スキルポイント99999の使い方～閉店したスーパーのポイントをステータスに割り振ってみたら異世界ハーレム無双でした～

第47話 なにわろとんねんっ！？

「リュート。貴様という奴は本当に見境が無いな」

「同感だわ。本当に救いようの無い担い手だこと」

　アスカに言い寄られ、しがみつかれている俺を冷めた目で見つめるカルチュアとルディス。

　いやぁ、そんな事言われましても……

「はぁ？　カルチュア、てめぇ！　アタイのダーリンを気安く呼ぶんじゃねぇよ！」

「いつから貴様のモノになったのだ？　言っておくが、リュートはロリコンだ。貴様のような賞味期限切れの女には興味が無いだろう」

　うぉーい！？　何を言ってやがります！？

「ロリコンだぁ！？　つうか、アタイで賞味期限切れなら、てめぇはなんだ？　腐りきった発酵食品かよババア！！」

「……よほど、死に急いでいると見えるな。いいだろう、望みどおりにしてやる」

　バチバチバチ。

　視線で火花を散らしている2人。

　俺はその間にひっそりと、アスカから距離を取った。

「ふぅ……やっぱり【魅力】の高さはどうかにしないとな」

　俺は服の袖を破ると、それを口元に巻きつける。

　不格好ではあるが、このまま放置するよりはマシだろう。

「あー……アスカ、でいいよな？」

「えっ、アタイの名前を呼んでくれるなんて……結婚？　これ、もう結婚みたいなものと考えても問題ねぇか？」

「大有りだ、この歴史的馬鹿者が。全く……頭が痛くなってきた」

「だったら、とっとと死ね。アタイが殺してやってもいいぞ」

「やれるものならやってみろ。女神の祝福を持つ我を殺せるものならな」

「おーい……話を戻すぞ」

　一々、睨み合う2人をスルーして、俺は本題を切り出す。

「アスカ。俺が【吸精の魔女】を倒したのは、単純に強い奴を倒して知名度を上げたかったからだ。でもだからって、別に【八神使】になるつもりはない。世界の平和の為に戦うなんて、俺のガラじゃないし」

「リュートは特殊な事情でレベルを上げられない。ゆえにこうして、戦果を上げる事でしか己の強さを証明出来ずに困っていたんだ」

「……ふぅーん？　なるほどな」

　俺とカルチュアの説明を受けて納得したのか、アスカは小さく頷く。

　それから、俺の方を見て……おずおずと自らも話し始める。

「そんな事情も知らず、絡んじまって悪かったな。アタイらにとって、どうしても【八神使】の称号は大切なものだからさ」

「何か理由があるのか？」

「いや、特に人に話すような内容でもねぇんだけどさ……」

「アスカとレイはこの大陸全土に、多くの孤児院を運営しているんだ。その運営費に【八神使】の報酬の大半を注ぎ込んでいるのだろう」

「っ！？　カルチュア！！」

「それに【八神使】の名のもとに、世界中の孤児院は保護されている。どの国も孤児院の設立を拒めないし、野党や山賊も報復を恐れて襲撃するような真似はしない」

「へぇ……世界中の孤児達が、安心して暮らせる環境ってわけか」

　なるほどな。それで少し納得できた。

　いきなり城を襲撃してくるような相手なのに、カルチュアは本気でアイギス兄妹を排除しようとしなかった理由はこれか。

「アスカ、お前って口は悪いけど良い奴なんだな」

「お、おい！　ダーリン！　いきなりプロポーズだなんて、照れるじゃねぇか！」

「え」

「……でも、ロリコンだからって孤児院のガキ共には手を出すなよ？　ダーリンの欲望はぜ、ぜぜ、全部！　アタイが受け止めてやっからよぉ……♡」

「ええー」

　ちょっとでも好意的な発言をすると、告白と受け止められてしまうらしい。

　うーん、これは面倒な。

「ねぇ、カルチュア。いくら良い奴でも、こんな犯罪者はぶっ殺した方が世界の為じゃない？　お願いだから、いますぐアタシ達にコイツを殺させて」

　俺に対する言動が許せないのか、ルディスが目を血張らせながらキレている。

　ルディスちゃんの目こわっ……！

「八神使である限り、世界中でどのような犯罪を行おうとも認可される。ただし、あまりに素行不良である者は定期的に行われる会議……【審判の門】にて、資格を剥奪されかねないが」

「チッ……だったら、仕留めるのはまだ先ね」

「言うじゃねぇか、乳デカ黒髪斧小娘ぇっ！！」

　乳デカ黒髪斧小娘とかいうパワーワード。

　いや、本当にそのまんまなんだけど。

「自分の立場を守る為に、神器を失っている我を襲撃しに来るのは賢い選択だ。しかし、一つ気になる事がるのだが」

「ああん？　なんだよ、カルチュア」

「我が【吸精の魔女】の討伐を担当していたように、貴様とレイも別の【脅威】の討伐を任されていたはずだ」

「おうよ。なんだっけ……【星を見つめる者】とかいう、化け物を倒せって命令を受けていたけど」

「……貴様、その【脅威】はもう討伐したのか？」

「いや、てめぇを殺すのを優先しようと思ってさ。まだ仕留めてねぇ」

「「「は？」」」

「大丈夫だって。何かあったらすぐに対処出来るように、【星を見つめる者】の種子はこの国のすぐ近くに持ってきて……」

　アスカがそう呟いた瞬間。

　ゴゴゴゴゴッと、巨大な地響きが発生する。

「な、なんだ！？」

「この揺れは……！？」

「あー……やっべ。そういえば、復活の期限って今日だっけ」

　瞬間。何か不気味な気配を感じ取り、俺達は一斉に空を見上げる。

　すると、青々としていたはずの空が赤く染まり……バキバキと歪が刻まれていく。

「！！」

　ギョロッ。

　開かれた歪の中から、巨大すぎる瞳が現れる。

　それはまさしく、箱庭を見つめる観測者のような瞳――

「貴様ぁっ！！　我の国に【脅威】を持ち込むとは！！！」

「ハハハハハハッ！　やっちまったぜ！」

「あぁ！？　貴ッ様ァ……！！　なにわろてんねんっ！？」

「お、落ち着けカルチュア！！　口調がおかしくなってるぞ！！」

　アスカの首根っこを掴み、ぶんぶんと揺らすカルチュアを取り押さえる。

　今は仲間割れしている場合ではない。

「カルチュア、ここは俺とルディスで……」

「まぁ待てよ、ダーリン。心配しなくても、ここはアタイとクソ兄貴でなんとかすっから」

　そう言うと、アスカは足元のレイを蹴り上げる。

「おら、仕事だぞ」

「あひっ！？　あれ？　僕は何を……って！？　なんだよ、あの目ぇぇぇ！！」

「アタイらの獲物だよ！！　ほら、さっさと仕留めるぞ！！」

　言うが早いか、アスカとレイは駆け出していく。

　果たして本当に、彼女達に任せておいて大丈夫なのだろうか。