第6話 異界、驪の元へ
◇◇◇
『どうすんの?』
「どうしましょー…」
夜空に悲しい女と少女の声が響いた。
百瀬と別れたあと。
僕は立派に路頭に迷っていた。
家を去ったはいいものの、ゆーちゃんの家ではないあの家。
俺はこの寒空、寝場所を探してさ迷っているわけだ。
「こうなりゃオッサンとでも寝るかな」
「冗談でもけがらわしいっ!止めてね!アカネさまを宿してるんだから」
隣の中華ロリ少女、スズが怒ってくる。
実際、駅前のカプセルホテルの料金を見に行き挫折し、繁華街をうろついていたら、そういうお店の人だと思われたのか何人かに「今夜のお誘い」を受けた俺。
どだい無理な話ではないのだが。
確かに抵抗は半端なくあるし、リスクの方が多い。
春空の夜をメイド服でうろつくのもそろそろ限界だ。
はあ、とアカネがため息をつく。
『なにが『柚螺くんは頼りになる』だ。あの子柚螺を何と間違えてんだ?』
「百瀬の悪口はやめろ〜」
もうどうしたらいいかわからないから、とりあえず突っ込んだ。
「そーいや、すっかり忘れてたけど苑雛くんは?」
「苑雛さまは御自宅へお返してきた。一応子供だし、夜更かしはよくないから」
「苑雛くんの家…!」
『や!嫌だよ!』
なぜかアカネが全否定してきた。
「…アカネさま」
スズが戒めるように名前を呼ぶ。
『苑雛はいいけど、鸞が嫌なんだよ、わかるだろ』
「苑雛くんの主…だっけ?」
お嫁さんと流れるようにいっていたから記憶に深い。凄まじい関係性だよな。
『苦手なんだよ、アイツ…』
ち、と舌打ちが聞こえてきた。
そこまで言うなら仕方ない、苑雛くんの家は諦めよう。
「あ!いいところがありますよ、アカネさま!」
ポンッとスズが柏手を打つ。
『あ?いいところ?』
「はい!驪(レイ)様のお宅です!せっかく霊力の器もあるんですし…」
『あー…いいかも!なんでそれ早く思いつかなかったんだろ!』
「じゃあ決定ですね!」
きゃあっ!とスズがはしゃきだす。
「いいところ?」
よくわからないが。
「暖かいところですよね、アカネさま!」
『おう!あそこ以上に暖かい場所はない!』
そうスズとアカネが言ったので、大丈夫だろう。
◇◇◇
ちら、と音に似合わないくらいのすんごい眼差しを食らう。
コンビニ店員である。
その横のチャイナロリっ子スズと、巨乳メイドの僕をめちゃくちゃ不審者扱いしてるよね、これ。
ビビるというより引くという目の彼は、流れるように品物に目をやる。
そしてまた、僕らをじろじろと見、隣のレジの女子店員に助けを請うように視線を移した。
が、彼女もぶんぶんと首を振り、泣きそうな顔で携帯をかざす。
たぶん、通報する?のジェスチャーか。
いやいいよ、だって品物これだし…と言わんばかりに指を指す。
そう。
無害なのに、怪しい。
本当に不思議な組み合わせの品物なのだ。
用途不明、だけど無害で発音可愛い。
「砂糖と水」という組み合わせは、そういう組み合わせなのだ。
「……はあ…」
「ありがとうございました…」と弱々しいお見送りを受けながら、コンビニを出る。
ちらちらと視線を浴びながら、僕はコンビニの袋をまじまじと見た。
ちなみに財布は持ってた僕。カプセルホテル代ほどはないけどね。
財布と本とスズと神様、歌にもならないなんだか嫌な組み合わせだ。
「…何に使うのこれ。めっちゃ視線を感じたよ?」
「無害なのに?人間は不思議な生き物だね」
「…スズ、無害だからこそ何に使うか不思議なんだよ。
タオルと塩酸と火とかだったら爆弾かなぁって思えるけど、なんで砂糖と水なの?」
『いや、爆弾かなあって思う方もヤバイし、作る方もヤバイぞ?
