第22.4話 婚約者は豹変した

(王太子視点)



――学園ではそんなふうに思っていたから堂々と公爵家の屋敷に訪問したというのに、結果は散々なことになってしまった。信じられぬことに、ミロアは以前とは姿形どころか中身まで変わってしまったようだった……。



そもそも、あのミロアは何だ! あの血のように赤い長い髪をバッサリ切ったり、派手派手しい化粧とドレスを地味な仕様に変えた姿はもう別人じゃないか! 声を聞かなきゃミロアだと分からなかったぞ!



外見以上に驚くことに、僕に対する言葉遣いや態度もおかしい! あんなに僕を恋い慕うようなことを口にしてきたくせに、まるで赤の他人に接するような態度は何だ! あんなに熱っぽい視線を向けてきたくせに、冷たい眼差しを向けるとはどういうことなんだ! こんなの僕の知るミロアじゃない!



今までのミロアとは全くの別人だと言ってもいいぞあれは! 艶のある赤い髪を肩口に揃え、地味な化粧とドレス、中身まで落ち着き払う感じは以前とは正反対じゃないか! び、美人でスタイルは変わっていないけどな。……今のほうが美人に見えるのは気の所為ではないかも、って思ってる場合じゃない!



……まさか、僕に突き飛ばされたショックでミロアは頭がおかしくなったのか!? それであんなふうに豹変してしまったというのか!? 



ま、マズイぞ! どう見ても今のミロアに僕の気を引くような様子が見えない! 本気で婚約解消を狙っているんじゃないのか!? あのミロアがあんなに豹変するなんて!



それに僕もとんでもないことをしてしまった! ミロアの態度に切れて思わずカッとなってしまった! 未遂とはいえ、暴力を振るおうとしてしまったのは本当にマズイ! こんなことを王宮に報告されたら僕の立場が本当に無くなってしまう! こんなことになるなんて思わなかった!



どうしよう……このままだと、僕の王太子の座が、次期国王の座が……! どうすればいいんだ……?



一人で馬車の中で考えても答えが出ない。こんなことを相談できるのは、側近の二人と第二王妃になって貰う予定だったミーヤしかいない。早く学園に戻りたい……。

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