第34話 幼馴染の姿
ミロアが目覚めてから十六日目、ミロアが自室で勉学に励んでいたときだった。
「お嬢様、侯爵令息殿がお見えになりました」
「あら、もうオルフェが来たの?」
「はい」
入ってきた侍女のエイルを合図に、ミロアは余裕を持って迎える準備を始める。勿論、幼い頃に仲良くしていた幼馴染との楽しい会話に臨むためだ。
(久しぶり……というわけではないけど幼馴染の再会か。どう転ぶかは腹の探り合いから始めようかしらね)
◇
レトスノム公爵の屋敷に、銀髪で灰色の眼をした青年が迎えられた。この青年はオルフェ・イーノック、ミロアの幼馴染のイーノック侯爵家の令息だ。どこぞの王子とは違って事前に約束をしているため勝手な訪問ではない。そのためか屋敷の使用人たちは笑顔でオルフェを迎える。当然、彼の目的であった彼女もそうだ。
(……信じられない。これが今のミロアなのか!?)
オルフェが屋敷で目にしたミロアは、学園でよく知られる姿とは大きく異なっていた。早い話、オルフェはガンマと同じく驚いたのだ。表面上でもだいぶ見違えたと素直にそう思わせるほど。
(腰まで長かった髪を短くして、派手だった化粧もドレスも慎ましく……この方が以前よりもずっと美しい……大人びたというか、清楚になったというような……)
そして、今のミロアに見惚れる。そこはガンマと同じだが、自覚があるかないかでは違っていた。オルフェは後になって今のミロアに見惚れていることを自覚したのだ。
(……あの殿下に対する気持ちが本当に変わったのかもしれない……ミロアを表面だけでここまで……殿下は『今の』ミロアに会ったんだよな? それなのに、どうして話を台無しにするようなことをしたんだ? ミロアの美しさはどこぞの男爵令嬢などと比べるまでもないのに)
オルフェは事前情報があった。ミロアが学園でガンマに暴力を振るわれたこと、暴言を吐かれたこと。そして、この屋敷に突然やってきてミロアに大変な迷惑をかけたこと。それらは、ガンマの側近から入手した情報であり、オルフェ自身も調べてみて分かったことだった。
(こんなことなら俺も早く調べてみればよかったな。手紙を出すのが遅すぎた。もっと早く行動に移していればミロアと……)
オルフェは自分の行動力の無さを悔やんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます