第8話:二人の姫

朝起きると、やっぱり姫はパンツ一丁で朝ごはんを食っていた。

何度言っても、治らんものは治らん・・・親父がいなくてよかったよ。


でもって姫の暴力・・・俺が姫の仮の彼氏になってやってから姫は暴力を

ふるわなくなった。

前は、人の頭を叩いたり、足を蹴ったりそういうのは日常茶飯事だった。

ちゃんと約束は守れる女なんだ。



ある日のこと、姫のクラスに新しい女子が転入して来た。


彼女の名前は「雪白 姫ゆきしろひめ


シラユキヒメじゃなくて?


うちの姫と同じ名前・・・ややこしい。

だから雪白のことは姫じゃなく、普通に雪白って呼ぶことにした、勝手にだけど。


最初は雪白のことは何も知らなかったが、のちのち彼女と話す機会があって

分かったことによると、同じ姫でも、うちの姫とは全然違っていて両親もちゃんと

いてけっこう裕福に育ってきたらしい。


まあ、姫みたいにクチが悪いわけでないし、暴力的でもないみたいだ。

たぶん、満月の夜もエロくないんだろう。


で、なんと言っても驚いたのは雪白はコスプレイヤーだってこと・・・。

それは俺にとっては、めちゃ美味しい。


コスプレイベントなどで、俺の好きなゲーム、ブルーヘブン・ファンタジーの

キャラ「セルジュ・フォン・ヴァルデック」に扮している。


セルジュをコスプレした雪白の画像が彼女のツイッターに上がっている。

俺は全部、ダウンロードした。

コスプレ好きの俺には、たまんない。


それにメリークリスマスブロマイドなんて言って、セブンイレブンのネット

プリントで1枚40円でブロマイドが印刷できるって言うじゃないかよ。


俺は、たちまち雪白のファンになってしまった。

できればお知り合いになりたい。

雪白は姫と同じクラス。


だから雪白を紹介してくれなんて姫に言ったら、火に油を注ぐようなもの・・・

絶対、殺されそう。

仮の彼氏でも、浮気したら殺すからって言ってたんだから、本ちゃんの

彼氏になったりしたら、どうなるか分かったもんじゃない・・・。


絶対、おかしい。

正式には俺は姫の彼氏でもないのに、他の女性と仲良くしたら、許されないってどう

考えてもおかしくないか?。


つうか美幸とのつまらん見栄の張り合いは決着がついたんだろ?

だったらもう俺が彼氏でいる必要もないじゃないかよ


そう思って俺は姫に言ったんだ。


「俺たち、もう彼氏とか彼女とかって関係じゃなくてもよかないか?」


「何、言ってるの・・・一度、彼氏になったらもういいだろってことには

ならないの・・・」


「いやいや・・・実際のところ俺は姫の彼氏でもなんでもないんだからな」

「あれは、おまえが話の上だけでいいから彼氏になってくれって言ったから、

おっけ〜したんだろ」


「もうそんな、見栄っぱり必要ないだろ・・・」


「・・・・・」


「なに・・・なに黙ってるんだよ」


「だってチューしたし・・・」


「チューしたって言ったって・・・おまえ・・・」

「え?、待てよ・・・おまえ満月の夜のこと覚えてるのか?」


「覚えてるよ」


「俺がおまえが満月の夜・・・迫って来たって言ったら」

「そんなことするか、キモいって言ったじゃんか」


「全部、覚えてます・・・」

「チューしたことも、おっぱい揉まれたことも・・・」


「そうか・・・・?、って・・・」

「揉んでない、揉んでない・・・それは違う」

「もうちょっとでウンって言うとこだったわ・・・危ねえな・・・」


「チューしちゃったら、お互いもう恋人同士だからね」


「おまえな・・・なにガキみたいなこと言ってるんだよ」

「チューくらいでそんなことにはならないよ」


「じゃ〜はっきり言うけど、私、ツッキーのこと好きになったんだもん?」

「れっきとした恋愛感情で告ってるんだからね」


「まじでか?・・・いや〜そう来たか・・・」

「いや、待て待て、いや、いや・・・それは・・・」


「つうかさ・・・俺のどこかいいんだよ・・・イケメンでもないし」

「モテるわけでもないし・・・特にこれって特化した魅力だってないし・・・」


「ツッキーは充分魅力的だよ・・・自分で気づいてないだけだよ」

「そりゃね、見た目って大事だと思うけど、問題は中身でしょ?」


「それって、つまり・・・俺の見た目が悪いって言われてるみたいなんだけど・・・」


「あ、ごめん・・そう言うつもりじゃなくて・・・なんて言うの?」


「だから、誰かを好きになったら、それがすべてなの・・・理屈じゃなくて」


「・・・・」


魔が差してキスしたのが間違いだったのかな・・・?


つづく。

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