幼馴染に絶対勝てないラブコメ!~目標達成して浮かれていたら、幼馴染が日本一のスポーツ美少女になってしまいました。負けたはずの俺に甘えてきてくれるので、見合う男になるため、死ぬ気で努力することにした~

さばりん

第1話 陰と陽

「はぁ……」


 朝、昇降口前に貼られている中間考査の張り紙を見て、俺、佐野慶悟さのけいごは大きなため息を吐いてしまう。


 2位 佐野慶悟


 張り出されている順位表に載っている俺の名前は、普段と変わらぬ順位だ。


 万年二位。


 これが、高校の試験において、俺の定位置である。

 なぜなら、毎回俺の前に立ちはだかる、最強のライバルがいるから。


「慶悟ー!」


 とそこで、快活な声が聞こえてくる。

 俺が視線を向けると、一人の女子生徒がこちらへ駆け寄ってくるところだった。

 彼女の名前は古村南央こむらなお

 小さい頃からの知り合いで、いわゆる幼馴染という奴だ。

 全体的にふわりとした雰囲気のショートボブを揺らして、すらりと伸びる長い脚を惜しげもなく晒している。


「よう南央」


 俺が南央に挨拶を交わすと、幼馴染ははしゃいだ様子で駆け寄ってくる。


「ねぇねぇ見て見て! また一位獲っちゃった!」


 南央に促されて、俺はもう一度、成績順位が張り出されている掲示板へ視線を向ける。


 1位 古村南央


 そう、俺を阻む最大のライバルは、幼馴染の南央なのだ。


「私、一位獲れて凄いかな!?」

「あぁ、凄いぞ。今回もよく頑張ったな」


 俺は、身長差二十センチほどある南央の頭を、優しく撫でてやる。


「へへっ、やったぁ!」


 南央は、しっぽを振る犬のように、嬉しそうな表情を浮かべている。

 こうして、南央は事あるごとに、優勝や一位を獲るたび、幼馴染である俺に、ご褒美のナデナデを頂戴、頂戴と求めてくるのだ。

 俺だって内心は悔しくてたまらない。

 けれど、南央がこうして従順に慕ってきてくれる姿を見てしまうと、憎むに憎めなくなってしまうのだ。


「古村さーん!」


 とそこへ、南央のクラスメイト達がやってきた。

 俺は咄嗟に、南央の頭から手を離して、素知らぬふりをする。


「古村さん、また一位だね! おめでとう!」

「ありがとー!」


 南央はあっという間に女子生徒たちに囲まれてしまい、俺が近づけるような雰囲気ではなくなってしまう。

 俺はそのまま、空気を読むようにしてフェードアウトして、一人教室へと戻っていく。


 見ての通り、南央は誰とでも分け隔てなく話すことの出来る人気者。

 当然、周りからの信頼も厚い。


 一方の俺は、教室ですみっこぐらしをしている、俗に言う陰キャという部類にカテゴライズされる身だ。

 学年での成績が一位と二位で、この雲泥の差。


 南央はちやほやされているのに、俺は相手にもされない冷遇っぷり。

 それどころか、クラスメイト達からは、


『アイツ、いつも古村さんに挑んでるよな』

『古村さんに叶うはずないのに、学力でもスペックでもさ』

『でも確か、古村さんの幼馴染なんだろ?』

『らしいな。あんな不愛想な奴に話しかけてやってるなんて、古村さんマジ天使だわ』


 と言いたい放題言われている。

 何故か、勝手に俺が無謀な挑戦をしていると思われており、南央に気を使われているかわいそうな幼馴染というレッテルを張られているのだ。


 それを払拭することが出来ない自分も情けない。

 けれど何より、南央に勝てない自分が不甲斐なくて、ただただ悔しい。


 そんな不遇な扱いを受け続けて早一年半。

 俺は、そんな陰キャ生活に、終止符を打とうとしていた。


「ふっ……今に見てろよ。俺の名を、全国区に知らしめてやるんだからな」


 俺は、そんな独り言を呟きながらほくそ笑む。

 クラスメイト達をぎゃふんと黙らせ、南央と対等な立場に立つことの出来る、とっておきの秘策を用意しているのだ。

 きっと、南央も驚くに違いない。

 それほどに、今回の計画には自信があった。


 今まで俺を陰キャ扱いしてた奴らは覚えてやがれ。

 絶対にお前らを見返してやるんだからな!

 そして、南央と対等な立場に立って、俺もクラスの人気者になってやる!


 俺が企んでいる脱陰キャ計画。

 その、とっておきの秘策とは――

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