104 私の高校デビューである


 お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。不屈の精神は大事だね。


 父親の苦労話は母親経由で聞いたけど、両親ともに苦労してこの地位に就いたのだから尊敬してやまない。ジュマルのせいで破綻する運命を辿らずに済んで本当によかったと、部屋で泣いてしまったよ。

 神様にも感謝してしまったら、その夜は久し振りに神様が夢枕に立ったけど、すぐに逃げ出して連絡が取れなくなった。


 この夫婦を不幸にする予定だった犯人だもんね!!


 もしも元夫がこの家に生まれていたらと想像してみたけど、猫の顔が浮かんでまったく想像できず。

 最近では猫の子供が小学校に入学したので、我が子でもないのに何故か泣いちゃった。学校で勉強する猫の子供をほのぼの見ながら、再び眠りに落ちる私であったとさ。



 某・難関校の合格発表から日々が過ぎ、過去最高の受験者数だった西高も楽勝で合格。念の為この合格発表を待ってから難関校を辞退する一報を入れたら、その日の夜に校長先生が菓子折りを持ってやって来た。


 理由は、有名人の広瀬兄妹の妹が入学すると喜んでいたのに、まさか断るとはこれっぽっちも思ってなかったそうだ。

 そんなことを言われたら、逆に勘繰ってしまう。私の入試は操作されていたのではないかと……


 さすがにそんなことはしてなかったと言うので得点と順位を教えてもらったら、合格者の、中の中よりちょっと上……そんなに上がいるの!?

 渾身の試験だと思っていた私は、後腐れなく校長先生にお断りを入れるのであった。


 人生2周目だっていうのに、不甲斐ない……



 私が落ち込み、母親が「ジュマ君に力を入れていたからだよ」と励ましてくれたり、父親が「受かっただけ凄いことだよ。え? パパの得点?? しゅ……ララと同じくらいだよ~」と嘘を言われたのでさらに落ち込んでいたら、中学校の卒業式となった。


 相変わらずマスクは外せないし思い出が少ないので、友達とも「なんだかな~?」と、感動して終われなかった。いちおう卒業記念で、クラスメートで顔を見せ合うイベントを開いてみたら「そんな顔だったの!?」の嵐。

 私だけは「ズッキューンッ!」って音がどこからか聞こえて、バッタバッタと人が倒れた。もうすぐ高校生だから、ますます美貌に磨きが掛かってるもんね。マスクで台無しだったよ!!



 中学校の3年間が残念で仕方ないし、政府は何もしないので憤っていたら、西高の入学式になった。

 気分転換に髪の毛をちょっとだけ明るくして軽くパーマをあてたらめっちゃかわいくなったので、これは正解。気分は最高だ! でも、主席を取ったらしく、入学生代表で原稿を書かされたので、また台無しだ。


 井の中の蛙ってこのことだよ! 思い出しちゃったじゃないの!!


 しばらく機嫌の悪かった私なので父親に冷たくなったけど、元よりこの学校に来たかったのだから制服を着崩してジュマルと一緒に初登校。

 校則緩いし何度も来てるから限度は知ってるからのお洒落だ。でも、新入生はキッチキチの制服姿だったから、めっちゃ浮いてしまった。


「広瀬ララです。こんな格好ですが、不良とか高校デビューとかじゃないんで、仲良くしてください! てか、これぐらいは許されてるんで、みんなもマネしてね!!」

「広瀬さん。あまり広められると先生的にですね……」

「も、申し訳ありませんでした」


 自己紹介で挽回しようと思ったけど、女性教師が困った顔をしていたので、入学早々、深々と頭を下げる私であったとさ。



愛莉あいりちゃ~ん。やっちゃったよ~」


 クラスメートの視線が気になりすぎて休み時間に逃げ出した私は、ジュマルのクラスに退避。愛莉ちゃんが目に入ったので、涙目で抱きついた。


「どうしたの?」

「お洒落しすぎた……」

「あ、本当だね。新入生に見えないわ~」


 愛莉ちゃんいわく、制服を着崩したり髪の毛を染めるなんて、不良以外は夏以降から始まったみたい。そして冬に完成するのだから、私はフライングしまくりだ。

 そんな話をしていたらトイレに行っていた結菜ゆいなちゃんがやって来て、私たちの会話に入った。


「あはは。珍しく挨拶回りに来ないと思ったら、そんなことになってたんだ」

「もう最悪だよ~。てか、お兄ちゃんも変なことになってない?」

「いつも通りだよ。私も一緒なの~」

「もっと詳しく聞かせてよ~」


 いまさらジュマルが心配になった私だけど、幼馴染ミーズは全員文系を選んだから勢揃いしてるみたいなので安心だ。それとあいつも……


「フッフッフッ……わて、ふっか~つ!!」

「……で、不良とかはお兄ちゃんに絡んで来なかった?」

「ちょっ! 無視せんといてくださいよ~! 姉さ~~~ん!!」


 がく君だ。やっぱりうるさいなこいつ。後ろにはじん君を引き連れて仲良しだな……

 仕方がないからちょっと話をしてみたら、不良がジュマルに絡もうとしたことはあったらしい。でも、部活のマッチョ連合がジュマルを囲んで守り、ホラ貝を吹いて増援を集めたから不良も逃げ出したんだとか……


「ホラ貝??」

「ノリでんがな~」

「仁君も同じクラスなの??」

「もうおしまいでっか!?」


 仁君は理数系に進むから、別クラスとのこと。ずっとジュマルと離れているから吃音きつおんのことでイジメられてないかと質問したら、からかおうとした人は頑張って撃退したんだとか。

 やり方は、母親方式。「戦い方は知ってる。弁護士を雇って全員訴えて大金せしめる」とか言ったら、からかう人は逃げてったんだって。


「あはは。やるね~」

「ぜぜ、全部ぶ、ねね姉さんののおかげ。が岳君も、いいっぱい、たす助けてくれくれたからら」

「へ~……あんたもいいとこあるじゃない?」

「わてだってイロイロ助けてもらったんで、お互い様でんがな~」

「謙遜もできるようになったのね……」

「ひどっ!? いつだって謙虚でっせ!?」

「「「「「あはははは」」」」」


 高校に入っても知り合いがいるのは助かる。岳君はちょっとうるさいけど、やらかした気分を吹き飛ばしてくれたので、ちょびっとは感謝する私であった。

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