第27話 凜花の狙い③
「ふんふんふふーん♪」
私、
姿見でハンガーにかかった服を身体につけながら、あぁでもないこうでもないと悩んでいる。
でも、その時間さえも、嬉しく感じてしまうのは、明日のデートが楽しみだから。
学校で生徒会長の立場として威厳を保つため、今まではうつつを抜かしている暇はなかった。
けれど、私は遂に、一つの目標を達成したのである。
それは、ライバル視していた佐野慶悟に、模試で勝つこと。
ずっと私の上に君臨していた存在。
私はずっと、彼が憎くてしょうがなかった。
古村さんはほぼ満点を取ってくるので、レベルが違うとしても、毎回学年二位を獲ってくる佐野慶悟。
その存在だけは、本当に私のプライドを傷つけた。
偵察しに行けば、教室でひっそりと佇む陰気臭い雰囲気を纏った男子生徒だと知り、余計に悔しさが込み上げてきた。
そして、彼が昼休みに、こっそり花壇の近くで懸垂トレーニングをしていることも知って、私はより腹が立った。
注意しても、丸で聞く耳を持たず、まるで私など眼中にないといったような態度が、本当に気に食わなかった。
それでも私は、彼に勝つため、死ぬ物狂いで努力を続けた。
気づけば、私の生活のすべてが、彼のためになっていた。
彼に少しでも振り向いてもらいたい。
気にかけて欲しい。
そんな時、ふと気づいてしまったのだ。
私、どうしてこんなに彼のことを意識してしまっているのだろうと……。
最初は、敵視しているだけだと思っていた。
けれど、彼に話しかけるたびに、心の中がポワポワと温かくなっていく感覚に襲われるようになってしまうのだ。
その存在に気づいてから、もう彼のことしか目に入らなくなってしまった。
私は自身の気持ちに整理をつけるべく、一つの目標を立てた。
それは、佐野慶悟に、勝負を仕掛けて勝つこと。
そして、勝った暁には、彼をデートに誘おうと……。
私に勝機があるのは、全国共通模試しかないと思った。
彼に勝負を仕掛けると、彼の乗ってくれた。
私は死ぬ物狂いで勉強して、迎えた当日、熱を出した。
別室での受験になり、頭がずきずきと痛む中で、必死にもがき苦しんだ。
全ては、彼に勝つため……。
そして、私は彼に勝った。
不本意な結果ではあったけれど、彼もまた、本領を発揮できていなかった。
本当であれば、ここで一緒に復習会とかできたらよかったのだけれど、私はそもそも、そんなに馴れ馴れしく接することは出来ない。
だとしたら、ここで大一番の勝負に出るしかない。
意を決して私は、何でも言うことを聞く条件として、彼にデートをすることを命じたのだ。
「ふふっ……やっとこの時が来たわね」
どの服を着て行ったら、私のことを意識してもらえるだろうか?
日にちと待ち合わせ場所を決めてデートの日が決まってから、私はそんな事ばかりを考えていた。
それぐらい、私の中で彼の存在は大きくなり過ぎたのだ。
「見てなさい佐野慶悟……明日は私の魅力で虜にしてやるんだから♪」
意味深な独り言を呟きながら、私はウキウキ気分で明日のデートを楽しみに、服選びに没頭するのであった。
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