ある意味、間違ってはいないだろう


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さらに10日ほどたった頃。

国王の下へ隣り合う国からの絶縁状が次々と舞い込んだ。

すべてが国王と王妃、王太子や取り巻きたちによる公爵令嬢への待遇が原因だった。


公爵令嬢に対する虐待や冷遇が表面化したことで、市井では貴族や王族に対して不平や不満をくすぶらせていた。

それをさらに煽るように届いた絶縁状。


「もう国はもう終わりだ」


八百屋の店主がそう呟いた。

彼は公爵家に虐待されている子どもがいることを知っていた。

しかし、使用人の子か何かだと思っていた。


「なぜ助けなかった!」

「分かるかよ! 下着一枚で汚れた姿だったんだぞ!」


その証言から、ほかにも出入りの商人たちが「あの子がそうだったのか?」と口にする。

目撃者、多数。

それは公爵令嬢の日記に記された文章が事実だと裏付ける証言となった。





「号外! 号外だよ!」

「王妃が国王に殺された! 手打ちにされたぞ!」


詳しくはこいつを読んでくれ! という煽り文句に、人々が殺到する。


あっという間に完売する号外。

購入した人が広げて読む号外に、人が集まる。


「王妃が反省する言葉を言わず。国王に罪をかぶせて口汚く罵ったことから、国王が自らの手で成敗した、らしい」



悲しいかな。

これでこの話が終わるわけではない。


「これで……国境封鎖は解除されるのか?」

「いや、国王は罪を償ってないぞ!」


飢えと不自由さは人から正常な思考を奪う。

人々の目が据わる。

その瞳に、赤い筋が光っているのを誰も気付かなかった。

その光る赤い筋をみた人の瞳にも、同じ光が怪しく走るからだ。





「国王を引きずり出せ!」

「貴族たちもだ!」

「王城で働いている者は全員同罪だ!」


興奮と熱波が異常なスピードで王都内に広がっていく。

それはまるで流行はやりやまいが感染して広がっていくように。


午前に始まったその暴動が、午後には王都を揺るがすクーデターに発展していく。


「ここは⁉︎」

「娘が王太子たちと同罪になったぞ」

「じゃあ、親兄弟も同罪だ!」


国王たちと同罪と見做された貴族邸は襲撃されて、貴族たちは縛られて王城に向かう民衆たちに連れられて歩かされる。


「いやぁぁぁ!」

「服を、せめて服を着させて!」

「靴をっ! 靴下でもいい!」


下着姿に裸足の状態で歩かされた貴族たち、特に女性たちはすぐに足が傷だらけになる。

季節は冬になり、雪がチラつく寒さの中。

人々の熱気の中にいたとしても、暑さ寒さと羞恥心はどうすることもできない。


「お前たちが虐げてきた公爵令嬢は、真冬でも下着1枚だったんだぞ!」


そう言われてしまえば、何も言い返すことはできない。

震えながら王城まで続く行進の列に、遅れないようついていく。

遅れれば手加減なく突き飛ばされ、転べば蹴られ、すぐに立ち上がらなければ引き摺られる。

下着姿で引き摺られれば、やっこい肌は簡単に裂ける。


気の毒な誰かがなれば、目撃した誰もが必死に足を動かす。

必然的に改善を訴える声は失われ、俯き歩くその姿は葬送に向かう列のようだった、と記録が残っている。


ある意味、間違ってはいないだろう。

王妃の死。

それがこの暴動の起因きっかけであり、王妃の遺体は彼らの向かう先に安置されているはずなのだから。

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