第20話:コスプレよりゴスロリより振袖

姫の誕生日まで三ヶ月を残して、正月がやってきた。

姫は年賀には振袖を着た。


お正月と言うこともあって俺んちに姫と仏像仮面ブッダーが揃っていた。


正月だってのに相変わらず親父は帰って来ない。

もう自分ちの家の場所なんか忘れてんじゃないのか・・・。


「姫、ブッダー、あけましておめでとう」


「あけましておめでとうツッキー」


「あけてしまいましておめでとうさんでござる」


おきまりのめでたい挨拶・・・。

世の中が混沌とした最中で何がめでたいのか最近はよく分からない。


姫の髪と着付けはどこかの美容室に頼もうかと思ったら、なんと

仏像仮面が、全部段取りしてくれた。


仏像仮面ブッダーをあなどってはいけないことを思い知った。

こういう人が一人家にいると非常に重宝する。


彼は女性の日本髪も結えるし、着物の着付けもできるらしい。

どこまで日本文化に精通してるんだよって話。


「姫のことは、それがしに任せるでござる」

「京都の舞妓さんにも負けないくらいの艶やかさにしてさしあげるでござる」


ものの二・三時間で姫は舞妓さんになった。

そのまま祇園通りを歩いても誰も、、素人の娘だとは気づかないだろう。


「姫・・・イケてるよ・・・ゴスロリもコスプレもいいけど

振袖はまた格別だな ・・・・超綺麗だ」


「ありがとうツッキー」


「着物は日本の究極の文化だな・・・」


さっそくだけど、姫の振袖姿を世間にアピールしながら

俺たちは初詣にでかけようと思ったら、仏像仮面ブッダーが俺たちの後ろから

付いてきた。


「神社へ行くでござるか・・・なら、それがしも・・・」


なんだろ・・・普通にトレーナーにジーンズの男と、振袖を着た女と、

ヒーローの格好をした異星人・・・へんな取り合わせ。


だから、俺たちは注目の的だった・・・歓迎的注目じゃなく奇異の目で

見られてるって言うのかな・・・。


で、歩いて神社に着いた俺たちは仲良く、お賽銭あげて参拝した。


普通なら・・・まあ家内安全、無事故無違反・・・みんなが健康ですごせますように

世の中が平和でありますように・・・。


結局、そんなことを願ってしまうんだけど


俺には今の所、姫とのこと以外、望むことはない。

姫と俺の行く先は見えないけど、それでもずっと続いてくれることを

俺は願った。


「ブッダーは神社よりお寺のほうがキャラ的に似合ってるんじゃないのか」


「どっちも同じようなものでござろう」


「たしかに神や仏も大事でござる・・・でも神や仏にすがるよりも

何ごとにも感化されない強い気持ち、ブレない自分を持つことが一番大切なのでは

ござらぬか?

あながち人は、すぐに何かにすがりたがるし、何かの影響を受けやすい生き物で

ござるからな。


「ブッダー・・・なんか頭良さそう〜」


姫がからかうように言った。


「それがし、IQが130以上あるでござるからな・・・」


「知識と頭のよさは比例しないと思うけどな・・・」


まことしやかなことを言う仏像仮面ブッダー。

異星人とはどうしても思えない。

仮面の中身は日本人じゃないかって思うときがある。


そんなことよりも俺は優越感に浸りたくて、帰りは姫と手をつないで帰った。

で、また俺の手が軽くなった。


俺の後ろからニタニタ笑いながら、振袖から腕が取れた姫がついてきていた。


振袖から腕が出てないって・・・ホラーだよ、絶対ホラーだ・・・。


「姫は腕が取れても平気って言うのが、不思議でござるな」


「それって、あんたらの責任じゃないの?」


「諸行無常・・・南無阿弥陀仏・・・南無阿弥陀仏」


つづく。

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