つかさー、砂糖と水なら想像つかねーか?』
「何を?」
アカネが落胆したのがわかった。
「砂糖水!」
スズが得意気に叫んだ。
「わかった?柚螺」
…が。
「……え、だからなんで砂糖水を…」
「アカネさま!コイツだめです使えません!」
だからなんでだ。本当に砂糖水なんて理科の実験に用いるくらいしか用途ないだろ。
『確かにダメだわコイツ。私がこんなのを選んだのが悪ぃんだけどよー』
「い、いえ!決してアカネさまの人選ミスでは…アカネさまは完璧です!コイツが悪いんです!」
「……」
なんか、ものすごーく気分が悪い。
なぜ砂糖水を知らないだけでここまで罵倒を食らうのか。
「えーと、」
「あんたは一万円札にも載っている鳳凰を知らないの!?」
きっ、と僕を睨むスズ。
「鳳凰なら最近ものすごーく知ってる」
「…鳳凰の食料は?」
「え」
「……」
呆れなくてもいいじゃん!
そもそも一般人は鳳凰自体知らないぞ!
なーんて言えず。
「鳳凰は神聖な生き物にして、神聖なものしか口にしません」
ぴん、と形のいい指を立てて、さながら教師のように……いや、大人ぶってる子供にしか見えないや。
「鳳凰は霊泉を飲み、竹の実しか食さない。
『鳳凰鳴けり、彼の高き岡に。梧桐生ず、彼の朝陽に』
『鳳凰は梧桐にあらざれば栖まず、竹実にあらざれば食わず』
梧桐とは木で、その木にしか止まらない高貴な」
『そんなことより柚螺、池ないか?池!』
「話を飛ばすなアカネ!!」
しかもなぜ池なんだっ!
真剣に聞いてたのに、僕…
「アカネさまぁ…」
さすがのスズも涙目だ。
『結局はぁー、霊泉…いわば砂糖水と、竹の実を食うって話だよ!それより池だろ池ー!』
「…」
どうしよう、難しい古文よりわかりやすいって思った僕がいる。負けた気がした。
池、池か……そうだな。
「池なら、そこの公園にボートとか置いてある大きめな池がある」
『よっしゃ!そこつれてけ!』
砂糖水+中華ロリ少女+池+神様=暖かい場所?
「…えっと」
「人間は従ってればいいんだ!」
スズに厳しく言われ、縮こまるしかない僕だった。
体が小さいから、なんか屈辱なんだけど。
3人でてくてく池へ向かう。
公園は当たり前に無人だった。
テニスコート8つぶんくらいのかなりの大きさの池。
夜闇にプカプカと浮く真っ白なスワンボートは、なんだか気味が悪かった。
「池になんの用なんだよ」
『まーまー。いいから水に砂糖入れて』
砂糖の封をあけ、ザバザバとペットボトルに注ぐ。
ちなみにティー用のスティックタイプだ。
三本入れ、スズにゴミをゴミ箱に捨てにいかせる。
余った砂糖はスズが持つ、とのことなので、スズに預けた。
さあ砂糖水を何に使うのかな、とワクワクしてたら。
『飲んで』
「飲むの!?」
『飲むの』
意外と普通だった。
羽を食うより幾分か抵抗はない。
グビ、と砂糖水を煽り、アカネの指示で3分の2ほど飲み干す。
甘ったるいだけの水を飲み干すのは、やってみたら結構辛かった。
『じゃー始めんぞ』
アカネがやけに真面目な声でいった。
そして支配権を当たり前のように僕から奪い、僕の体を勝手に使う。もう少し躊躇いとかあってもいい気がする。
【鳳凰の名において、異界――
歌うように、ゆーちゃんの声を使って呟く。
「わからない人間に解説しますねアカネさま。
今、池には空が移ってる。
だから、池=鏡と同一の表し方。
なのでこの場合池=水鏡と考える」
言葉遊びみたいだ。
同一視されるものは同じものと考えるみたいだな。
「鏡は時空を表し、時空は空を表す。ほうら繋がった!」
(はい?)
「池=水鏡=鏡=時空=池」
(長!?)
