第54話 学園の状況
ただ、注目を集めているのはガンマだけではない。その周りの者達にも変化があったのだ。
「ガンマ殿下の側近は一人だけ……マーク・アモウのみ。彼も質問攻めにあってオルフェと関わる暇も無い。……更に、元側近だったローイ・ミュドもまた決して少なくない視線を浴びていると。……中々見ているわね」
問題を起こしたグロン・ギンベスはガンマの側近。当然、同じ側近だった者達にも関与を疑われて当然だ。すでに辞めてしまった者にも視線が集まるのは学園に通う生徒が貴族の子供であるからだろう。
「たとえ子供でも貴族である以上、情報が早く回って噂になるのね。当然か。貴族の学園は社交界とそう変わらない。むしろ、子供であるゆえに感情的に動く者が多いという意味では大人の世界とは違う危険と隣り合わせだとも言えるわね」
「え、お嬢様?」
「こんなことが起こってしまった以上、もうガンマ殿下が王太子に戻るのは不可能。私に近づく時も気をつけるしかないでしょうね。下手をすれば更に立場が悪くなるかもしれないんだから学園に復帰した時はガンマ殿下のことは適当にあしらってもいいかも……?」
「お嬢様……そういうことはくれぐれも人前で口に出さないでくださいね。私だからいいのですけど、王族を適当にあしらうなんて……」
「っ! そうね、流石に危ないわね……」
エイルのことを信頼できるお姉さんのように思っているだけに、気軽に前世の知識を交えた考察を口に出すミロア。だが、確かに口に出していいような内容でもないと気づいてしまうと学園での会話にも気をつけなくてはならないと考える。
(危なかった。確かに王族を適当にあしらうとか口にするのは不味い。いくらなんでも本音をホイホイ口に出すのは馬鹿のやることだわ。貴族というのは本音を腹の中に隠して建前やお世辞、明確な証言を武器にするものね)
「でも、考えるのを止めてはいけないわ。『彼女』も殿下の関係者、状況の変化にどう出るかわからないのだから」
「男爵令嬢ミーヤ・ウォームですね。お嬢様と殿下の婚約が破棄されたきっかけになった……」
「ええ、彼女もこの事件のことで殿下のことを見限ったのかしら?」
手紙には、ミーヤ・ウォームの近況もあった。無論、彼女も状況的に多くの視線と邪推に晒されている最中であり、酷い時は嫌がらせも受けているという。 しかも、男爵令嬢という身分から露骨に嫌がらせをされることもあるらしい。
「そんな状況下で殿下達に助けを求める素振りがない……他の誰かに縋る様子も見えず……これだけのことがあれば対人関係を考え直すのも無理ないか」
ミロアの中で『ヒロイン』の立場にいたミーヤ・ウォーム。彼女もまたミロアが警戒している中の一人だった。
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