第30.2話 親を巻き込む

(王太子視点)



僕は大急ぎで王宮に戻った。ミロアのことを何とかしようと思ったのに状況が悪くなってしまった。だからこそ、すぐに王宮に戻って側近たちを呼んで対策を考えようとしたのに……



「ガンマ殿下、国王陛下がお呼びです。至急参上してください」



王宮に戻った直後、すぐに父上に呼び出されることになった。くそ、こっちはそれどころじゃないのに。無視することもできないから仕方なく急いで参上してやった。



「ガンマよ。よくもやってくれたな……」


「ち、父上?」



底冷えるような声で国王である父が声を出す。こういう時は相当怒っている証拠だ。メイドの件の時から嫌でも分かってしまうのだが、このタイミングで何を怒っているんだろう?



「ぼ、僕が何をしたのでしょうか?」


「とぼけるな! 今さっき、レトスノム公爵から苦情の知らせが入ったのだぞ! 貴様が勝手にレトスノム家の屋敷に約束もなく訪問した挙げ句、ミロア嬢に婚約解消を撤回させようとしたことをな!」


「な、なっ、え!?」


「しかも、その際にミロア嬢に殴りかかろうとしたともあったぞ! 一体どういうことなんだ!」



な、なんてことだ! ミロアの奴め、本当に父上に報告しやがった! 



「ち、父上、落ち着いてください!」


「これが落ち着いてられるか! 我が王家に泥を塗るようなことをするとは何事だ!」


「も、申し訳ありません……」



怒りの形相で僕を叱りつける父……っていうか何で父上が知っているんだ! いくらなんでも伝わるのが早すぎるだろう! 本当にミロアからの報告なのか!?



「ち、父上、それはミロアからの報告なのですか?」


「ミロア嬢の話を聞いたレトスノム公爵からのものだ! 最初は目を丸くしたものだが、今のお前の反応で事実であると確信した。まさか、屋敷に行くとは思ってもいなかった……お前がこんな馬鹿だったとは本当に予想外だった!」



……な、何だよそれ。ミロアはまたしても父親である公爵の力を借りて、父上に告げ口しやがったのか。そして、僕の父上に伝えて僕の立場を悪くしたということか。親を巻き込むなんてなんて卑怯な女なんだ!



「お前の行動力を甘く見ていた私の落ち度だ。これでもう婚約解消とお前の廃嫡は決定したようなもの。王太子もアナーザに変えることとしよう」


「そんな! 待ってください! これはその、ミロアの方に問題があったんです! 殴りかかろうというのも、ミロアの勘違いか何かで――」


「逆上して暴力的になっただけだろう。報告書にはお前達の口にした言葉まで細かく記録されていたぞ。お前の口にしそうなこともな」


「…………」



は? なんだよそれ? そんなのまでいつの間に記録していたんだよ!? 

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