しかもとんでもない屁理屈かましてるよ。
数学よりかはわかりやすいけれど、屁理屈でできてるなーこの世界。
「この国は屁理屈だかんなー。池が異世界に繋がる鏡になるってことよ。とにかくなんでも繋がりゃあいい。繋がったところに接着剤――霊力を注ぐっちゅーことをすれば、行きたいところに行ける。
あんたに砂糖水飲んでもらったのは、補給のためだよ」
きらり、池が夜闇に煌めく。
「ちなみに今からいく場所はちょっと特殊――私とネックレス、それに霊力がないといけないような場所なんだ」
残りの砂糖水を池にドボドボと入れる。水質汚染とか大丈夫かこれ。
アカネは、器用に片足でバランスを取ってから、カンッと勢いよく音をならして宙に浮き、
――そのまま、なんの躊躇もなく池へと飛び込んだ。
◇◇◇
濡れて溺れるかと思っていたら、全く違う状況に陥っていた。
衝撃。
背中に、上空から落ちたような衝撃が走ったのだ。
ていうことは僕は空から落ちてきたことになる。
落ちたら痛いはずなのに、あまりいたくないことから、そこまでの高さはなかったらしい。
恐る恐る目を開けると、辺り一面暗闇で、一箇所だけ明るいところがあった。
「――っ」
どうやら体の支配権は僕になったらしく、久しぶりに息ができた。
だんだん目が慣れてくる。手には砂がくっつき、ザザ…ンと音がする以外は無音の空間が広がる。
「う、み?」
目の前には果てしない海があった。真っ暗な海を、半月の月が照らしており、明るさの正体はこれだった。
痛くなかったのは、柔らかな砂浜に落ちたからか。
「落ちた…!?」
空に繋がってるとか言ってなかったか?
冷静に考えると、僕は空から落ちたってことで…
「っ!?」
急いで体を確認する。
目立った外傷は無い。
…無事みたいだ。
「到着しましたね、アカネさま」
いつの間にいたのか、隣で立ってるスズが僕に手を貸す。立てということだろう。
『あぁ』
中でアカネが答えたので、反射的に胸を見て、気づいた。
相変わらず大きく膨らんでいるせいもあるけど、もっと重くなっている。
あのネックレスがかかっているからだ。
金、重し。
「柚螺、海に向かってそのネックレスをかざして」
「へ?」
「かざして!」
理由も告げず一方的に言うよな、神様って。言われたものは仕方ない、仕方なくかざしてみる。
海が、やけに広すぎると思った。
いや、普通海って広いものだけど、ここの海はもっと広い。無限に海って感じがする。
生々しい半月が、妙に怖くて美しい。
振り返ってみると裏は松林になっているみたいだった。
『もっとちゃんと、海見てかざして』
「…」
アカネがやればいいのに。そんなにいうなら。
文句を言われたので、星形の部分をしっかり握って。
海に向けて、かざした。
ザザ…ンと、波の音が大きくなった気がした。
そして――変化する。
最初は、何かの生き物かと思った。
けれど、全く違くて――海が、意志を持ったかのように開いていく。
海に穴が空いたと気づくのに、時間がかかった。
「え――?」
黒い穴がぽっかりと。
波の動きなどはそのまま残っていて、まるでそこだけ異空間みたいだ。
まるで神話のモーゼのよう。
下は砂浜になっているが、濡れてはなさそうな色合いだ。
「なに、これ…」
『むかーしむかし。皆にいじめられた一人の神様は、逃げることにしました』
アカネが昔話でも読み聞かせるように話し出す。
タタタ、とスズが駆けていく。
『その隠れ家に選んだのが、ここ異空間の海の中なんだ』
「それ、誰のこと?あの妖狐の…」
もしかして、昼間いってた玉藻前…?
