第2話 デートって何なんだろうな

 思い立ったが即行動。デートと表して来たのはカラオケ。


「フリータイムで」


 聖川が受付で次々注文していく。まあ、彼女の慰労会みたいた所もあるし良いだろう。

 美少女と二人でカラオケ。正直惹かれるものはある。その美少女が負のオーラ撒き散らしていなければ。


「なに歌うの」


 個室に入り、デンモクを操作し始めた聖川に聞く。


「COMPLEX」


 コンッ!!えぇ!?


「恋をとめないで」


 こいっ!!えぇ!?いや、定番だけど。それ自分の傷抉ってないか!?※COMPLEXとは90年代を風靡したロックバンド。名曲ばかりなので聴いたことある曲もあるかも。是非ご試聴あれ。

 俺の憂いなど知るよしもなくイントロが始まる。


「夜のデイトは危険すぎるからなんてー」


 いや、上手いけど。女性らしさを出しつつも重厚感ある声音が刺さるけども。


「土曜の夜さ連れ出してあげるー」


 いやいやいや。もう傷に塩塗ったくってんじゃん。そんでから抉ってるよ!?


「Don't Stop My Love恋をとめないでー」


 もう、見てらんねぇよ。お前マジなんなんだよ。


 見事最後まで歌いきった聖川の眼には涙が浮かんでいた。


「上手いね···」


「ありがと···」


 気分を変えよう。ここは俺が雰囲気をブチ壊すアニソンを。


「次いいよ」


「おう」


 選曲は“おジャ魔女カーニバル”

 陽気なイントロが始まる。


「どっきりどっきりDON!DON!」


 聖川は無表情だった。


「教科書みても書いてないけど」


 聖川はなおも無表情だった。


「大きな声でピリカピリララ」


 そして聖川は無表情だった。いや、ピエロかよ俺は。ふざんけんなよ。こちとらこの場面で歌う曲じゃねぇくらい分かってるわ!

 俺の魂の“おジャ魔女カーニバル”は聖川には響かなかった。


「思ったより上手いね」


「そりゃ、どーも」


 疲れた。肩を落としぐったりした。


「次何にすんの」


「THE BLUE HEARTS」


 ブルハ!?まさか、今度は·····


「ラブレター」


 もう駄目だ。コイツはもう駄目なんだ。※THE BLUE HEARTS90年代に風靡したロックバンド。リンダリンダやTRAINTRAINなどは今でもよく聴く名曲。是非ご試聴あれ。


「本当ならば今頃僕のベッドにはー」


「あなたがあなたがあなたがいてほしいー」


 聖川涙の絶唱。


「ああラブレター百分の一でもー」


「ああラブレター信じてほしいー」


 この室内のお通夜ムード。マジでどうしろと言うのだ。


「続けていいよ」


「ん。次はBOOWY」


 ※BOOWY80年代を風靡したロックバンド。マリオネットやNO NEW YORKなど数々の名曲を産み、アイドル系ロックバンドの基礎を築き上げた伝説的グループ。是非ご試聴あれ。


「CLOUDY HEART」


 うん。知ってた。なんで失恋系ばっか歌うのよ。もっとテンション上げてけよ。


「作り笑いが歪む長い月日が終わるー」


「胸に染みるのはイヤネこりゃ何ー」


「そうネ終わりは当たり前のように来るものだし」


「仕方ないぜはしゃいでたあの日にサラバ」


 終始、聖川の失恋系ソング祭りだった。しかも、結構古いやつばかりの。


 それも5時間近く。


「デートって何なんだろうな」


 声を枯らしきった聖川に肩を貸しながらカラオケ出た俺の第一声。それに答えた聖川。


「私、デートしたこと無いし」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る