第22.3話 この目で見て確かめる

(王太子視点)



「マークありがとう。お前に言ってよかったよ。危うくミロアのくだらない作戦に引っかかるところだった。お前が側近で本当に良かったぞ」


「全ては貴方のためですよ殿下」


「そのとおりだな、あははははは!」



得意げに苦笑するマークにつられて僕とグロンも笑う。今はこの三人だけだから大声で笑ってもいい。それだけ安心したのだからな。



「ところで殿下。ミロア嬢が学園を休む直前にミロア嬢と口論をなさったようですが、その時に何か面倒なことをなさっていないですよね?」


「え?」



め、面倒なこと? ミロアとはミーヤのことで口論になったのは事実だ。それが面倒なことに入るか……? ん、待てよ……



『いい加減にしろ! 僕に付きまとうなミロア! 本当に頭がおかしくなりそうなんだよ!』



………あ………突き飛ばしてる……これってヤバいんじゃ、十分面倒なことでは……?



「殿下?」


「い、いや、なんでもない。と、特に何もしてないぞ!」


「……そうですか」



思わず何もしていないって言ってしまったが、僕はマズイことをしてしまったんじゃないか? 側近の前だからつい見栄を張ってしまったが、あの公爵の耳に入っているのに僕はこんな時にまで見栄を張らなくても良かったじゃないか? 



まさか、ミロアは僕に突き飛ばされたことで婚約解消を望むほど心変わりしたのでは……? それにあの時はミロアに『お前を愛していない!』と思いっきり言ってやったし……。



しかし、マークが言ったように気を引きたいだけってこともありうる。うん、そうだ、そうに違いない。そもそも突き飛ばしたくらいで学園を何日も休むのはおかしいし……だが、もしも……。



「殿下、それでもまだ心配していますか?」


「えっ!? い、いや、それは……」


「何だよ。そんなに心配だってんならさ、殿下があの女の様子を見に行けばいいじゃねえか!」


「な、何?」



何いってんだこいつは? この僕にミロアのもとに訪ねろというのか? だが、しかし……。



「グロン、そこまでする必要はないでしょう。まあ、殿下がどうしても安心できないというのなら殿下が自らの目で見て確かめるというのが早いでしょうが……」



この目で見て確かめるか……。頭の悪いグロンの提案に乗っかるのは癪だが、この不安を払拭できるのならいいかもしれない。それにミロアには文句をたくさん言いたいしな。面倒なこと仕方がないが、あいつの屋敷に行ってやろうじゃないか。僕が両親に叱られた鬱憤をミロアで晴らしてやる!


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