第13話弁当

 弁当の具材って……。家にある適当な野菜でも持っていけばいいのか?

 家に着くと俺は、冷蔵庫を開けて何か使えそうな具材はないか物色する。


「玉ねぎにピーマンにナス。これを適当に持ってけばいいか? てか弁当なんて、なんで作るんだよ……」


 意味もわからないまま俺はそれらの食材を袋にしまうと、いつも使ってる通学用のカバンの中に入れる。

 にしても、あの相談者には悪いことをしたなと今更ながら反省する。でも、元はといえば篠原がいきなりあんなことを言い始めたのが原因であって、そもそもあいつ、他人に対して見下していると言うか蔑んでいると言うか、かなりバカにした口調が目立つ人間だなぁと思ったりする。


 でもあいつが嫌われているとかそう言う話は聞かないので、多分ぼっちなのには他に理由があるのだろう。

 まあどうでもいいけど。俺は明日に備えて床に就く。そういえば、こんな風に明日に備えるなんてこと、今までなかったな。いつもなんとなく時間が勝手に過ぎて、気がつけば代わり映えしない日常を送っていた。


 あいつに軽口のような悪口のような暴言を言われる日々も、なんだかかんだ言って悪くない。って、これじゃあ俺がMみたいに思われそうだが、決してそんなことはない。これはその、やりとりが面白いだけで……って、俺は一人で誰に言い訳してんだ?


 阿呆らしい言い訳を心の中でしてから、俺はぐっすりと眠りについた。それから翌日の放課後。

 部室に入った俺は、カバンから野菜を取り出して机の上に置く。


「ほら、昨日言われたやつ。てか弁当って、なんでそんなの作るんだよ」


 昨日篠原が俺の言い放った言葉の意味を求めると、彼女はこちらに目もくれず。


「この男。お弁当という概念を知ってるのかしら……」


 野菜だけ持ってきた俺を非難し始めた。


「うるせえな。これしかなかったんだよ」


 反論すると、篠原は諦めたようにして顔を上げる。


「まあいいわ。とりあえず、ハム子さんが来てから説明するから」


「ハム子が来てからって……。まあいいけど」


 俺たちはハム子が到着するまで待ち続けた。程なくして部室がトントンとノックされ、扉が開かれる。

 篠原は扉を開けた人物を確認すると、パタンと漫画を閉じて机に置くと、ソファーから立ち上がり。


「それじゃあ調理室に行きましょうか」


 と言い、部室を後にした。

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