深層心理の精神騎(スピリット)
彁面ライターUFO
プロローグ『動き出した運命』
『急性ショック障害』。
その引き金は、人の生死がかかわるような強い心的外傷……いわゆる、トラウマ体験であるとされている。感じ方、影響は人それぞれであるが、症状が重い場合には、それらが長期間続くケースもあるらしい。僕の場合は、悪夢、不眠、拒食症、神経過敏……だっただろうか。幸いにも、それらが重症化するようなことはなかったけど……でも、あの日受けた宣告は、僕の心に大きな傷を与えるには充分すぎるものだった。
……僕も、父さんのようになりたい。
物心がついた時から、僕は━━━━
僕は、父が在籍する『
努力の末、僕はなんと
これで父さんに近づける。偉大な心理学者になる為の一歩を、ようやく踏み出せる。……そう思っていた矢先の出来事。僕は、
「
「……………………は?」
なのに……どうして…………
「行方不明、ってどういうことですか? 外国の知らない街で迷子になって戻ってこないとか……そういうこと、ですよね?」
冗談のつもりで、そう尋ねてみた。研究員の声の重さや間の取り方からして、深刻な問題であるということは容易に想像できていたのに。
しばらくの沈黙の後、研究員は電話越しに低い声で、
『分からない……何者かに襲われたとか、誘拐されたでもなく、ただ単純に失踪した。 それだけさ』
「そんな……」
『……君は、高校に入学したばかりだそうだね。 教授から授業料などの支援を受けていたようだけど……こうなってしまった以上、今通っている高校から転校してもらわざるを得ない』
高校に通い始めてから、まだ二ヶ月も経過していない。まだ、父さんの背中すら見えていない。そんな状態から、いきなり
絶望。この瞬間ほど、その言葉に合致する状況はないと思った。尊敬していた父が行方不明になった上に、自分の夢まで打ち砕かれるなんて……そんなの、神様の悪戯にしてはあまりにも酷すぎる。
『……もちろん、教授失踪の責任は、私たちにある。 だから、最低限君のバックアップはするつもりだ。
君の転入先については、もう話がついていてね。
「……分かり、ました」
反抗する気も起きなかった。しきりに謝り倒す研究員の言葉は、もう僕の耳に入ってこなかった。ズタズタに心を打ち砕かれた今、もう僕には、運命に身を任せて生きるしか道はない。そう思うしかなかった。
静かに受話器を下ろしてから、天井を仰ぐ。絶望に打ちひしがれた僕は、何も考えることすら出来ないまま、布団に潜り込んでずっとうずくまっていた。
***
「━━━━━じゃあ、本当に転校しちゃうのか?」
「……うん。 お別れ会なんかも無しで、明日からパッタリ居なくなることになると思う。 ……短い間だったけと、ありがとね」
高校での最後のホームルームを終え、僕はクラスで出来た最初で最後の友人━━━━
「そっか……家庭の事情、って事なら仕方ないよな。 ……何か困ったことがあったら、いつでも言えよ! 力になるから!」
「
そう言って、グッと熱い握手を交わす。幸い、転校先は隣町の学校であるため、会おうと思えばいつでも会える。ただ、学舎が変わってしまう以上、僕と
「……よし、やるぞ」
そうして僕は、決意を新たに、黙々と転校のための準備を進めるのであった。
━━━━とまぁここまでが、僕が
しかし、この
━━━━そう。この時の僕はまだ、あんな壮絶な運命に巻き込まれるだなんて……想像だにしていなかったのだ。
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