚しようとして飲み込まれちゃったんじゃね?」
「ふ~ん」軽!
「テ、テメェ!放しやがれ!」ガカイヤーは半分闇に引きずり込まれていた。
「貴様も来い!地獄の闇へ!」何かカッコイイ悪役みたいな台詞を吐いてダークナーはガカイヤーを闇に引きずり込んだ。
「テメェら、俺を助けろ!命令だ!うがあ!助け!助けて…」ガカイヤーは地面に沈んだ。
地面の闇の中から武器召喚の魔法陣が上空に放たれたが、たちまち消え失せた。
「ガカイヤーの断末魔だ!」私は北〇義郎っぽく解説した。
異次元のならず者を捕らえ、仇敵ガカイヤーも己が業のため奈落に消えた。
ここに、イセカイマンの、そして勇者レイブ達の戦いは終わりを告げたのであった。
戦いに嘆き苦しむ人々を救うイセカイマンの使命は終わった。果たして彼はこの後どうなるのであろうか。
どうするイセカイマン、どうなるイセカイマン?
…では また来週…
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