「玉藻前ちゃんは、そんなことしないで真っ向から喧嘩を売る子ですよね〜?」
まあ、確かに。
国を傾けちゃうような人がそんなことしないか。
…スズって、玉藻前のこと玉藻前ちゃんって呼ぶんだ。
「まあそんなことより、参りましょうよぉ〜アカネさまー!」
海が深くなるにつれ穴も比例して深くなるらしく、もう若干海の中に入ってるスズは穴にもう足をつっこんでる。
そのちっちゃな足はやはり濡れていない。
「驪さまもきっとお待ちですよ!」
『だなー、行くか。
おい、行け。じゃねーと乗っとるぞ?』
「いくいくいく!」
アカネにびびって走って穴へ向かう。
「っ、」
躊躇しつつ、つっこんだ足。
黒い穴は寒くも暑くもなく、ただ砂浜と空間が空いてるだけだった。
さくさくと進んでいく。
足元は砂浜で、本当に海に穴が空いたようだ。
きゃいきゃいと進んでいくスズに追い付こうと小走りになる。
「あっ!」
海が深くなり、穴が全身を包んだときだった。
だいぶ暗くなったなと思ったら、ネックレスが赤く光り出したのだ。
「す、スズ!」
「あー、光った光った!」
思ったより軽くとらえられ、呆然。
発光、としかいいようがない、この現象は、一体……。
「なんで…」
「なんでって、暗いから見えないと困るでしょ?」
だめだ、この人たちの前で常識は通用しない。
暗いから光ってくれたのか。じゃあ懐中電灯代わりにつかわせてもらおう。
しばらく真っ暗な闇をネックレスの灯りだけで進んだ。
「アカネさま、つきましたー!」
行き止まりはドアだった。
◯◯の館みたいな、洋風チックなチョコレート色のドアを、ぼんやりとした左右のランプが照らしていた。
家とか館とかじゃない、ただのドア。
ドアだけがぽつんとあるのだ。
「…」
もうつっこまない。
そう決めたんだけど、
「ちょ、スズ!」
おもむろに勝手に開け始めたスズにはつっこんだ。
非常識すぎるだろこの子!
「ダメだよ、いくら知り合いでも勝手に」
「いいんだ!だって驪さまは家族なんだから」
…家族?
妙に引っ掛かるが、意識はガチャリと開いた音にかきけされた。
洋風な見た目に反して、中は和風だった。
サザエさんの家みたいな玄関が広がり、ずっこけそうになる。
「なっ…」
『本当は昔は和風のドアだったんだぜ?だけどねー、壊されちゃって、付け替えたの』
「壊されちゃった!?」
『んー。
つっこまない訳にはいかないや、こいつらには…
「上がるよ、人間」
「あ、うん…」
スタスタと靴を揃えてるスズに言われ、慌てて靴を脱いで、一応「おじゃまします」と告げて上がる。
非常識なスズはぱたぱたと明らかにご機嫌な様子で廊下を突き進んだ。
長い長い廊下を突き進むといくつかの分かれた廊下があって、そこの一つに離れみたいな部屋がみえた。
「あそこだー」
こどもみたいにはしゃいで(実際見た目はこども)、分かれた廊下を進む。
…なぜか庭があって、月夜に照らされた池まであったが、理解不能なので見なかったことにする。ここ、海の中だよな……?
離れの部屋の前に着くと、パーンッと勢いよく襖を開けたスズは、部屋に勢いよくダイブした。
「きゃー!」
「わっ、と」
中には人がいて、部屋は書斎みたいに本が所狭しと並んでいた。
首が曲がりそうなほど高く積み上げられた本棚に、ぎっしりと詰まった本。
畳の部屋に幻みたいにいた男の子に、スズは飛び付いた。
「スズ!」
いきなり抱きついてきた少女に、たいして驚かないその人。
中学生くらいの男の子で、若干童顔だ。
白のシャツに黒のパンツ、好青年といった服装で、真ん中に水色の大きな水晶玉みたいなのをぶら下げている。
本を読んでた途中らしく、卓袱台みたいな文机に本を広げている。
そんな彼に嬉しそうにスズは抱きついていた。
「久しぶりですねー」
「うん!久しぶりです!」
…兄弟にしか見えない。
呆然と突っ立つしかない俺に気づいたらしく、彼はふと振りかえって。
「どうやらおかしなことになってるようですね、アカネ」
見えているかのように、彼はいった。
見抜いた…?
