第30.4話 悪いのは大人たち
(王太子視点)
だけど、父上の顔は変わらなかった。実の息子である僕に向けるにしてはあまりにも冷たい眼差しのままだった。
「ふん、それがお前の言い分か。確かにミロア嬢はお前に対する恋心ゆえに随分入れ込んでいたと思うが、それをうまく利用せよと言い聞かせてきたはずだぞ?」
「ま、またそれですか。上手く手綱を握れってことでしょう。あんなのを好きになれというのですか!」
「無理に好きになれと言ってもいない。お前に対する愛情があれば言うことは何でも聞くだろうから王家に都合のいい女にもできるだろうということだ」
それは分かる。確かに僕のことが好きなら何でも言うことを聞くかもとは思ったけど、それはミロアと向き合えということなんだろう。それは嫌だったんだ。ミロアは僕の好みのタイプじゃないし、僕自身は一切愛なんて感じないんだ。それなのに、愛情がないのに向き合えだなんて……
「大方、政略結婚に反発して彼女と向き合おうとしなかったんだろう。いつまで子供でいるつもりなのだ。そんなんだから馬鹿のままなんだ」
「…………」
政略結婚に反発……それは否定できない。確かに子供の頃に親の都合で王家と公爵家のパイプ役を押し付けられたことに不満をいだいた。いや、不満というよりすごく怒っていたんだ。
子供の頃の僕は、運命の女性と出会って愛のある結婚を夢見ていたんだ。政略結婚は僕の夢とは程遠い。受け入れられなかったんだ。
でも、仕方ないじゃないか。子供でもいいじゃないか。どうして王子なのに僕の思い通りにならないんだよ!
「ぼ、僕が馬鹿なのは父上と母上と公爵のせいじゃないか! 子供の頃に勝手に政略結婚を決めたりするから、僕は真実の愛を欲しくなったんだ! ミロアみたいなやつに構ってられるもんか!」
そうだよ、本当に悪いのは大人たちじゃないか! 父上と母上が僕が子供の頃に婚約者を決めたりするから……!
「そうだな。私達にも非があるのだろうな」
「…………え?」
父上に、僕の思いが通じた?
「お前とミロア嬢の関係に進展がないことは分かっていた。学園で最終的な判断を決めることとなったのだが、お前がここまでやらかした以上私も決心がついた。お前を廃嫡する。次の王太子はアナーザで決まりだ」
「んなっ!? そんな……!」
「当然だろう。ここまで話がこじれたのだ。おそらく公爵は婚約破棄してくるであろうな。どちらに非があるか馬鹿なお前でも分かるだろう。覚悟するんだな」
父上はそれだけ言って話を終わりにした。
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