第26話:姫、撃たれる。

俺のこと以外も忘れてる姫。


姫はめでたく大学に入学したが、雪白 姫も栄生 美幸も当然のように大学に

進学してきた。


でも、ふたりのことも姫の記憶から消えていた。

もちろんヨコチのことも・・・。


人に限って覚えてないみたいだ。

その他のことは、案外覚えていたりする。

で、姫がエッチしたいって思う気持ちは満月の夜に限っていたが、

今はもう関係なくなっていた。


前みたいに満月の夜だけエロくなってくれてたほうがよかったかもって

今は思う。

毎日だと生活にメリハリがつかないし、毎日エッチしようって迫られたら、

正直ウザい。

俺も好きなほうだけど・・・それでも毎日はな・・・。


かと言って、姫をほったらかして家を出るわけにもいかないし・・。


まあ、仏像仮面ブッダーが時々、姫の様子を見にやってきてるみたい

だけど・・・。

姫のエロをどうにかできるわけでもない。


そもそもが姫をあんなにしたのはおまえらだろ?って言いたいよ、俺は。

ちゃんと姫を元にもどせよって言いたくなる。


で、ラブコメなのに、なんと悲劇が・・・姫に大変なことが起きた。


姫が大学からの帰りの駅のホームで誰かに拳銃で撃たれたんだ。

犯行は計画的で、姫を待ち伏せしていたみたい。


しかも撃たれた箇所が頭だった。


たまたまそこが駅のホームだったことで、目撃していた人が、すぐに

救急車を呼んでくれて姫は救急搬送された。

姫を撃ったやつは逃げて、その時点で犯人は不明だった。


あとで分かった話によると、姫を撃ったヤツだが、どうも以前ヤバげな

連中5人組に絡まれた時、姫はそいつらをボコボコにして病院送りに

してしまったことがあったが、姫を撃った犯人は、どうやらその五人組の

中の一人だったってことが判明した。


そいつは姫を撃ったあと、怖くなって警察に出頭して来たそうだが、

警察の取り調べによると動機は逆恨み。

で、拳銃は改造拳銃。


連絡を受けた俺はすぐに病院へ駆けつけた。


撃たれたのはたしかに頭なんだけど・・・近距離で撃たれたせいで、

弾が脳を貫通したらしい。


本当なら撃たれた時点で即死だったはずなんだけど・・・医者が言うには

なんと救急車で病院へ運ばれた時、MRIを撮ったところ脳の損傷はほぼ

再生していて、今現在、姫の脳はほとんど完治しているらしい。

弾が入った傷口も、ほぼ治りかけてると・・・。


こんなことは前代未聞です!!って医者が言ってた。


俺はその話を聞いてホッとした。

頭を撃たれたのに死ななかったんだ、姫は。

運がよかったとかそういうんじゃなく・・・さすが異星人・・・。

なんせ、異星人のDNA受け継いでるからな、姫は。


自己修復が極めて早いことは以前から知ってたが、これほどとは。


そして夕方になって姫は、なにごともなかったかのように目を覚ました。

自分がどこにいるのか、把握できす、戸惑っていた。

で、付き添ってた俺が姫に声をかけた。

姫は俺を見つけると、いきなりガバッと起き上がって俺にしがみついてきた。


「ツッキー・・・ツッキー」


「分かった、分かった・・・もう大丈夫だからな」


「私、どうなったの?」


逆恨みだと思うけど、姫は駅のホームで、拳銃でもって撃たれたんだよ

って教えてやった。


「ツッキーずっとそばにいてね・・・私、怖い」


え〜いつもの強気な姫と違うじゃん・・・なに怖がってんだよ。

つうか、まあ撃たれたんだもんな・・・怖がってもしゃ〜ないっちゃ

しゃ〜ないか・・・。


姫のことを心配して、雪白と栄生とヨコチが見舞いにやってきた。

ヨコチはまあいいとして、雪白と美幸は姫のライバルじゃなかったのかよ。


その後、これを機に三人とも仲良くなったみたいだった。

同類相憐れむってやつか?・・・変なの・・・。


でも、じつはこの時点で姫はすべての記憶を取り戻していたんだ。

UFOに検査に帰る前の姫に戻ったってことらしい。


きかっけは、たぶん頭を撃たれたこと・・・それしか考えられなかった。

あまりに「ツッキー、ツッキー」って甘えてくるから、おかしいなって

思ってたんだ。


で、めでたく姫は退院して俺んちに戻ってきた。


「姫・・・俺のこと覚えてるのか?」


「なに言ってるの・・・ツッキーはツッキーでしょ」

「私の大事な彼氏だよ」


「姫・・・・もしかして記憶が戻ってたりして?・・・もしかしなくても?」


「記憶?・・・分かんない」


「姫、俺たち恋人同士だよな?」

「そうだよ・・・だから〜浮気したら殺すからね、ツッキー」


「絶対戻ってんじゃん」

「不幸中の幸いってか・・・姫を撃ったやつに感謝だな」


「なにそれ・・・私、撃たれたんだよ」


「そうだな・・・」

「姫・・・よかった、なにもかも、ほんとによかった」


そう言って俺は姫を抱きしめた。


「ツッキー・・・心配かけてごめんね・・・あのね」


「何も言うな・・・」


「ツッキー泣いてるの?」


「いいから・・・」


つづく。


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