ミロアたちが校舎の中に入っていくと、すぐに好奇の目が集中した。その場にいた生徒たちがすぐにミロアとオルフェに反応したのだ。それと同時にヒソヒソと囁き交わす声が聞こえてくる。

「……予想通りというか、視線がすごいわね。ヒソヒソ声も耳に入るし……」

「まあ、殿下がああなったんだ。しょうがないかもしれないが、露骨すぎるな……」

多くの生徒がミロアの事がよく分からないようだが、分かる者には分かるらしく、ミロアのことを「綺麗になった」とか「別人のようになった」とか言い出す声も聞こえてくる。

「綺麗になった……つまり、嘗ての私はそうでもなかったわけね」

「いや、そんなことはないぞ。前の感じでも、」

「前の私は本当に黒歴史ものだったから、それ以上は言わないで」

「そ、そうか……」

以前の自分、それはガンマの婚約者だった頃であり、今とは全く違う痛い姿のときのことだ。その過去を思い出して顔を引きつるミロアだが、すぐに真剣な表情に変わる。

「でも、あんな過去とは決別したんだって私自身が見せつけるいい機会になるわ。これからの私を見せつけて学園の皆をもっと驚かせてやるんだから」

「そうだな、その意気だ！」

周りの好奇の目、それを上手く利用して周囲の印象を変える。それもまた予想通りだった。

◇

教室に入っても周りの戸惑う様子は変わらない。特に男子生徒の呆れるような勝手な発言が多くてミロアは辟易しそうだった。中には邪推する言葉も多かったが、教室に教師が入ってくるとすぐに静かになった。

（チャンスだわ！）

「先生！　私から皆に伝えたいことがあります！　お時間をいただけないでしょうか！？」

「ああ、いいですよ。それなら学園長から聞いているので」

授業を開始する直前に、教師の許可をもらったミロアは教壇に立って、教室の生徒たちに向かって宣言した。

「皆様、おはようございます。長く休学してご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。深く心配をおかけしましたが、私は休学している間に心を入れ替えたので、皆様とともに有意義な学園生活を送りたいと思っています。未熟者ですが、どうかこれからも宜しくおねがいします」

宣言した後に深く頭を下げるミロア。その宣言を聞いて、その姿勢を見せられた多くの生徒が呆然と固まった。誰もが以前のミロアじゃなくなってると思わずにはいられなかったからだ。

嘗てのミロアはガンマ以外はどうでもいいという感じだったため、クラスメイト全員に向かって頭を下げるなんてするはずがない。そういう女性だと知れ渡っていたため、今そこにいるミロアはどういうことなのか頭が追いつかないのだ。

二人の伯爵令嬢が拍手しなければ。

（レイダ様、アギア様！）

「ミロア様、私達は今の貴女を歓迎します」

「一緒に学園生活を楽しく過ごしましょう！」

「はい、ありがとうございます！」

レイダとアギアの言葉をきっかけにして他の生徒達も拍手を捧げた。

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