第95話 娘思いの父親
事実だけを言うのだからちょうどいい。
「……お嬢様、たとえミーヤ・ウォームが学園に戻ってきても極力関わるべきではありません」
「え? まあ、それは分かるわ。彼女がそうなった遠因は私にも……なんて思われそうだし」
「それもありえますが……現時点ではミーヤ・ウォーム自身がお嬢様の害になる可能性は低いでしょう。ただ、彼女の父親のほうが問題になっているのです」
「え?」
「どうやら、彼女の父親である男爵……ドーリグ・ウォーム男爵が『学園の教師たちが原因で娘が体調不良になったんだ!』と言って学園側に訴えているようなのです。教師たちが真面目に生徒たちを見ていなかったせいで娘がつらい思いをしたのだと騒いでいるんです」
「それは……父親らしい行動でしょうね。でも、確かに問題ね。男爵の考え方次第でこっちに飛び火するかもしれないわ」
自分に飛び火するかもと口にするミロアだが、エイルが『問題になっている』と言った時点ですでに手遅れだと察していた。
「その通りです。男爵はお嬢様にも原因があると考えているようです。他にもガンマ殿下や側近の者達も同じだとも……。流石に表立って口にしているわけではありませんが、密かにお嬢様やガンマ殿下たちのことを探ろうとしている様子があると報告があります。ただ、男爵という地位なのでかなり慎重に行動しているため大したことはできていないようです」
「こっちは公爵で、向こうは王族関係者だからね。慎重にならざるを得ない……でも、こっちとしては探られるのにいい気はしないわね」
男爵とはいえ『ヒロイン』かもしれない女性の父親だ。何をするか分かったものではないと思うミロアは、前世の記憶を辿ってどう行動するか推測を始める。
(男爵がヒロインの父親だとすれば……ちょっと微妙な存在ね。ゲームでの登場はあまり例がないけど、投稿小説とかでは大抵が親バカが多いかしら? う~ん、これは現実で調べないとわからないわね)
「男爵はどんな人なのかしら?」
「貴族としては子煩悩で穏やかな人物のようです。娘を溺愛しているご様子で、娘のためなら何でもすると思われます」
「つまり、私のお父様に似ているということね」
娘思いの父親。自身の父バーグのことを思い浮かべるミロアは何だか親近感を感じる。だが、そこでエイルが待ったをかける。
「だからといって、気を許していい理由にはなりませんよ。むしろ警戒するべきです」
「え? それはそうだけど……」
エイルは真剣な真顔でミロアを見つめる。ここから特に大事な話になるからだ。学園の話ではなく、ミロアに貴族として大切なことを知ってもらうために。
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