010 流血事件である
お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。前世は主婦やってましたよ!!
母親が弁護士だったと聞いたママ友スリーは、昼間っから「酒、持って来~い!」とか言っていたけど、気持ちはわかる。私もお母さんは、受付嬢か水商売だったと思ってたもん! コーラ持って来~い!!
そんな荒れに荒れる私たちを見た母親は「なんでララちゃんまで? コーラはダメよ」とか言ったあとは、自分の生い立ちを語り出した。
その話は、幼い頃に父親が他界して母子で支え合った美談。猛勉強して高校も大学も奨学金で入り、どちらもバイトしながら勉強道具は全て自分で買っていたまでは聞いてられた。
大学では在学中に弁護士試験、一発合格。バイトも大手法律事務所の仕事を手伝っていたから、けっこう時給よし。
そんなことばかりしていたから大学の単位はギリギリだったとか笑っていたけど、奨学金は社会人1年目で払い終わっていたからぜんぜん笑えなかった。
そのせいで、ママ友スリーは不幸自慢。夫の給料が安いとか、夫がハゲて来たとか、夫の足が臭いとか……夫以外も出してあげて!!
「ジュ、ジュマ君! いま、酷い目にあってます!!」
なので、母親も不幸自慢に参戦したけど、自分の息子に対して酷いな……
「だね。やっと釣り合い取れた!」
「「パチパチパチパチ~」」
木原さんたちも拍手しないでやって! ……いや、母親は自殺する運命だったから、ジュマルのマイナスのほうが上だった……どんだけやねん。
これでなんとか母親とママ友スリーは和解。ケーキを買って来たんだったとママ友スリーがダイニングに向かうので、母親もお皿を用意しに行った。
私はというと、ママ友スリーのリーダー、木原さんの子供の
しかしこの大翔君、けっこう厄介なヤツ。私が積み木で作った建物を、完成させたと同時に「ドーンッ!」とか言っ壊すのだ。もう5回目だよ!
「ヒロト、つくって」
さすがにムカついて来たので、お前が作ったヤツを私が壊してやる。これは、人が嫌がることはやるなと言う教育的指導だ。
「や、こわすのたのしい」
こ、このガキャャアア~~~!!
とか思ったけど、私は大人。怒りをコントロールして冷静さを取り戻す。
「じゃあ、つくらない」
「なんで? つくれ」
「いや。ヒロトがつくれ」
「なんでなんで~!」
「なげるな~」
子供、難しい。制御不能。これはアレだ。イヤイヤ期ってヤツだ。こうなっては大翔君はワガママ放題で、積み木を投げまくっている。
私はどうしたもんかとハイハイで積み木を拾いに行くと、お尻に積み木が当たった。
それが痛いってわけではなく、腹が立ったので勢いよく振り向いたら、頭に積み木が直撃して私は仰向けに倒れた。
「フシャーーーッ!!」
その直後、ジュマルが段ボール箱から飛び出して威嚇の声をあげた。私はその剣幕に危機感を覚えて急いで体を起こす。
「待て! おにちゃ待て! お座り! 待て~~~!!」
走り出していたから止めようとしたが、ジュマルは我を忘れているのかまったくきかない。
「ダメ! おにちゃ待て! ダメ~~~!!」
ここで大翔君に怪我をさせては、今までの苦労が水の泡になり兼ねない。私は必死にハイハイで走り、大翔君に覆い被さった。
「フシャーーーッ!!」
「ママ! ママ! おにちゃ止めて! 早く止めて!!」
「ララ!? ジュマル何してるの!?」
ジュマルが私を避けて大翔君を引っ掻こうとするなか、母親もジュマルの声を聞いて焦って走り出していた。
そして私の声に応じ、ジュマルを羽交い締めにして引き剥がして後ろに倒れた。
「ジュマル! 落ち着きなさい!!」
それでも暴れるジュマル。誰もが驚いて言葉を無くすが、襲われた大翔君のママ、木原さんは別だ。
「広瀬さん! なんてことしてくれるの!!」
大翔君が泣き叫んでいるのだから、怒り心頭。大翔君に駆け寄らずに母親のところへ行って怒鳴り付けた。
「ジュマル! あなたはいっつもいっつも……どうしてそんなことするのよ~~~」
母親も限界。ジュマルを床に押し付けて涙ながらに叱り付ける。その顔に、ジュマルもどうしていいかわからずに目を逸らした。
「ママの目を見なさい! そんな子はこうよ!!」
その行為に母親はついに手を振りかぶった。
「ママ! ダメ~!! おにちゃ、悪くない! 怒らないで!!」
しかし、私が大声で止めると、母親は私の顔を見て青ざめた。
「ララちゃん……血……」
私のおでこから血が流れていたから……
「ヒロトが積み木投げたからおにちゃ怒った。わたちのため。だからみんな怒らないで!」
「「え……」」
だが、私は気にしない。ジュマルを擁護する。
「ヒロトも悪くない! 何したかわかってない! 怒らないで!!」
木原さんが大翔君を怒りの目で見たので、こちらにも牽制。
「当たってしまったわたちが悪い! ね? 2人とも悪くない!!」
「「「「……」」」」
私が必死に説得することで、なんとか皆の気持ちが平常に戻るのであった……
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