えっちなゲームのヒロインちゃんと日曜朝ヒーローさん、とポンコツ女神様、とD○siteを極めたオタク君
オドマン★コマ / ルシエド
絶望的エロゲ世界を救え! 日曜朝ヒーロー! 気弱女神! エロゲオタク!
目覚めた時、
「え!? 何ここ!? どこここ!?」
神の世界ですよ。
あ、間違えた。こほん。水明の前に広がるのは神々しい白亜の世界と、そこに佇む絶世の美少女……というほどではないですが、まあそこそこ、たぶんそこそこ以上に可愛い女の子がいた。
少女は薄い水色に染まった水を、金色の器に満たした時に見えるような金髪に、水明より頭二つほど低い身長をしていた。
体格は細身で、胸はもうちょっと女性らしい体付きであったほうがいいなというくらいの薄さ。
でも未来にはきっと胸も手に入ります。
未来に爆乳になります。
バック・ニュウ・ザ・フューチャーです。
あ、神々しさ。
私にも少しは神々しさがありま……その少女には確かな神々しさがあった。
水明は己の頭の中に響く"世界の声"にも思える文の羅列を、声であると認識し、それが目の前の少女の口の動きと連動していることに気が付いた。
「なんだこれ……頭の中に声が聞こえる……? もしかして俺の目の前にいる君が、この声を俺に届けてるのか?」
あ、そうです。
「そうか。君はそこそこじゃないさ、すごく可愛いよ。どうか自信を持ってほしい。俺はこういうことではお世辞を言わないから」
あ、ありがとうございます……じゃなくて。ううん。
そう、あなたは、かの世界から私の世界に召喚されたのです!
あ、また間違えちゃった。
ここは私の世界じゃなくて、私が臨時管理状態にある世界の上に存在してる、管理用の神の世界です。
ここから管理対象の世界に干渉する、釣り用の桟橋みたいなところです。
あ、この響く声はあなたにしか聞こえない声なのですが、私の実況解説みたいなものですね。
世界の文章化?
と言うと正確にはまた違うんですけど、そういう感じです。
あ、それと……ああ、うう、ごめんなさい、喋る度に最初に『あ』って言っちゃって。癖なんです、治そうとしてるんです、許してください……
「気にしないで。ゆっくり話せばいいよ。君が一番話しやすいようにすればいいさ」
ありがとうございます。
では気を取り直して。
紫山水明は現実と空想の境界線の創作、日曜朝の特撮番組『ファンタスティックV』の主要登場人物であり、絶大な人気と不動の支持を持つヒーローだった。
そんな彼は世界を救い、世界中の人を助ける旅に出たところであった。
つまりところ、最終回の後である。
しかし眠りにつくと景色は一変。
そこには不思議な白い世界と、
「白鷲の女神はまだ名乗ってなかったと思うけど……」
……あ、ああっ。
あ、す、すみません。
あ、ええと、続けます。
そこは、簡潔に言えば"18歳未満が遊べないゲームの世界"を管理するため、世界の上に構築された神の世界。
そう、彼は女神の手によって、滅びの運命がほぼ確定してしまった世界を救うべく、この世界に召喚されたのだ。
特撮の世界、ゲームの世界、そうでない世界の『世界格』の上下など、女神がついているか居ないか程度で用意にひっくり返るものである。
紫山水明と言えば、大人気特撮番組『天空戦隊ファンタスティックV』の初期メンバー、ファンタスティックバイオレットの変身者だ。
ファンタスティックVキャラの人気第一位(女神調べ)。
ファンタスティックVキャラの女性人気第一位(女神調べ)。
道端で子供に握手を求められても快く優しい笑顔で応えてくれる(女神談)役者の人格のレベルの高さに、アクションのレベルの高さ、本編での何気ない言葉の格好良さが特徴である。
「ん? ああ、あの時の握手会に来てくれてた子かこの子……転んだ男の子を慰めてた子だよね。優しい子だと思ったから、よく憶えてるよ」
い、いえっ!
こほん。
紫山は既に宇宙の存亡を懸けた戦いに勝ち世界を救ったヒーローだ。
その実績に疑いはない。
危機に瀕している世界はいわゆる"エロゲー"と呼ばれる世界で、紫山の世界は"特撮作品"と呼ばれる世界。
勝手は違うだろうが、彼はヒーローだ。
女神は全幅の信頼をもって彼を召喚した。
彼ならば救ってくれるかもしれないと、一縷の望みを託して。
彼一人を喚ぶために、女神は今の自分の力から捻出できるエネルギーをほとんど使い切ってしまったが、彼が一人でも多くの困難を乗り越えて来たことを、女神は知っている。
第42話の彼を見れば、彼が新たな世界を平然と救うことに誰もが疑いを持たないだろう。42話は視聴率も高かった。
なので……ええと? なんだっけなぁあの読み難しい漢字……そうそう、
「君の話しやすい方法で説明してくれればいいよ。分からなかったら聞き直すから」
あ、ありがとうございます。
すみません、すみません、変に気を使わせてしまって。
「なんだかこの腰の低さ妹を思い出すなぁ……というかまた俺をTVや映画で認知してた人が俺を召喚したのか……春恒例のでっかい戦いでしか見たことなかったけど、よくあるもんなんだねえ」
あ、その、どうしてもお忙しいようでしたら、紫山さんの世界に送り帰すこともできますが……?
「気にしないでくれ。俺にできることで人が救われるなら、喜んでそうするさ」
ありがとうございます。
本当にありがとうございます。
「世界を救う。人を守る。俺からしたらいつものことだ。小難しいことを頼まれなくてほっとしたよ」
はわ……推せる……じゃなかった。
すみません、世界をお願いします。
「俺はどうすればいいのかな」
……とにかく、世界を救っていただければ……いいんでしょうか?
「……。うん、分かった。頑張るよ」
あまりにも曖昧な説明をする女神に対し、紫山は苦笑いで女神に気を使っていた。
少女の女神はとても申し訳無さそうな顔をする。
顔から火が出そうなほどに真っ赤だ。
神らしくもなく、彼の優しさに甘えて俯いている。
この女神は無力であり無知である。
役に立ちそうなことを何も教えることができない。
神の身の上でありながら彼を頼った……いや、彼に救いを求めた女神は、彼に世界を救ってもらいたいと願うことはできても、彼を導くこともできないのだ。
だから。
"あなたを信じる"としか、言えない。
こんな情けない女神は、きっと他にいない。
「……そっか。ああ、そうだ。じゃあまず最初に、君の名前を教えてくれるかな」
名前、ですか。
「俺は紫山水明。ま、それは知ってるか。君を助けるなら、君の名前を知っておきたいんだ」
女神アルナと、そう呼ばれています。
『アルナスル・アルタイル』……それが、私の神としての名前です。
「アルナ様とアルナちゃん、どっちがいいかな」
アルナちゃんでお願いします!
ヒーローショーで握手を求めて来た子供を呼ぶ感じで!
可愛がる感じで!
ちょっと甘めに!
私の目を見て!
「え、あ、ああ、うん。よろしくね、アルナちゃん」
きゃー!
私のスター・オブ・ザ・スターズ・オブ・ザ・スターズ様!
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