黒百合屋敷事件
黒澤 澪
第零話 一輪の黒い百合
白く染まった雪を踏みしめる足元を見下ろしながら、
門の前に立ち、改めて屋敷全体を見れば豪邸と言えるほどの大きさだった。屋敷なだけあって、建物は大きいのは当然なのであろうが、私はそんなことよりも、この屋敷の雰囲気に見惚れていた。なんたって私は、大のオカルトマニアだからである。
鬱蒼とした病院だとか、誰も住んでいない呪われた家だとか、廃墟ビルだったりと色々な場所を探索したり、見たりするのが好きなのである。今回の屋敷に訪れた目的にも理由がある。最近、オカルト業界で噂となっている「
最初は私も行くのには戸惑ったが、色々な廃墟だったり心霊スポットを幾度となく訪れてきたので、今回ばかりは行かずにはいられなかった。そんなこんなで、「黒百合屋敷」に着いてしまったが、入り口の前まで来たものの、門がビクリともしないのだ。かなり年季が入っていて、錆びているのだろうか。ぐずぐずしていると日が暮れてしまうと思い、他に入り口はないかと辺りを見回していると、裏庭の方へ続く道があった。こんなにも簡単に入り口が見つかるとは思ってはいなかったものの、廃墟とは違って、なかなか前には進めないものだ。裏庭へ続く道はやがて屋敷に近づき、ドアが見えてきた。なんとか道を通り、ドアの前まで来て、ドアを開けようとしたが、これもまたびくともしない。うまく進めないものだと途方に暮れていると、庭の奥になにやら光るものが見えた。 斧 だ。一瞬希望は見えたもののいくらオカルト好きだからといってここまで物を破壊するような真似はできない。しかし、そんな正義感は一瞬にして消え、私はその斧を手に持ち、ドアの前で構えると勢いよく斧を振り下ろした。それと同時に、びくともしなかったドアも木の破片を吹き出しながら前に屋敷の中が見えた。自分がやったことに苦心したが、そんなことはさておき、中に入ることに成功した私はひとまず心を落ち着かせてから屋敷の中を探索することにした。
腕時計を見れば、夕方の三時半過ぎ。もうこんな時間かと思いながら私は、休憩を済ませ、早速屋敷の探索に移った。中は薄暗く、じめじめとしていて陰気臭い。歩くたびに、床からカビっぽい匂いが鼻について気持ち悪い。やがて、奥を進んでいくとリビングが見えてきた。外装とは違い、内装は床が所々抜けている以外は状態がきれいだった。中に入る前から思っていたが、洋風な屋敷なのだろうか、窓がステンドグラスだったり、シャンデリアだったり、絵画が飾ってあるなど、随分と洒落たものがある。アンティーク感があって私好みだが、少し不気味でもある。
最初にリビングを探索してみようと思い、書籍の中を探ったり、棚の上を見たりしたがこれといったものはなかった。少しがっかりしていたが、ある物に目が止まった。
「・・・黒い百合?」
私は乾燥した喉を震わせながら声に出してそう言った。
寒々とした中に一輪の黒い花。それは確かにあの例の儀式に使われた 黒百合であった______。
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