不合格の通知が届いた日の妄想日記

メタル10

第1話 不合格の日は心を休めて


 不合格、それは絶望を意味する言葉である。大学院への進学を目指して勉強してきたこれまでの日々も努力も、試験で失敗すれば全てが水の泡だ。そんな日は日記を書いてみる。


◇◇◇日記part


「やっぱりダメだったか」


 不合格と記された紙を手に取りながら、一人ため息混じりに呟く。


 季節は冬、年末まであと少し。就職活動をするには遅すぎる時期だ。選り好みさえしなければ仕事にはありつけるのだろうが私にはあまり向かない仕事が大半だろう。就職に有利な資格はろくに取れてないし。


 また大学院受験を受けようにも、次の試験日は年を明けてからだ。もしそこで不合格となれば自宅警備員の仲間入りだろう。


「これからどうしよう……」


 無意識に独り言を呟いてしまう。これからのことを考えると憂鬱だ。気分も落ち込み、何もやる気がでない。


 元々私はメンタルは強くない方だと自覚はしている。学力もそれほど高くはない方だと思う。


 大学院を目指す理由はただ漠然とした社会へ出ることへの不安もあるが、大学で学んできたことをもっと知りたい、もっと学びたいと思ったからだ。私が学んでいたのは心理学、人と関わることが苦手な自分を変えたくて勉強し始めた。


「……お腹が空いた」


 外はもう暗くなっていた。どんな時であっても人は空腹を感じるものだ。とりあえず今日はガツンと重いものでも食べますか!


「ごく、ごく、ぷはー!」


 コップに大量の氷を入れ、注いだコーラを勢いよく飲み干す。空きっ腹に炭酸が染み渡る、最高だ! 本当は酒を飲みたいところだが、冷蔵庫には酒がなかったので仕方ない。


 お次は、カップ焼きそばにからしマヨネーズをいつもより多めにかけたものを白米と一緒に食べる。からしマヨネーズの刺激で白米とコーラがよく進む。


 そして、冷凍食品の唐揚げ、ハンバーグ、フライドポテトを一つの大皿に盛り付け、その上から大量のケチャップをドバッと! ケチャップの味が強すぎる気がするが、これはこれで悪くないものだ。


 このストレス社会、多少の現実逃避ぐらいは許してほしいものだ、私はまだ大学生だけど。


「まあ、これから先の人生は長いし、なんとかなるでしょ」


 先のことを考えすぎて心を病んでしまってはいけない。心の健康は身体の健康と同じぐらい大切なものだ。


 胃もたれすることは確実だろうけど、今日は今日、明日は明日、今日は頑張らないことにして心を休めるようにしよう。食後のコーヒーを飲みながら私はそう思うことにした。


◇◇◇


 日記を書き終わり、私はふぅとため息をついた。これは日記、妄想フィクションを交えて辛い現実を生きる為の気力を整える場。


 本当の私はこれほど食べられないのだけれども、妄想の中ぐらいは自由に食べていたいものだ。






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