第05話 今後の方針



 レプトは北東の森に入って、記憶を頼りに窃盗団の隠れ家を探した。


 すると、伐採して整地したりと、すでに拠点作りの作業がはじまっていた。


 遠巻きに観察しながら周辺マップを作り、街に戻った。



 本来なら、知り得ないことを知っていたこと。


 その記憶が、概ね正しかったこと。


 6年後に殺される未来を変えるために、これを利用しない手はない。


 レプトは、そう自分に言い聞かせ、今後のことを考えた。



 翌日、冒険者ギルドで登録を済ませたレプトは、薬草採取の依頼を受けて北東の森へ向かった。


 依頼内容は簡単なものだから、手早く終わらせた。


 あとは、冒険者として活動しているとアピールするため、マップに地形や生態系を書き込んだ。


 街に戻ったレプトは盗賊ギルドを訪ね、他の地から窃盗団が流れて来る、そんな噂をさりげなく流した。


 次に、冒険者ギルドで依頼達成の報告を済ませると、森が騒がしかったと数人の冒険者に伝えた。


 情報や噂の流し方は、これから学ぶことだが、いまのレプトには経験済みのことだから自然に行えた。


 目立たずにやることが肝要だ。



 2日後、盗賊ギルドで北西の森のことを尋ねられたレプトは、自作のマップを取り出し森の違和感を説明した。


 その後は早かった。


 ギルドマスターは、冒険者ギルトと商業ギルドを巻き込んで、窃盗団の情報を集めた。


 街の管理者(領主代行)に報告し、すぐに討伐隊が組織された。


 被害が出る前に窃盗団を撃退できた手柄はレプトにあると、報奨金を貰った。


 各方面に顔を売ることもでき、幸先のいいスタートにレプトは手応えを感じた。



 それからのレプトは、とにかく思い出したことを片っ端から書き出して、時系列に並べ替え、対処の優先順位を付ける作業を続けた。


 周囲に勘ぐられないよう、15歳の新人冒険者を装う。


 小さな依頼をこなしたり、わざと失敗してみたりと、立派な演者になっていった。




     ◆




 レプトが街に来て半年が経過したころ。


 半年後にはクォークがやって来ることに気がついた。


(迎える準備をした方がいいか?)


 これから先も幼なじみの関係を続けると、レプトはクォークに対して強気の意見を言えないことは経験済み。


(二人の関係性を変える必要があるか?)


 どうすればいいのか、サッパリだった。



 二人は物心がつくころから一緒に育った仲で、クォークのことは大好きだ。


 でもそれは、家族を大好きだと言うのと同じで、異性としての好きとは違う。


 クォークは単純な力ではレプトより強い。


 レプトは、いつもクォークの方針に合わせていたから、主導権を奪うことは容易じゃない。


 と頭を抱えた。



 とりあえず、両親とクォークに宛てた手紙を書いた。


 一週間後、クォークからの返事が届き、


 15の成人まで待てない!


 街まで一人で行くのは怖いから迎えに来て!


 こんなことが書いてあった。


 予想外のことにどう対処すればいいのかと、悩み事が増えた。


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