第6話 到着してから早速お約束の尋問です・・・と思いきや

 宙賊のデータを元に到着したコロニーの名前はルーダ星系第3コロニーと言うらしい。

 ルーダ星系はガス惑星が多くガス系の資源が多いようだ。

 因みに航宙艦の燃料はガスと液体燃料を複合した新世代燃料と言われているらしい。

 「宙賊の残骸によくこんなデータが残っていたな?」

 俺がルナから情報端末に貰ったデータを読みながらそう言うと、

 「正直、偶々でしょう。元々機体の中にあったデータがそのまま残っていたモノと思われます。人を襲う賊にそんなモノが必要だとは思えませんからね。」

 ルナが辛口で宙賊ども扱き下ろした。

 「まぁそうだよな~、あんなのが一応でも文明人と言われてもびっくりだな。」

 相槌を打ちつつルナに気になった事を質問してみる。

 「因みにその知識はどこから・・・?」

 「乙女の秘密・・・と、しておきたい所ですが標準メモリーに最初からインストールしてありました。つまりこの世界の常識として私のメモリーの中にインストールしてあります。」

 ルナがある程度常識を知っている事は正直言ってありがたい。

 つまり、奴らは俺の世界で言うバイキングな訳だ。船の積荷も船乗りの命も全部奪うという意味でやっている事は同じ・・・いや、それどころか奴隷の改造なんて事を仕出かすからもっと悪質だな、詳細な部分はコロニーで自分で調べるようにルナに言われてしまったが・・・恐らく相当胸糞なんだろう。

 「とりあえず、着いたら取り調べ・・・だよな~」

 「それは間違いないかと、恐らく尋問になるでしょうが・・・間違いなく危険人物ですからね。」

 と、ルナの言葉に・・・

 「はぁ~、ここで失敗するとレッドプレイヤー・・・リアルで賞金首生活なんて嫌過ぎる・・・あぁ、引き籠もり生活だったあの頃に戻りたい・・・」

 俺の嘆きは暫く続いた。

 

 ルーダ星系第3コロニーに到着してハンガーベイに着艦申請をコロニーに通信で送ると、

 「失礼ですが、キャプテン・デューク様。シップオーナーの情報以外が全て消去されているようですがこちらの事情はご説明出来ますか?」

 内部データを確認されてから、コロニーの通信手からそのように聞かれたので、

 「俺が消去したのでは無く、艦のトラブルで航宙図も含めた全てのデータが破損もしくは、一切無い事はこちらでも把握している。正直、俺の記憶もかなりあやふやでな・・・何で宇宙を漂っていたか分からないんだ。」

 「・・・航宙図のデータが破損していたらどうやってここまで?」

 「艦を起動したら宙賊が襲って来てな・・・そいつらを撃破してデータを漁った。・・・あぁ、マテリアルの類も手に入ったから出来れば処理もさせて貰いたいのだが・・・データマネーも全部飛んで現在一文無しでね・・・」

 俺が沈んだ声でそう答えると、

 「・・・事情は把握しましたが、治安維持法を則って尋問を行う事になりますがよろしいですか?後、当コロニーに滞在中は軍か行政からの許可が降りるまでは見張りを一名同行させる事になります、そちらの方にも同意していただけますか?」

 「・・・同行させる者の扱いはこちらはどんな風対応すればいいんだ?」

 「・・・見張りと言いますが、実際は日常生活に何か不審な点がないかどうか探るのと同時に、一般常識等の知識がしっかりとあるかどうかの確認でもあります。しばらくはまぁ、同居人ができるものとお考え下さい。」

 「・・・手癖が悪かったらこちらも容赦出来ないがそれで良ければ・・・」

 「畏まりました、こちらも適正な者を付けますのでその辺りはご安心を・・・では、No.17のハンガーにナビに従って着艦してください。また出力を最低の停泊モードにしてからコロニー内に入るようお願いします。」

