第63話 義母と義妹
義母イマジーナ。ミロアの記憶よりも若干老けているように見えるが、よく言えばより大人びいて清楚になったとも言える。そして、控えめだが美しい女性のままだった。今のミロアのように慎ましい服装だが、大人の貫禄とも言うべきかミロアには神々しく見えていた。薄い赤髪を肩まで伸ばし、人形のように整った顔立ちの美貌、それでいて慎ましい服をまとう姿に畏敬の念を抱かされたのだ。
(まるで、ファンタジー世界の清楚な聖女様って感じね。下手をすれば女神の一人……流石に例え方が大げさすぎるわね)
その隣にいるのは義妹スマーシュ。ミロアは赤ん坊だった頃のスマーシュしか見たことがなかったため、今の姿を想像もできなかったのだが、イマジーナの美貌を考えると大体可愛いだろうと予想していた。そして、実際今のスマーシュを見れば予想通り可愛らしくて仕方がなかった。大きな目に黒い瞳、子供特有のあどけない小顔、年相応の体つき、ツインテール、まるで小さな天使を彷彿させる。それがミロアが抱いた第一印象だった。
(なんて可愛い……まるで天使そのものね。こういう子が大きくなったら本当に乙女ゲームのヒロインに……いや、考えすぎか。悪役令嬢かもしれない私の妹なんだし……いやむしろ、だからこそ……? いやいや、こんなにちっちゃいしありえないわね。私の敵になるなんて展開は無さそう……可愛いもの)
義母と義妹のことを前世の知識を用いて、自分にわかりやすく例えるミロア。ただ、そんなふうに例えるのは少しでも緊張を和らげるためだった。何しろ、義母と義妹はミロアの我儘のせいでずっと別の屋敷で暮らしていたのだ。いくらバーグがほぼ毎日顔を出して時には泊まっていたとしても、ミロアに思うところがないはずがない。
(……まさか、お父様がサプライズで二人と私を会わせるなんて予想できなかった。っていうか、私達をサプライズ感覚で会わせるなんてお父様も配慮がないわ!)
「み、ミロア様……」
「! はい!」
沈黙を破ったのは義母イマジーナの方からだった。ミロアに少しぎこちない笑みを向けながら、最初の一声を口にする。
「ほ、本日は私達をお招きいただき、ありがとうございます……!」
「……え?」
(お招き? しかも私に言うの?)
深々と頭を下げるイマジーナだったが、このやり取りで相当緊張しているものだとミロアは察した。ぎこちない笑みとミロアに頭を下げる様子もそうだが、それ以上に口に出した台詞が不味かった。
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