107 トリプルブッキングである
お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。夢見たっていいじゃない!
高望みする私と犬養
「エマは文系行くの?」
「ウチは……どっちかというと理系のほうが得意だから、理系」
「え……マジで??」
「そのアホの子見るような目、やめてくんない?」
「いや、スッチー目指してるって言ってたから、文系かと思っただけだよ~」
「ララって、ちょいちょい失礼だし死語でるよな? 今どきスッチーなんて言うの年寄りぐらいだぞ」
「し、死語、使いたい年頃なの……」
苦しい言い訳を重ねた私は、エマの冷めた目をノートで防御しながら進路を考える。悩んだ時は、私ルール! 人生2周目なんだから、難しいほうを取るのが私のスタイルだ。
「私も理系に行こっと」
「おっ。中間、勝負すっか?」
「いいね~。私、入学試験は1位だったから、なに奢ってもらおっかな~??」
「はあ!? そんなヤツに勝てるか!!」
勝負は見えているが、エマを
そして返って来ました中間試験。全部が揃ってから、放課後にエマと見せ合う。
「ぐっ……参りました……」
その結果は圧勝。しかし、数学だけは負けていたので素直に喜べない。
「本当に数学得意だったんだね……」
「なに? 2点だけじゃん。こんなの勝ったうちに入らねえよ」
「いやいや、私なんて家庭教師から去年習って今年も勉強したんだよ? なのに負けるなんて……これが天才ってヤツか……」
「はあ? ウチが天才なわけねぇし」
エマの勉強の仕方が気になったので教えてもらったけど、そこまで勉強しているように見えない。なんなら中2までは劣等生で、中3から焦って自己流で勉強したとか言っていたから、ヘコムわ~。
「ウチとしては、ララの英語100点が羨ましい。頑張ったつもりなのに、55点だよ。キャビンアテンダントの道は遠いわ~」
「私は幼稚園から英会話習ってたからね。わりと得意なの」
「いいな~。てか、ペラペラなのか?」
「うん。映画とかも、字幕なしで見てるよ」
「マジか~。カッケー」
この話からエマは英語を教えてくれと頼んで来たのでテストの答え合わせを手伝ってあげていたけど、そもそもな話がある。
「なに奢ってもらおっかな~?」
「チッ……覚えてたか」
というわけで、帰りには缶ジュースを奢ってもらった私であった。
「なんでジュマルの分も……」
「安上がりにしてあげたんだからいいでしょ~。お兄ちゃんもお礼言う」
「魚のほうがええねんけどな」
「「言えよ」」
帰りは部活終わりのジュマルと一緒だったから2本買わせたけど、何故か頑なに礼を言わないので、私とエマのツッコミが重なるのであったとさ。
中間試験が終わると各部活の予選が本格化したけど、スケジュールを見てビックリ。見事に試合が重なっていない。マジでやったんだ……
その驚きの理由は、ひと月前に
そう言われても試合が重なったら甲子園を優先させるから、どうしようもない。そのまま伝えてお引き取りいただいた。
その数日後に「サッカー協会のほうから来ました」とかいう偉い人が訪ねて来たから同じように説明したら「バスケ協会と話し合ってみますと」帰って行ったのだ。
その数日後には「高野連のほうから来ました」とかいう偉い人が「バスケ協会とサッカー協会からスケジュール聞かれたけど、どゆこと?」と訪ねて来たので「そいつらと話し合え!」って追い返した。
その結果、うちの学校から試合が重ならないようにスケジュールを擦り合わせて、ジュマルが3競技全てに出られるようにしたのだろう……忙しいわ!
これでは過密スケジュールすぎる。ジュマルの体力は大丈夫だろうけど、私が持たない。恒例の夏のキャンプにも行けないよ。てか、1学期の後半は学校にも行けないって!
由々しき事態なので、校長先生と各部活のトップクラスを集めて会議。せめてひとつは諦めてもらえないかとバスケ部とサッカー部を説得してみたら、野球部が手を上げた。高校球児が、かわいそうすぎるんだとか……
そりゃ、全員三球三振。ジュマル対策は四球しかない上に観客からブーイングされまくるんだから、チームメートも居たたまれないよね~。
かといって上層部だけで決めるのもかわいそうなので、野球部を集めてディスカッション。いまの3年生は「選抜に出たからいいかな~?」って声が大多数を占めた。やはり、ジュマルはチートすぎるみたいだ。
念のため多数決をしてみたら、新入生以外はほとんど出場辞退を上げた。いや、試合は君たちで出たらいいじゃない?
「その手があったか~!」と何故か燃え始めた野球部のおかげで、トリプルブッキング問題は解決したのであった。
「もう、大変だったよ~」
「だからララがやることじゃないんだって。マネージメントの域も超えてるぞ?」
「ご、ごもっともで……」
エマに愚痴を聞いてもらったけど、会議の議長までやっていたんだから、指摘が鋭く突き刺さる今日この頃であったとさ。
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