第26話また遊んでね!
付き合った事があるってことは、0という数字が潰れたという事だ。このゲーム、プラマイ二までセーフだということは、二分の一ほどの確率で僕が勝てる。
実際はかなり僕に有利な仕組みだ。どうしてこんなにも有利なゲームを提案してきたんだろう? よっぽど自信があるのかな? 全く、舐められたものだよ。
これから部室を奪われるというのに、あんなに涼しい顔しちゃってさ。まあいいよ。あと数分で、その顔が絶望で歪むんだから。
次の質問あたりで確信に迫ってやる。
「それじゃあ次の質問。篠原さんは、よく男の人と話すのかな?」
この回答によって、男の人に対する免疫がわかる。これに対して、どう答えるんだ?
篠原さんは一瞬だけ天井を見て考える素振りをすると。
「そうね。”最近”は結構話すかしら」
かなり曖昧に答えてきた。最近はってなんだ? 気になって追求する。
「最近てことは、前はあんまり喋らなかったってことかな?」
「さぁ? それは答えられないわね」
「そ、そんなぁ……」
「それじゃあ質問はここまで。回答をどうぞ」
「あ……!?」
しまった! 気になって三個目の質問を無意識に使っちゃった! どうしよう。一以上の数字ってことしかわかってないや。
でもあの篠原さんに限って一人や二人なんてことがありえるのかな? でもあんまり人と話している姿を見たことがないし、やっぱりそこまで多いとは思えない。
つまり、真ん中らへんの数字を答えれば当たるはず。つまりは四! そこらへんが妥当だろう。僕は予想が当たっていると確信し言い切る。
「答えは四だ! さぁ、どうだい篠原さん。早くその紙を裏返しにして僕に見せてみてよ!」
自信たっぷり言うと、篠原さんはゆっくりと紙をめくる。そしてそこには、数字で六と書かれていた。
「や、やった! 僕の勝ちだ!」
嬉しさで思わず立ち上がると、篠原さんは紙を反対向けにして。
「残念。九でした」
不敵な笑みを浮かべながら言ってくる。そ、そんなのってありなの? どう考えてもズルじゃん……! 流石にムッときて、言い返そうとすると。
「せ、せ……」
「せこ –––––––––––––––!!!」
僕が篠原さんにせこいと言う前に、ディーラーをやっていた彼がツッコンだ。
「おい、お前さっき六って書いてたろ! なに裏向きにしてんだよ」
「何よ? 私は数字の九を書くとき、裏返して書くのよ」
「嘘つくな! つーかお前みたいな性悪根暗ぼっちが九人の男と付き合えるわけねーだろ!」
「あら、私は一言でも”男性”となんて言ったかしら? 家族とか友達との買い物に”付き合う”って意味で言ったのだけれど」
「二重でせこいな……。てか、だとしたら九人は少なすぎんだろ。家の中でもぼっちですかぁ?」
「え? さっきからなんなのあなた? なんで私と敵対してるの? ぶっ殺すわよ?」
なんだか僕のことを置き去りにして、二人の口喧嘩が始まった。なんだこの人たち……。僕は目の前で醜い言い争いをしている二人を必死で宥める。
「まあまあ二人とも落ち着いてよ。この勝負は僕の負け。だから二人とも喧嘩しないでよ〜」
二人を止めるために負けを認めると、篠原さんはニヤッとまたしても不敵な笑みを浮かべる。
「そう。それじゃあ先ほど通り、約束を果たしてもらうわよ」
威圧的に言われ、僕は怯える。で、でも、なんでも言うことを聞くとは言っても、さすがにそこまでのことは要求されないでしょ。あくまで罰ゲーム程度の、軽いやつを……。と思っていたんだけど、どうやら僕は篠原三佳子と言う人間を相当甘くみていたらしく、彼女はフッと笑みをこぼし。
「それじゃあ、一生私に隷属するってのはどう? 私の命令は絶対遵守。あなたこれから私に一生付き従うの」
なんて、到底常人には考えつかない下劣で最低なことを言われた。そ、そんなのってないよ。確かになんでもって言ったけど、さすがに節度をわきまえてほしいと言うか……。
さすがにこんな要求呑めないよ! 僕が反論しようとすると、またしてもディーラー役の彼が僕の代わりに文句を言いはじめる。
「またしてもせこいやつだな。そんな、
「うるさいわね。なんなのさっきから? 何もしてない分際で出しゃばらないでくれるかしら?」
あぁ、またしても口論になってしまった。もういいや。このまま帰っちゃお。今日は楽しかったから、また遊んでね! と心中で思いながら、僕は駆け足で部室から逃げ出した。
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