第35話 幼馴染との会話

「久しぶりねオルフェ。会いに来てくれて嬉しいわ」


「っ!?」



ミロアがニッコリと笑顔を見せると、それだけでオルフェは驚いた。そして気づかぬうちに少し長くミロアに見惚れていたことに気づいて慌てて冷静に務める。



「あ、ああ、久しぶりだなミロア。突然訪問してきてすまない。体の方は大丈夫なのか?」


「え? ええ。もう大丈夫よ思ったよりも早く治ったから」



体の方は大丈夫、と聞かれてミロアは首を傾げそうになる。学園を休学している理由を知っているかのような口ぶりだからだ。



(何で体のこととか聞くの? 私が飛び降りたことを知ったのかしら?)」


「そうなのか? 学園でガンマ殿下に突き飛ばされたと聞いたんだぞ。それがもとで体を悪くしたんじゃないのか?」


(嗚呼、そういうことか。少し驚きそうだったわ。っていうか、突き飛ばしたことが要因で休んでいるということになっているの?)



確かにミロアはガンマに突き飛ばされている。そういう意味では、体のことを心配されても不思議ではない。



「まあ、私の体の方は大丈夫よ。問題なのは私の心の方なんだけどね………」


「心………」


(実際は飛び降りたから休んでるとは言えないわね。ここは精神面ってことで誤魔化さないと。ある意味嘘じゃないしね)



問題があるとすれば心。それは嘘じゃないとミロアは思っている。何しろ前世の記憶があって、その要因が飛び降りつ直前に見た走馬灯に拠るものなのだ。その前世の記憶が今のミロアの精神に多大な影響を与えていると言ってもいい。心に問題を抱えていると言ってもいいはずなのだ。



(ただ、前世の記憶は私に極めていい影響を与えてくれているから決して悪いものじゃない。正直、幸運だと言ってもいいくらい。それがなかったら私は本当に問題児……悪役令嬢ね)



悪役令嬢。その言葉を頭で思い返してミロアは嘗ての自分を思い出す。愚直なまでに婚約者の男を追いかけ回す愚かな自分、それがどれだけ滑稽なことだったのかを。



「そうだよな。あのガンマ殿下がミロアを差し置いて男爵令嬢をそばに置くんだし、いい気はしないよな。………だからなのか?」


「え?」


「殿下があんなのだから、王家と公爵家は二人の婚約を解消するつもりなのか?」


「ッ!?」



ミロアは驚いた……ふりをした。思わず、という感じで身を乗り出してオルフェから情報を迫る。



「オルフェ、その話をどこで聞いたの!?(どうなる!?)」


「どこって、学園で広まってるぞ? 公爵が直々に王宮を訪ねてミロアとガンマ殿下の婚約を解消するかもしれないって………ミロアがそれくらい驚くってことは事実ってことなのか?」


(学園で広まっている……これは都合がいい状況ね)


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