彼女をNTRれた俺を救ったネッ友 正体はいつも俺の隣の席に座ってる同級生の女子って本当ですか?【中編版】

儚キ夢見シ(磯城)

第1話   そうNTRれただけ

 "それ"が起きたのはクリスマスイブ。

 

 その日はその冬、初の雪が東京で観測された。とはいっても精々粉雪が舞う程度ではあるが、とにかくまぁ寒い日だった。


「……ヒナタ?」


 クリスマスイブだからだろう。いつもより人通りの多い賑わった通りで、俺はカノジョと過ごす予定だった日をつぶしてまで、ケーキ屋のアルバイトを入れて、サンタの格好をして白い息を吐きだしながら、道行く人々にケーキを売りさばいていた。


 すると、こちらの方へ歩いてくる付き合い始めてからもう二年の経つカノジョ、岩崎日向いわさきひなたを見かけた。


 別にそれだけだったら特に何の問題もなかった。


 ただ彼女の横にはとある男が立っていて、彼女は腕をその男と絡み合わせて、何か話しながらこちらに向かってきていた。


「なんで……?」


 彼女と腕を絡み合わせていたのは高校時代からの俺の親友、いや俺が勝手にそう思い込んでいただけなのかもしれない男、土屋啓汰つちやけいただった。


 意味の分からない、現実だとは到底認めがたい状況に俺は客の呼び込みなど忘れてその場に立ち尽くしてしまった。


 彼女にすまない、イブはアルバイトを入れたと伝えたとき、彼女は「うん、分かった。じゃあイブは女友達と過ごすね」と言っていたのに……。なんで一緒にいるのが啓汰なんだ?


 まさか……、浮気か?


 俺がそう考えている間に、彼らはこちらに近付いてきてあろうことにも俺がバイトをしている店に入っていった。


 彼らは店内で注文してケーキの入った箱を受け取ると、俺に気付いた様子もなく店を出て、俺の目の前を圭汰が彼女の肩を抱きよせるようにしてぼそぼそと、

「じゃあ……行こうか」と言って通って行った。


 俺が話しかける余地などなかった。たとえ話しかける余地があったとしてもそもそも話す勇気などなかったが。


 そして、彼らはケーキを買ったのだから近くにある二人の家のどちらかに行くのかと思いきや、そうではなく男性と女性が交わるための建物が立ち並ぶ通りに向かっていき、そこに立ち並ぶ建物の一つに入っていった。


 俺はふらふらとバイト中にも関わらず、その建物の前まで行った。そこにかかっていた看板には『リゾート』と書かれていた。


 とてもじゃないが俺は彼女に嘘をつかれていたというのもあり、そこに二人が仲良く真面目に勉強をするために入った、もしくはただただケーキを食べるためにだけに入ったとは考えられなかった。


 そして、俺はそこで先程一つ、俺が思い違いをしていたことに気付かされた。


――俺は浮気をされただけじゃない。……カノジョを寝取られたんだ。


 そのたった一つの事実で俺はめまいがしてきて、ふらふらとケーキ屋の前まで戻ってくると、その場にうずくまってしまった。


 そんな俺を見て、店の中からバイト仲間が出てきて、「大丈夫か?何かあったのか?」と訊きながら俺の肩をゆすってくる。


 ええ、何かあったんですよ。まぁ、単純な話ですよ。もう付き合い始めて二年の経つカノジョを親友だと思っていた男にNTRれただけの。


 そう俺は心の中で答えると悲しみと絶望から目から涙をこぼし始めてしまった。




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新作です。

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