アカネがゆーちゃんの中に入っていることを、この人は……
霊的に繋がってないと、姿はおろか言葉すら聞こえないはずなのに。
「まあまずは、不便でしょう?アカネ、出てきたらどうですか?ここには敵はいませんよ」
その言葉にアカネは素直に従い、気がついたらアカネは目の前にいた。
出てきたらしい。
朱色の髪をはためかせ、僕からにゅっと出てくる。半透明の彼女は、出てきたからだを確認して。
そして、触れられないのに、スズと同じように彼にぎゅうっと抱きついてから、満面の笑みで言った。
「ただいま」
優しくそういう彼女に、彼は嬉しそうに笑顔で言った。
「おかえりなさい、アカネ」
にっこにっこと彼は笑う。
「あとそこの人間さんも、ようこそ。
アカネのお友達ですか?」
呑気に言いやがる。お友達なんて間柄じゃないだろ。
「お友達…ではないです」
関係がいまいちわからない。
勝手に利用されてるだけというかなんというか…弱みを握られて命令に従ってる間柄がいちばん正しい。
「アカネったら、男の子のお友達を連れてきて…黒庵に怒られちゃいますよー?」
「えっ…」
忘れがちだが、俺の見た目はただいまゆーちゃんだ。
ゆーちゃんを一瞬で僕――柚螺と見抜いたこの人。
さっきからそうだけど、絶対にただ者じゃない。
「なー、コイツ驚いてるみたいだから自己紹介くらいしなよー」
実家でくつろぐようにあぐらをかきながら、アカネが少年に言う。
「あぁ…そうですね」
にっこり、と音がしそうに笑って。
「私は
この子――アカネのお父さんやってます」
眩しい笑顔に、衝撃の事実。
「は!?!」
思わず叫んだ。
だって、この人、どうみても中学生か高校生…
アカネは20代くらいの見た目だし、年齢無理ありすぎる。
ありえない、なんていっぱい言ってきたけど。
まだ言い足りないくらいありえない。
「…う、」
すると、彼は顔を泣きそうに歪ませた。
え、ちょ、え?まさか泣くんじゃ無いだろうね?
「うぅ…また、またお父さんじゃないって…私は、ちゃんとお父さんなのにぃ…」
「えぇ…」
泣いちゃったよ彼。
わんわんとスズにすがりついてる。中学生が小学生によしよしとされている光景は、傍から見たらシュールすぎた。
「柚螺!
「そーだぞ?ふざけんな!コイツはれっきとしたお父さんだ!」
「ひっ、すみません…っ」
ものすごい勢いで2人に怒られた。
アカネにまで怒られたし、僕よっぽどのことしちゃったんだなあ。
「…いいです、いっっつも言われてますし」
ぶぅ、と頬を含ませながら。
「あなたのお名前は?」
こしこしと目を擦る。完全に子供の仕草だぞ…?これでお父さんですかそうですかと納得する方が無理があるぞ。
「ゆ、柚螺です、一ノ瀬柚螺。今はゆーちゃんです」
巨乳メイド美少女へと成ってしまった僕なので、一応女バージョンの説明もしておく。
「なんで女の子になってるんですか?」
「あー、お父さん。訳を話すと長ぇんだが」
「
「さっすが〜」
なんでそこまでわかるんだろ。
俺が男だって一瞬で見抜いたし、この人。
鳳凰のお父さんってことは、苑雛くんのお父さんでもあるのか?
「ふっふっふ、なぜ私が色々と知ってるのか知りたいのですか?」
にやにやと得意気に、世に言うドヤ顔で俺を見つめてくる。
なんだろ、すっごい幼く見える。
「それは!私がお父さんだからです!」
「……」
どれだけお父さんを強調させたいんだろう驪…さん。
いや、一応お父さんなわけだし、見た目はアレでも年上なんだろうってことで、さん付けにしておこう。
スズみたいに驪様と呼ぶつもりはないし、アカネみたいにお父さんなんて絶対に呼べないし。
「ねたばらしすれば、お父さんは霊力をみてんだよ」
アカネが幼い父にかわって説明を開始したから、「あぁっひどいですアカネ!」と驪さんが叫んだ。うーん、幼すぎ。
「一人一人違うっていっただろ?人間みんな顔が違うように、霊力も違うんだ。高貴な神様になればなるほど、息を吸うように霊力を見分けられる。柚螺が男だってゆーのも、霊力に含まれた情報を読み取ったからだ」
なるほど、とってもよくわかった。
だけど、一つ引っ掛かりを覚えた。
――高貴な神様
もしかして、このちっさいお父さんはものすごい人なんじゃないだろうか。
子より親の方が偉い例なんていくらでもある。
全鳥類の長よりもずっとえらい神様…。
そう考えると、なんだか驪さんが怖く感じた。
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