第2話:ひきこもり、社長に気に入られる

vtuber事務所クロノスタシス:社長室

クロノスタシス社長―― 露木 涼葉は《つゆき すずは》数十枚ある資料の中から

一つの書類を見ていた。紫苑の履歴書である。


「アハハハハハハ!なんだこいつっ私初めて履歴書見て笑ったぞ!」


涼葉の見ていた紫苑の書類内容...それがこちら


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紫苑かがり しおん

2006年 2月8日 満16歳  性別:男

現住所:東京都千代田区XXXXX X-X  電話番号:090-XXXX-XXXX

連絡先:同上


             学歴

            特になし


           免許・資格

平成31年 簿記一級

平成31年 ネットマーケティング検定

平成31年 KLAT

平成31年 実用イタリア語検定

平成31年 全国手話検定試験

              ・

              ・

              ・

令和4年 ラーメンソムリエ検定


志望動機

姉に自分の成長に繋がると勧められたので、志望しました。


趣味・特技

英語 中国語 韓国語 ロシア語 ドイツ語 ラテン語 スワヒリ語

ゲーム

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...まあ、上は普通だった。涼葉もなんとなく見ていた。なんか他のやつより

下の方の密度高いなくらいで見ていた。

読んでみてどうだ。とにかく資格と言語系統の能力がやばい。


「ラーメンソムリエってなんだよ、初めて聞いたわww」


それもそのはず、紫苑は学校へ行っていない。ゲームなどで時間を潰すにも

限度がある。つまりは暇つぶしだったのだ。


「でもこのスペック、逃すには惜しいな...」


それもそのはず、これまでクロノスタシスには母国語以外を話せる

vtuberはいなかった。ここまで多言語を話せる紫苑は貴重といえる。

無論、コミュ障であることを除けば、だが。


「コミュ障...ね、だがそれも、vtuberにとっては一つの才能だ。それに、

 篝ということはあの子の弟だろうしね。姉弟...いや姉妹でいくのもありだ。」


そう言うと涼葉はニヤリと笑って


「気に入ったよ、篝 紫苑。採用しよう。」





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

午後1時

篝家:紫苑の部屋


「はぁ...どうしよう。なんで受かっちゃうんだぁ...?」


今思ったろう、なんであいつあんなに自分のできること書いといて受かっちゃう

とか言ってんだ...と。

単純明快、紫苑が書いたのではないからである。

真犯人はもちろん、沙結だ。

履歴書を届けるためには外へ出ないと行けないが紫苑は

現在ひきこもってるので、外に出ることができない。

間に沙結を挟む必要がある。

そこで、沙結が履歴書に手を加えたのだ。

ちなみに特段嘘を吐いているわけではない。資格は全て本当に持っている。

それが、紫苑の恐ろしいところだが。


「...もう諦めてvtuberやるしかないのか...」


そう言い、紫苑は部屋を出て階段を下りる。

リビングに入るため、扉を開けて


キィィ


「やっぱり君の弟だったか~!」


ガチャン


扉を閉めた。その間およそ0.3秒、まさに神業であった。

急いで、階段を駆け上がり流れるように部屋に入って鍵を閉めた。

そのまま、ベッドに潜り込む。


「え、なになんか知らない人いるんだけど..」


紫苑は純粋に恐怖を感じた。

するとまた、階段を駆け上がる音が聞こえた。


ドンドンドンッ!!


「なぁ、君が紫苑君かい!?すこし私と話をしてくれないだろうか!」


「ヒィィィ!」


「ちょ、社長駄目ですって!紫苑はコミュ障極めかけてるんです!

 いきなり社長みたいな人と話したら死んじゃいますよ!」


「私みたいとはなんだ私みたいとは!まるで私が変人のようには話すな!」


「だから変人だって言ってるんですよ!あなた以上の変人

 私見たことないですからね!?ほんとごめん紫苑、ちょっと

 この人変人だっていうか、目標に向かって行くタイプだからっ」


「いいだろう別に!それでいままで成功してるんだ!

 私は今とにかく彼と会話がしたいんだ!」


「じゃあせめてネット通話とかにしてください!それなら私が説得しますから!」


「...チッわかったよ...今回は君に免じてネット通話での会話に譲歩しよう。」


「じゃあ、私が説得しておきますね。」


「あぁ、頼んだよ。」


やがて階段を下りる音が聞こえる。その音を聞いて、紫苑はホッと息を吐く。

そのあと、コンコンと静かなノック音が聞こえてきた。


「さ...沙結姉ぇ?」


「残念、私だ!」


「ああああああ!」


涼葉だった。完全に不意を突かれた紫苑はたまらず絶叫する。


「沙結だと思ったかい!君をいじめるのは楽しいなぁ!」


「も...もうこの人やだぁ...」


「今日通話するのは無理そうです。社長のせいですからね!

 もう、私まで嫌われたらどうするんですか...」


「沙結姉ぇもう嫌い...」


「なんでぇっ!?」


結局、紫苑が涼葉と会話するのは1週間後ということになった。

沙結はその後、紫苑からの嫌い発言で若干病んでしまい、

その夜の配信のあとSNSで#メンヘラ銀鏡がトレンドに入ったという。

だがそれはまた、別のお話...



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最後までご覧いただきありがとうございました。

誤字脱字、日本語の表現がおかしいところがあれば、

ご指導のほどよろしくお願いします。

ブックマークや評価をつけてくれると嬉しいです!

では、また次の話で会いましょう。   

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