11月12日(日) ①
【今週のノルマ】
『立花瞬は瀬良康太の男性器を手で扱いて射精させる──「手コキ」をすること』
▽11月11日:今週のノルマが達成されました。
【手コキ S+1,000,000pt】 他 行動により加算有り
【現在の獲得pt】
瀬良康太 334,674pt
立花瞬 1,750,032pt 計 2,084,706pt
クリアまであと 15,998,444pt
次週のノルマは11月13日(月)に指示されます。しばらくお待ちください。
______________
──昨日。
『好きな奴にエロいことをされたら、嬉しくてあたり前だろ……!その気持ちは、恥ずかしいことなんかじゃ、ない……!』
『……俺、頑張って……康太のこと、め、めちゃくちゃにする、ね……』
……『身体をすみずみまで洗ってあげる』なんて、瞬の提案が一転。
いつの間にか、俺は……瞬に、そっちの「俺」の世話までされることになっていた。
ちょっと前までは、こんなことになるなんて想像もつかないようなことを、瞬としたのだ。
十数年来の幼馴染が恋人になって、それだけでも大きな変化だったのに、まさか、ここまで来てしまうなんてな。
──とはいえ。
『ゆ、ゆっくりでいいから……瞬のペースでいい』
『康太……』
『……も、もう、出ちゃいそう?我慢しなくて、大丈夫だよ……』
『ん、康太……もう、大人しくしてて、ね……もうちょっとだから……』
『っ、あ、ま、待て、瞬……っ』
『ち、力……少し、強いかも……ちょっと、痛い……っ』
『自分のをする時も、このくらいの力加減なのか?瞬って、その……結構、激しいのをするんだな……』
『……』
やってることは、とんでもなく刺激的でアブノーマルだったのに、どこか、いつもの俺達らしさがそこにはあって……まあ、すんなりとはいかないところもあったわけだが──俺と瞬は、また一つ、ステップを上ったのだ。
── 一緒に、乗り越えていけてるよな……俺達。
「……ん」
「……」
そんなことを頭の中でぼんやり考えながら、俺は隣で眠る瞬の顔を眺める。昔からちっとも変わらない、あどけない寝顔。
とてもつい数時間前まで、俺の「俺」を手で責めながら、キスで蕩けていたとは思えない程、健やかに、何事もなかったかのように、瞬は眠っている。
──瞬ってこういうとこ、結構たくましいよな……。
灯りを消して、一緒にベッドに入ったのが夜の九時過ぎだっただろうか。
「ギプスを巻いてる部位は高くしてた方がいいから」と、瞬が俺の腕のクッション役を買って出てくれたので、俺と瞬は今、ぴたりと寄り添って寝ている。俺が瞬の身体に腕を載せてる……というか、まるで身体を抱き寄せているような体勢だ。
はじめは、瞬も少し緊張気味で、数分おきに「寝れる?」と訊いてきたんだが、やがて、二人分の体温で布団がぬくぬくになると、瞬は「すうすう」と安らかな寝息を立て始めた。暢気な奴だ……可愛いけど。
……だが、一方の俺は、まだ、あの風呂場での出来事のショックが大きすぎて、ギンギンに目が冴えてしまってる。
それから、瞬とくっついていることで、つい「俺」のことも気にかかってしまう。アレを思い出して、うっかり誤爆とか……恐ろしすぎるからな。これ以上、立花家で瞬とそういうことをするのは……罪悪感が半端ないし。ていうか、淳一さん、志緒利さんごめんなさい。俺、あなた達がいない間に、お二人が大切に育ててこられた瞬さんにとんでもないことをさせまくってます。受験生なのに、瞬は俺のせいで、エロいことばっかり覚えてしまっています。もしものことがあったら俺のせいです……一生かけて責任取ります……許してください……。
「……はあ」
そんなことを考えていたら、もう日付が変わる頃になってしまった。……瞬はもう、ぐっすり寝ちまってるな。
俺は、気まぐれに、もちもちでよく伸びる瞬のほっぺを、左手でつついたり、ふに、と引っ張ったりしてみた。赤ん坊のほっぺってこんな感じなのかもな。
「ん、んん……」
しばらくそんなことをしていると、いい加減、瞬が鬱陶しそうに首をゆるゆると振った。
諦めて手を引っ込めると、瞬が小さな声で寝言を漏らす。
「こ、うた……」
「ん?」
寝言だから反応してもしょうがないのに。つい返事をすると、瞬はさらに寝言を続けた。
「ん、だめ……」
「だ、だめ?」
どういうことだ?と考えて、もしかして、と気付く。瞬は夢を見てるのか?
── 一体、どんな夢なんだ……?
「こうたさん……そんなところから生えちゃだめ……」
いや、マジでどんな夢なんだよ。
ていうか、「こうたさん」って何だ。俺じゃないのか?
そんな瞬の謎の寝言はそこで途切れてしまった……起きたら訊いてみるか。
──……にしても、暇だな。
相変わらず、目はギンギンだし、瞬を眺めてるのも飽きないけど……仕方ないな。
俺は、左手をそっと伸ばして、枕元に置いたスマホを手に取る。それから、画面の灯りをぐっと小さくして、瞬に光が当たらないようにしながら、電源を入れた。
すると──。
『新着メッセージ 1件』
「──っ」
その通知に、俺は息を呑む。夕飯の時に……瞬から聞いた話と同じ状況だったからだ。
──瞬にだけ伝えられたという「今週のノルマ」。
瞬の話によると、週の初めにこんな風にメッセージが届いて、そこに「瀬良康太に伝えないこと」と注意書きがあった上で、ノルマを指示されたらしい。瞬にだけの【ノルマ】を終えた後だ。その次が──俺ってことは、十分あり得る。
俺は、画面が見えないように、身体を捻り、瞬に背を向けた。それから、おそるおそる、メッセージを開く──すると。
『クリアおめでとう』
『この前は、同志が迷惑をかけた』
『私は、お前達と【取引】がしたいと考えている』
『私達へ協力しなさい。対価には情報を、そして私達もまた、協力を惜しまない』
『私達の利害は一致している。悪い話じゃない』
『第一情報処理室で待つ。二人で来るといい。11/12 23:59までに来ること』
『以上』
──なんだよ、これ……。
そこにあったのは、【ノルマ】ではなく、よく分からない……謎の第三者からのメッセージだった。
差出人は……。
──春和高校新聞部オンライン。
「……」
──もう、逃がしてたまるかよ……。
やっと捕まえた尻尾の先……それが何に繋がってるのかは知らねえが。
今度こそ、離さない。俺は布団の中で、ぐっと拳を握り締めた。
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