第12話 語られる王太子
「王家からしたら息子の後ろ盾を失いたくないのだろう。いや、それ以上に我が家とのつながりを失いたくないのだろうな。お前と殿下との政略結婚の目的は元々そのためだったからな。しかし、あの王子にも困ったものだ。態度をコロコロ変えおって……」
「え? どういうことですか?」
ミロアが聞くと、バーグは王宮で会ったガンマの態度の酷さを語った。
「ガンマ殿下は王宮で私に会うなり、ミロアのことを罵倒したのだよ。追いかけ回されてうんざりするとか目障りで陰気だとか王太子妃にふさわしくないとか……もう聞くに耐えなかったよ。私の立場を分かっていないようだ」
「……それは(まあ、それは私の非だけど……)」
ガンマの言っていることは事実だ。確かにあの頃のミロアはガンマを付け回していたゆえに迷惑をかけたと思う。ただ、目障りなのは分かるが陰気だなどと思われるのは少しショックだった。
だが、流石にこの後語られるガンマの実態には驚いた。
「そのくせに、私が陛下に婚約解消を申し出れば慌てだして止めようとするし、ミロアを突き飛ばしたことを証言すれば顔を真っ青に変えて否定するのだ。挙げ句には、殿下が懇意にしている男爵令嬢の存在を出そうとしたら顔を真赤にして怒り狂いだしてもう見苦しいこと仕方がない。陛下と王妃も顔を真っ青にしておられたよ」
「そ、そうだったのですか……」
ミロアはバーグの口から聞いたガンマの変わりようにドン引きした。思っていた通りというかそれ以上にろくでもない男だったようだ。まさか、状況次第で態度を変えてくるとは流石にミロアも思っていなかった。
(まずいわね。思っていたよりもゲスな男だったのかも……。これは……)
「だから私も決心した。必ず殿下との婚約を解消させようとな。今回は駄目だったが、なんとしてでも解消できる機会を見つけてみせよう」
「ありがとうございますお父様。それでは私も復学したら婚約解消できるように頑張ります(学園でやらかしそうだしね)」
ミロアはバーグが諦めぬ姿勢を見せてくれたことが嬉しかった。だからこそ、父が諦めないうちに自分も頑張ると宣言した。ガンマの学園での行動次第で婚約解消どころか破棄できそうな隙がある可能性が高いからだ。
「頑張る? いや、殿下との婚約解消くらい私の方でなんとかするよ。ミロアは心配しなくてもいいのだよ」
「ですが、このまま何もしないというのはちょっと……」
「ミロア、今お前ができることは療養だ。あと三週間くらいで復学するんだから、そのときに向けて休み勉強していなさい。殿下に振り回されない生活を楽しみにしておくれ」
(振り回してきたのは私だけど、これ以上何も言えないわ……)
バーグは笑顔でそう言って、ミロアを自室に戻した。ミロアも複雑な心境で自室に戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます