イブの日に何やってんの?

家猫のノラ

第1話 割引の揚げパンは微妙な味

今日は冬季講習の1回目だ。

スーパーのイートインスペースで値引きの揚げパンにかぶりつく。

キナコ味ならもっとキナコをかけてほしいし、プレーンならかけないでほしい。微妙すぎる。

しかし、並んでいる中でこいつが1番デカかったのだからしょうがない。

なんだかんだ言ってウマイし。

スーパーにかかるBGMは聞いたことあるけど、タイトルが思い出せない洋楽、どこもかしこもクリスマスで溢れてる。

なのに、私は塾だ。

イブの日になんでつめるのよ。

先生がクリぼっちになりたくないだけなんだ、きっと。そんな考えだからぼっちなんだっつーの。

心の中で悪態をついていたらLINEの通知音がした。

『大丈夫?』

幼稚園からの親友、美桜ちゃんからだった。

『大丈夫。ぼっちだけど』

ぼっちだけど。は余計だった。

しかし取り消そうとするよりも早く既読がついてしまった。

『やっぱり、3人で行こ?』

ほらやっぱり、善人の塊である美桜ちゃんはバカなことを言い出す。

『すぐバカなことを言うバカ美桜のクリスマスは凌とバカップルデートでしょ💏』

既読は一瞬でついた。

返信は来ない。

いよいよぼっちだ。

ちっ。温暖化じゃねぇのかよ。

去年のクリスマスはこんなに寒くなかった。

歌詞の意味が全く分からない洋楽がなぜか私の心を冷たくする。

この心の温め方を塾では教えてくれないだろ?

こんなこと考えてるからぼっちなんだよ。

『All I want for Christmas is you, yeah《クリスマスに欲しいのはあなただけ》』

今日は冬季講習の1回目。

ぼっちクリスマスの1回目。

慣れていかないとね。これからは毎年こうだから。


揚げパンの微妙な味がやけに懐かしかった。

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