悪役吸血貴族に転生した俺の唯一の能力は血を吸った女を自分のものにすること。でもなんか嫌でずっと血を吸うのを我慢してたらすごい痩せ細って毎夜巨乳美女達が心配して吸って吸って言ってくるんだがまだ吸わない。

新田竜

第1話 好きだった物語だけど

 ああ、あの物語ね、と俺はすぐにピンときた。


 だって結構好きだった物語だったから。


 でも、自分がその物語の超序盤に登場する悪役キャラ、ダッカス・ユアンク吸血子爵きゅうけつししゃくに転生してしまったことにも同時にすぐ気づいてしまったのだ。


 、女たちを自分の思うままにして、その女たちに目をおおいたくなるような悪の限りを尽くす、うんざりするほど女の敵の嫌なキャラ。


 

 

 ――じゃあ、血を一切吸わなかったら?


 

 

 俺はそう思いついてしまったのだ。


 もちろん人の血以外にも食事をることはできる。


 だが、血を吸わないと本当には空腹を満たすことはできない。


 いくら他の物を食べてもあの地獄のような空腹からは逃れられないのだ。




         ⚫




「吸ってください、ユアンク様!」


 一体何人の女が濡れた瞳で俺にそう訴えてきただろう?


 女たちは俺に血を吸われることで普通の生活では決して知ることのできない性的快感を経験することができる(らしい)。


 だからか、そうやって誘ってくる女は皆胸や足を強調したとても魅惑的な格好で俺に近づいてくる。


 だが、俺はそんな彼女たち(皆驚くほど美人なのだ)の誘惑にもう1年近くえている。


 その間に、吸血をやめた吸血貴族としての俺の名声は予想外に鰻登りに上昇していっていたので、それをやっかむ他の貴族連中から差し向けられてハニートラップ的な女も、もちろんその中には多く含まれていた。



 そして、今日も女がまた一人俺の屋敷を訪ねてくる。


「ダッカス・ユアンク子爵様ですか?」


「いかにもそうですが」


 確かに美人は美人だが、とてもハニートラップとは思えない純朴そうな娘。


 大体、吸血子爵の俺に吸血子爵と言ってしまうあたりがなんともかわいらしい・・・・・・と完全に油断してしまっていた俺にその女はこんなことを言ってきた。


「私は有名な聖女様にお力を分けていただいていますので、あなた様に血を吸われてもなんともありませんから、どうぞお吸いになってください!」


 ほう!

 なかなかの新手あらての誘惑だな!


 と俺は素直に感心した。


「どうしたのですか? 吸血子爵様! 私の血をお吸いにならないのですか? そんなにげっそり痩せられて! お可哀想に! 我慢なさらずに、早く私の血をお吸いになってください!」


「わたしは生涯女性の血を吸わないと心に決めたのです。ですから、あなたの血を吸うことはできません」


 どうやら血を吸うのを我慢している間に俺は発する声ですら女たちに性的な興奮を与えられるようになっているらしく、純朴そうなその女もすぐに顔を赤らめてトロンとした表情になってしまう。


「吸血子爵ぁ! お願いですぅ! 私の血をお吸いくださいませぇ!」


 純朴そうだった娘は、意外にもかなり豊かだった胸を俺に見せつけながら、そう懇願こんがんしてくる。


 ああ、声だけでこんなに乱れてしまうとは。

 聖女様に力を分けてもらったのというのは大嘘だったのだなと俺はひどくガッカリした。


 すぐに、じいやを呼んで女を部屋から連れ出してもらう。


「ダッカス坊っちゃま、誰に頼まれたのか聞き出さなくてもよろしいのですか?」


 と、爺やはその女の体を支えながら(俺の声を聴き過ぎると女は立ってられなくなってしまうのだ)、俺にそう尋ねてきた。


「大丈夫です。そんなことをしたらその女性の身が危うくなりますから」


 俺がそう答えると、爺やはコクンとうなずいてその女を部屋の外に連れ出してくれた。


 そして一人になった俺は静かにこう呟くのだった。


「童貞にはこのミッションはやっぱり過酷だなぁ」




※※※

第1話を最後までお読みくださりありがとうございます!


ここまでで、俺(ダッカス・ユアンク子爵)のことを応援してやろう、もう少し見守ってやろうと思われたら、作品フォローや★評価をしてもらえるとすごくうれしいです!


【次回予告】

第2話 新しい悪役!?


俺が悪役をちゃんとしないから新しい悪役出現!? どうする俺? な第2話っ!


どうぞ続けてお読みくださいませ

m(__)m



 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る