第14話 魔力が使えるこの世界で

 この世の中は、魔術を持つものがほとんである。


 その大なり小なりあるものの、成長する段階でそれぞれがそれぞれの能力を習得していることを学んでいき、その精度を上げることに注力する。


 そこで最も優れた能力を持つ者たちが魔術師の道に進み、国の治安を守ってきてくれている。


 魔王が復活したと言われる今となっては特にそうだ。


 天才型と言われる生まれ持ってにして高い魔術を持ち合わせている人もいれば、突然目覚めるという人もいる。


 ほとんどの人は日常生活にほんの少しだけ役立ちそうな魔術が使える程度なのであるが、暮らしていくには便利だと思う。


 ロジオンは天才型に近いのではないかと思える。


 もちろん、彼の努力なくしてあそこまでの魔術が使えこなせるようになったとは思わないけど、普通の人よりは元からの基準値スタートラインが高いはずだ。


 それに比べてわたしは、魔術らしい魔術を使うことさえできない。


 脇役だから、と思いがちだけど、(しつれいながら)まわりの脇役たちだって使えているのに、わたしだけ何かこうロジオンの言うような体内から湧き上がるほどの力を感じることがないのだ。


 これが物語なら、ある日突然チートな魔術がわたしに目覚めて物語を一気に大革命しちゃうのだろうけど、その未来は期待できない。


「はぁ……」


 わたしにもあともう少し魔術という存在が使えれば、もっと生きやすいだろうのに。


 いつも思う。


 わたしは容量も悪い上に魔術もほとんど使えないから人よりもすべての動作において時間をかけている。


 もっと魔術があれば、執筆時間をもう少し増やすことだって叶うだろうのに。


『君の魔術はレディ・カモミールであることだよ』


 自分は無能だと嘆くたび、ロジオンがそう言ってくれる。


 でも、そんなレディ・カモミールにさえなる時間がないのなら、わたしには魔術なんて使えないも同然だ。


 本当に理不尽だわ、と小さく憤慨しながら、わたしは今日一日を終わらせるべく、深呼吸をして、瞳を閉じた。

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