第04話 やりなおし?



 4年前のこと。


 レプトは白昼夢でも見ているかのように、足取りをフラつかせていた。


 太い柱に頭をぶつけ目を覚ます。


 何事かと辺りを見回すと、そこは冒険者ギルドの入り口だった。


 訳がわからず、その場を逃げ出したレプトは、見慣れた街並みがほんの少し違っていることに気づいた。


(あの雑貨屋は閉店したはず)


 不思議に思い立ち止まり、ふと自分の姿を見下ろすと……。


(体が小さい)


 自分の身体をペタペタと触ると、


「なんだこれ?」


 母親が作ってくれた、魔除けのお守りを腰にくくり付けていることに気がついた。


 慌てて荷物を降ろして中身をチェックすると、父親が持たせてくれたナイフが出てきた。


「村を出てきた時の服と荷物だ」


 レプトは15歳になって成人すると、生まれ育った村を出てこの街で冒険者になった。


 街に着いた直後で、冒険者ギルドに向かっていたのか?



 ついさっき、毒を盛られて死んだハズだったのに……、15歳の自分に戻ってる?


 さっきまでが夢だったのか?


 いまが夢の中なのか?


 何もかもが、わからなかった。



 宿屋に泊まり一晩考えたが、答えは出なかった。


 しかし、これから何をするかは決めた。


「これから6年間のことを、予知夢で見たことにしよう!」


 レプトは、今から6年後にクォークが殺されてしまわないよう、今後の行動を変えようと決心したのだった。



 宿を出ると、冒険者ギルドへは行かず、盗賊ギルドを目指した。


 入会金を支払ってギルドに加入し、ギルドカードを発行してもらう。


(これで情報の売買が簡単にできる)


 15歳だったころの記憶を探ると……。


 いまから数週間後、北東の森から魔獣が溢れ出てくる事件があったことを思い出した。


 原因は、森の奥に窃盗団が活動拠点として隠れ家を作り、そこで魔獣除けの魔道具を使ったから魔獣が溢れた。


 原因調査のため森を捜索した冒険者たちが隠れ家を発見し、討伐隊が組織されて窃盗団は壊滅した。


 駆け出しだったレプトも、その捜索に参加していたからよく覚えていた。


 いまの時期、窃盗団が森に潜んでいる可能性が高いことに思い至る。


 それを調べて、情報を売るのはどうかと思案した。



 15歳の肉体は、まだ盗賊としての訓練を受けていない状態だから、隠密行動できるか不安を感じた。


 試してみたら、長年培った身体の動かし方や感覚を再現できた。


 肉体を鍛える必要はあるが、一人前の身のこなしを再現できたことにホッとした。



 今後知る事、身に付ける技、それを6年後から持ってくることができたと、素直に喜ぶことはできなかった。


 自分だけがズルをしているような、そんな気がした……。


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