第11話 結果報告
ミロアが目覚めてから十日目、体の痛みがなくなったのでミロアは庭に出て散歩をしていた。医師にも診てもらい、激しい運動でなければ特に問題はないと言われたのだ。
「本当に運がいいわ。あの時、庭の茂みがクッションになったわけね。まあ、少し肌を擦りむいちゃったけどね」
ミロアの言う『あの時』とは、窓から飛び降りた時だ。あの出来事がミロアの運命を変えたのだと言えるだろう。
「さて、お父様に婚約解消のことを頼んでから10日経つ。状況はどうなっているでしょうね?」
ミロアの父バーグは、レトスノム公爵として王家に対し直接娘の婚約を解消するために出向いたのだ。そして、今日その結果が分かるはずだ。
◇
父の書斎でミロアは、結果報告を聞いていた。予想通りでがっかりすることにもなった。
「王家は……婚約解消を望まないようだ」
「やはりそうですか……」
「些細なことで王家と公爵家で決めた婚約を解消するわけにはいかないなどと陛下はきっぱり仰せられた。婚約の重みは理解できるが、我が娘を突き飛ばしたことを些細などと……! 相当ガンマ殿下を庇いたいようだ。婚約者を無下にするような男などを……!」
父バーグは王家に対する怒りを感じているらしい。ミロアに報告している最中でもその怒りを隠せることはできていなかった。
「ガンマ殿下は何と言っていましたか?」
「婚約解消には反対のようだ。だが、どこか気まずい顔をしていたよ。私が王宮に来たのをきっかけにミロアにしたことが陛下と王妃に知られたのだから当然だな」
「それなのに婚約解消には反対ですか(馬鹿にしてるわね)」
ミロアも怒りを感じだす。これまでのことを考えれば、ガンマがミロアを愛していないのは明らかだ。前世でいう『ツンデレ』にも見えない。それなのに婚約そのものは解消したくないということは……自然と答えが出てくる。
(あの男は、私を都合のいい女にしたいということね……)
前世の知識の中には、愛してはいないが立場が都合がいいという理由で婚約してその裏で浮気をする王子という設定の物語があった。ミロアとの婚約解消をしないあたり、ガンマはそんな感じだろうと思う。実際、ガンマはミーヤという男爵令嬢に執心している。そのことを思い出したミロアのガンマに対する不快感が更に募った。
「証拠も他に証言もないから婚約続行だということで強引に話を決められてしまった。すまなかったミロア」
「いえ、私は気にしていないと言えば嘘になりますが、そこまで気を落とさなくても……」
ため息を吐くバーグを気遣うミロアだが、バーグは不甲斐なく感じていた。
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