 こちらの事情を話したからか、どうにかコロニーに入る事が出来た。

 俺は指示に従って出力を下げてからコロニー内のハンガーに移動を開始する。

 「・・・さて、ここからだな・・・どうなることやら・・・」

 俺がそうボヤくと、

 「・・・私の方でもしっかり情報を取得致しますから、灯護は誤解されないよう素直に受け答えをして下さい。只、言わなくていい事も喋らないで下さいね?」

 「わかってるよ口は災いの元、だからな。」

 ルナと相談しながら俺は慎重に艦をハンガーベイに着艦させた。

 この後、尋問の為に俺は身支度を整えて沙汰の次第を待つのであった。


 あの後、10分程の時間で軍から治安維持隊がこちらに駆けつけ、俺を軍の敷地内にある取調室のような所に連れていった。

 とは言ってもそこまで強引なモノでは無く、武器を預けて一緒に歩いて行った程度だ。

 それから現在、尋問が始まり1時間程で・・・

 「・・・以上で調書は終了となりますね。」

 と、俺を尋問していたピンクのポニテが特徴的な見た目はかわいいが表情が非情にクールな尋問官さんがそう言った。

 「・・・俺は別に構わないが、質問の答えをほとんど分かりませんとしか答えてないが、コレで大丈夫なのか?」

 後で難癖付けられると面倒なので確認すると、

 「はい、航宙艦の方にも確かにデータは残っていないようですし、しかも復元させるデータ自体が無いと報告が上がっています。通例で見張りが付く事になりますが、それも長くて1週間と言ったところでしょう。」

 俺が微妙な表情をしていたのだろう。

 「大丈夫です、後から難癖を付けるような事はありませんから・・・一応、念の為に後30分はお話させていただきますが・・・」

 少し苦笑気味な表情で俺に語りかけてくる彼女の名前は確か、

 「リリアーナ・ベルティ様の言葉を疑う訳では無いですが、結構気合いを入れてから尋問に臨んだモノで・・・」

 ベルティ子爵家の長女の、リリアーナ・ベルティ中尉だと本人が最初に紹介してくれたが・・・なんというか、一言で可愛いとしか言えないくらいにマジで可愛い、最初や尋問中のクールな表情を見たあとだと、適度に力を抜いた今の表情は非常に可愛い。

 「しかし、宙賊を13機まとめてですか・・・恐ろしい戦闘力ですが、よく扱いきれますね?」

 リリアーナ様が俺の初陣の戦闘ログを見ながら首を傾げる。

 「まぁ、そこらへんは身体が憶えていたからな・・・しかし、消したデータの復元は予想通りだったけど、実際に自分の足取りが分からないとは・・・」

 俺としては少し期待が外れた形になるが想定内ではある。

 「艦に高性能のサポートAIが付いてるとはいえ、記憶があやふやな状況である今の状態で、コロニー内で生活するのは危ういと思いますよ?このコロニーは治安がいい方ですが悪人がいない訳では無いですから。」

 「そうだな、とりあえず見張りの人があまり無茶をする人でなければいいかな。」

 親切な人であればいいと思うが、横柄で横暴な奴が来たら俺の拳が光り輝くかもしれない。

 「では、そろそろ時間ですね・・・では、・・・」

 「??

 少し疑問に思う事を言われたが、リリアーナ中尉に退室を諭されたのでそのまま取調室を出て装備を回収してから俺は自分の艦に戻った。


 そして、艦に戻った矢先・・・

 「灯護、お勤めご苦労さまです!」

 「違うからね?想像よりもかなり穏便だったからね?グレーはグレーでもちゃんとシロよりだって理解してくれたからね?」

 ルナがネタをぶっ込んできたのでしっかりと訂正ツッコミを入れておく。

 「それで?やっぱりデータは何も無し?」

 「はい、向こうもしっかりと確認した上でNODATAです。」

 まぁ、俺が自由に歩けている段階でそうなんだけど・・・

 「あぁ、そういえば賞金首の換金をしてきたから、一応確認しないと・・・」

 「・・・全部で6万5千ガネーですか、水が0.3ガネーですから、まぁまぁの稼ぎでしょうね。停泊費が1日5ガネー、滞在費が1日3ガネーですからね、全部で1日9か、10ガネーと考えると、500日以上は滞在出来ますね。後は積荷の売却ですか・・・」

 とルナと費用の計算をしていると、

 チリンチリン・・・

 艦に来客を知らせるベルの音が響いた。

 「例の見張り役の人かな?」

 そう言って俺がハッチを開けると、

 「お待たせしました、リリアーナ・ベルティ中尉、貴艦が不自然な行動を行っていないか、グロリアス帝王国法 帝王国航宙軍法に基づき無期限にて貴艦に同行させていただきます。」

 俺はその見事な敬礼といい笑顔を見て、

 「・・・え〜、イヤイヤ、え〜・・・」

 としか言えなかった。

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